ファジアーノ岡山はなぜ「絵」を集めるのか?

今回は、「スポーツビジネス」ではなく、スポーツクラブを「地域貢献」という視点から考えてみたいと思います。

(ここでは他のクラブと競い合うようなチームを持ち、プロの選手を抱える組織を「スポーツクラブ」とします。)

「スポーツクラブ」というのは、「競技(試合をすること)」を通して利益を生み出すことを目的とし、継続的に商売をしていく組織・団体のことです。

「NPO法人」のような、いわゆる「非営利団体」呼ばれるような企業が運営している場合もありますが、「非営利」といっても収入がなければ活動できないわけです。

したがって、「スポーツクラブは企業のひとつ」だと捉えて話を進めていきます。

今回は、「スポーツクラブ」の例としてJリーグのファジアーノ岡山を取り上げてみたいと思います。

ファジアーノ岡山は「地域貢献」の1つとして「絵を集める」という活動をしています。

なぜスポーツクラブが「絵」を集めるのか?

そこには大きな意味が隠されているのです。

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企業には「責任」があるんです

まず、スポーツの話をする前に「企業の責任」について少しお話をしたいと思います。

企業には「企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)」というものがあります。

企業は、自分たちの商品を作ったりサービスを広めるために、安全性をおろそかにしたり、自然を破壊してきたり、事故を起こしたりしてきました。

そうした反省から、「企業もきちんと環境を守ったり、地域に対して安心感のあるビジネスをしなければならない」という考え方が、1990年代以降に広まっていきました。

この「企業の責任」とは、社会から得る「信頼」と解釈すると理解しやすいと思います。

その「信頼を得る」ためには商品やサービスを購入してくれるお客さん、支援してくれている株主、働いている従業員、周辺に住んでいる地域住民らの企業と損得などの利害関係を生む人々(ステークホルダー: Stakeholder)との双方向のコミュニケーションが重要になります。

ステークホルダーのイメージ

企業の「社会貢献活動」とは先程述べた企業の「社会的責任(CSR)」に含まれる考えで、「環境を守る」ことや、「ボランティア活動」などをはじめとする文化活動、「地域おこし」、「街作り」などが挙げられます。

スポーツクラブが主に地域社会に密着して行う社会貢献活動を「地域貢献活動」とします。

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スポーツクラブが担う地域貢献活動の種類

それでは、「スポーツ」の話に入っていきたいと思います。

スポーツクラブが担う地域貢献の活動の種類は以下のように3つあります。

① 教育活動

② 健康活動

③ 環境活動

スポーツクラブが担う地域貢献の活動の種類

1つ1つ簡単に解説していきます。

教育活動

教育活動では、クラブ運営をしていく中で蓄えたノウハウを広い範囲にわたって、積極的に地域社会に活かすために様々な活動を行っています。

その中でも、近年重要になってきているのが「人材の育成」です。

大学などの教育機関に選手やスタッフを派遣し、「キャリア」「スポーツマネジメント」についての講義や競技の実技指導が開講されているケースや、

クラブが学生を招き入れ、現場の雰囲気を肌で感じながらスポーツビジネスを実際に体験できる「インターンシップ」など積極的な活動が見られます。

健康活動

健康活動では、「スポーツ」という言葉の中にある「体力づくりとして行う身体運動」という意味を利用しています。

「競技」を見せものとして地域住民に提供するだけでなく、普段スタジアムやアリーナなどの試合会場で観戦する人たちの健康に配慮して、憧れの選手やクラブのスタッフと一緒にウォーキングやランニングをする取り組みなどが行われています。

スポーツを通して「地域全体での心と身体の健康を目指す」ことが目的となっています。

環境活動

環境活動では、スポーツクラブも「地域住民のひとり」として、環境に優しい地域を目指し、地球に与える影響を減らすエコ活動などがあります。

スタジアムで販売する飲み物を紙コップだけでなく「マイカップ」「リユースカップ」で提供するなど、ゴミを減らす活動や試合会場内のゴミの再生利用に留まらず、清掃活動なども実施しています。

また、住みやすい地域を目指し、各協会や自治体と連携して薬物防止交通安全などの取り組みも行っています。

Jリーグの地域貢献活動「ホームタウン活動」とは

前置きが長くなりましたが、今回取り上げたいのはJリーグが取り組んでいる地域貢献活動である「ホームタウン活動」です。

そもそも「ホームタウン」とはJクラブの本拠地のことで、「Jリーグ規約」には「Jクラブはホームタウンと定められた地域で、その地域社会と一体となったクラブづくりを行いながらサッカーの普及に努めなければならない」、ということが書かれています。

「ホームタウン活動」では、地域に愛されるクラブとなるために、Jリーグに所属するクラブがホームタウンの人々と心を通わせるために、さまざまな活動を実践しています。

「Jクラブはそれぞれのホームタウンにおいて、地域社会と一体となったクラブづくり(社会貢献活動を含む)を行い、サッカーをはじめとするスポーツの普及および振興に努めなければならない。」

参考:Jリーグ規約第21条〔Jクラブのホームタウン(本拠地)〕第2項

ファジアーノ岡山のホームタウン活動

では、実際に「ホームタウン活動」とはどのように行われているのでしょうか。

筆者の生まれ育った岡山県を本拠地とするプロサッカークラブのファジアーノ岡山をモデルケースとして紹介したいと思います。

高校卒業まで岡山県で過ごしたことで、ファジアーノ岡山はホームタウン活動に力を入れているクラブのひとつだと感じました。

その中で最も力を入れていると感じたのが「教育活動」です。

学生だったということもそう感じる理由のひとつではありますが、教育面に力を入れていると感じた感覚は間違っていないと断言できるものを見つけました。

ファジアーノ岡山は、クラブの理念である「子どもたちに夢を!」を軸に、

①「最高の選手と子どもたちが仲間になる」

②「家庭と地域と学校の三者が協働できる社会作りに貢献する

③「岡山の誇りとなる存在になる」

ファジアーノ岡山の教育活動の指針

を指針として活動しています。

クラブの「事業」や「計画」などのベースとなる考え方という意味を持つ「理念」に子どもに対する強い気持ちが込められています。

そのため、ファジアーノ岡山は地域貢献の中でも「教育」に力を入れているクラブと言えるでしょう。

ファジアーノ岡山のこんな活動がすごい

具体的な活動として「岡山市内全小学校への全選手一斉訪問」「岡山市小学校給食交流事業」、「倉敷 “夢” チケット」が挙げられます。

特に今回注目した取り組みが「倉敷 “夢” チケット」です。

この活動では、ファジアーノのホームタウンの一つである「倉敷市」と連携し、倉敷市内に在住、または通学している子どもたちから「夢」をテーマにした「絵」を募集し、全応募作品より1作品を、「試合のチケットのデザイン」として採用しているのです。

自分が書いた絵が、プロスポーツチームの「チケット」になるなんて、とても夢のある活動ですよね。

この記事のタイトルは、「ファジアーノ岡山はなぜ「絵」を集めるのか?」ということでしたが、ファジアーノは「絵」そのものを欲しいわけではありません。

ファジアーノの目的は、子どもたちに対して「夢を持つことの素晴らしさ」「夢に向かって努力する事の大切さ」を伝える、ということなのです。

「絵」はあくまでそれを叶えるための「手段」なのです。

スポーツは様々なものと結びつけることで、その価値をさらに高めていけるのです。

活動によるこんな成果が!

以上の活動から、ファジアーノ岡山というクラブチームがある岡山県の子どもは、プロスポーツ選手に対する憧れの気持ちが強い傾向にあると思います。

プロスポーツ選手に憧れることで、運動する機会が増えているのではないでしょうか。

文部科学省(スポーツ庁)が実施している「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」では、

平成28(2016)年度の岡山県の体力合計点の平均は、
・小学校男子:54.55点
・小学生女子:55.78点
・中学生男子:43.86点
・中学生女子:50.85点
であり、調査開始以降、全て全国平均を上回っているとともに、中学生女子は最も高い数値でした。

したがって、スポーツクラブが教育に力を入れて地域貢献活動を行うと、その地域に住む子どもたちの運動能力を向上させるという効果を生み出すことができる可能性を感じます。

また、ファジアーノ岡山は子どもたちへの「教育」だけに力を入れているわけではありません。

「児島湖流域清掃大作戦」や、被災された小学校への訪問や児童の招待などを行う「平成30年7月豪雨災害 復興支援活動」、公式戦開催日に試合前にスタジアム近隣約5.0キロを歩く「歩け歩けウォーキングイベント」など「環境」や「健康」に対する取り組みも行われています。

 「健康」に対する取り組みの効果として考えられるのは運動する機会の提供です。

毎日仕事や家事で忙しい日々を送っている方が定期的に運動する時間を設けるのは難しいかもしれません。

しかし、休日に試合会場を訪れ、観戦のついでに運動することはできるはずです。

現に、ファジアーノ岡山の取り組みの狙いはこれであると考えられます。

きっかけとしては「観戦のついで」ですが、身体を動かすことで得られる楽しさや満足感は普段なんとなく町中を歩くよりは大きいはずです。

重い腰を上げ、今まで忙しいなどの理由から遠ざけていた運動を始める人もいるでしょう。

実際、夕方や夜の部活の帰り道にランニングやジョギングをする人も増えたように感じます。

私たちにできること

 今回ご紹介した、Jリーグのホームタウン活動をはじめ、普段プロスポーツクラブは地域貢献活動として私たちのために様々な活動を行ってくれています。

いつも地域に貢献してくれているクラブに何か恩返しができないか、個人ができることはないか。

スポーツがある日常は決して当たり前ではないのです。

少し考えてみてください、プロスポーツクラブのために私たちができることを。

参考文献

Jリーグ公式HP ホームタウン活動 https://www.jleague.jp/aboutj/hometown/

ファジアーノ岡山公式HP ホームタウン活動 
https://www.fagiano-okayama.com/club/home.html

岡山県スポーツ推進計画(改訂版)https://www.pref.okayama.jp/uploaded/life/554235_4426755_misc.pdf

おかやま廃棄物ナビ 
https://junkan.pref.okayama.jp/okayama_waste_navi/


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ABOUTこの記事をかいた人

たくみ

経済学部に通う大学生。 大学受験期の息抜きにサッカー本を読み漁り、サッカーライターの仕事に興味を持つ。 noteでJリーグの選手記事や欧州サッカーの試合レビューまで幅広く投稿。