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【知っておきたい】総合型地域スポーツクラブってどんなクラブ??

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須賀 優樹
合同会社エスシードの代表として様々な企業のデータ活用支援をしながら、産業能率大学でスポーツマネジメントの教員をしています。「世界で一番優しくスポーツビジネスを学べる場をつくる!」を目標に本サイトを立ち上げ運営中!!

「スポーツビジネス」や「スポーツマネジメント」、「地域スポーツ」などを学んだりしていると、総合型地域スポーツクラブという名前を見たり聞いたりすることがあると思います。

「総合型」という名前をみると、とても大きな規模で、カッコ良さそうなイメージを持つと思います。

総合型地域スポーツクラブって、なんかスゴそうだなぁ~ 自分も関わってみたいなぁ!!

ところが、この「総合型地域スポーツクラブ」という団体が、実際にどこで、どんな活動をしていて、どうやって運営されているのか、といったことはなかなか知る機会がありません。

そこで、今回は「総合型地域スポーツクラブ」のことを知りたい初心者の方のために、「これだけは知っておきたいポイント!!」を優しく解説したいと思います!!

この記事で学べること

✔ 「総合型地域スポーツクラブ」の意味が理解できる

✔ 「総合型地域スポーツクラブ」の活動内容が理解できる

✔ 「総合型地域スポーツクラブ」の課題や将来性が理解できる


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「総合型地域スポーツクラブ」ってどんなクラブ??

まず初めに、「総合型地域スポーツクラブ(Comprehensive Community Sports Club)」(以下、「総合型」と表記します)とは、「地域住民に対して幅広いスポーツ機会を提供すること」を目的として活動している組織のことです。

「総合型」は、地域において公益性(地域の様々な人に対して広く役に立つ)を持った組織として「NPO法人(Non-profitOrganization:非営利団体)」という、「法人格」を取得して活動しています。

2018年の時点では、全国に3,445の「総合型」が活動しているとされています。(「スポーツ白書2020より引用」)

同じ「スポーツクラブ」といっても、営利目的で運営される「プロサッカークラブ」や「フィットネスクラブ」の場合に多い「株式会社」という形態ではなく、「NPO法人」としての活動になるため、どちらかといえば「地域貢献」や「ボランティア活動」的な意味合いが強い組織になります。

ですので、「総合型」は「スポーツを通じてお金を稼ぐこと」を目的にして活動しているのではなく、「スポーツ活動の場を地域住民に提供すること」や、「地域住民のコミュニティ形成の拠点」、「地域が抱える様々な課題の解決」といった役割を期待されて、運営されている組織になります。

スポーツ庁」の説明によれば、以下のようなものが「総合型」だとされています。

スポーツ庁による「総合型地域スポーツクラブ」の定義

総合型地域スポーツクラブは、人々が、身近な地域でスポ-ツに親しむことのできる新しいタイプのスポーツクラブで、子供から高齢者まで(多世代)、様々なスポーツを愛好する人々が(多種目)、初心者からトップレベルまで、それぞれの志向・レベルに合わせて参加できる(多志向)、という特徴を持ち、地域住民により自主的・主体的に運営されるスポーツクラブです。

※参考サイト https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop05/list/1371972.htm

キーワードは、多世代」「多種目」「多志向という3つの「多」です。

これを、「総合型」ではなく、もっと範囲を広げて「地域スポーツクラブ」という視点で見てみると、「公益財団法人日本スポーツクラブ協会」の調査(2000年) によれば、日本には、約35万7000もの「地域スポーツクラブ」が存在しているとされています。

調査の年数が古く、少子高齢化などの影響もあって、現時点ではクラブの数は当時より減っていると思われますが、「日本スポーツクラブ協会」の調査では、地域スポーツクラブの約90%は「単一種目型」であり、さらにそのうちの約60%は「限られた年齢のひとたち」で構成されているクラブであるという結果になっています。

つまり、日本で「スポーツクラブ」と呼ばれるような組織のほとんどは、「クラブの中で1つの競技しか実施しておらず、なおかつ同じ年齢の人たちがメンバーとなっているクラブ」ということになります。

たとえば、「少年野球チーム」や「サッカー少年団」「ミニバス」、「ママさんバレー」「草野球チーム」「ゲートボールクラブ」といった、みなさんも関わったことがあったり、知っているようなクラブのことです。

こうした「クラブ(チーム)」は、基本的に「1つの競技」を「同じくらいの年齢のひとたちだけでプレーする」というクラブになっています。

日本では、「少年野球チーム」と「少年サッカーチーム」を、「同じクラブ」として運営するケースはほぼありません。

「少年野球チーム」に所属している小学生が、「少年サッカーチーム」にも所属する、といったこともまずあり得ません。

また、年配の人たちが中心にプレーするような「ゲートボール」や「グランドゴルフ」に、地域の学生や現役世代の社会人などが参加するということも、まずあり得ません。

このように、日本で「地域スポーツ」を楽しもうとする場合、同じ地域の中でも全く違うチームや競技、プレーヤー層がバラバラに存在しているため、多種目を多世代で楽しむということができません。

こうした状況では、「スポーツを生涯にわたって継続して楽しむ」ということが難しくなるため、スポーツ活動そのものを途中でやめてしまう人や、めんどくさくなってスポーツをしない人も出てきてしまいます。

そこで、そうした課題を解決するために期待されているのが「総合型」という存在なのです。

総合型って、実際どんなことやっているの??

さて、ここからは「総合型」が実際にどのような活動をしているのかを、事例を交えながら見て行きたいと思います。

まずは、東京都大田区で活動する「NPO法人 ピボットフット」さんという「総合型」を例に、活動内容を見て行きます。

まず、「事業内容」として、以下のような内容が公式サイトに掲載されています。

NPO法人 ピボットフットの事業内容
  • 地域総合スポーツクラブ運営(複数のスポーツや文化活動との連動)
  • 地域密着型スポーツ教室の開校(継続的な一貫指導)
  • スポーツクリニックの開講(定期的)
  • 指導者の育成・派遣(競技、クラブ運営)
  • スポーツイベントの企画・運営支援(国内・国際)
  • スポーツ予防医学・栄養学等のセミナー開催
  • 障害者、知的障害者スポーツ活動支援と交流
  • スポーツ及びその活動に関する情報提供
  • NPO法人の社会的存在意義を高めるための他団体間との交流

このように、かなり多くの活動をしていることが分かります。

よくあるような「少年野球チーム」や「サッカー少年団」といったクラブとの大きな違いとしては、「文化活動との連動」や「スポーツ予防医学」「指導者の育成」といった部分が挙げられます。

多くの「少年野球チーム」などは、基本的には「野球のことだけ」しかやらない場合が多いと思います。

小学生や指導者が、「野球をする」ためだけにグランドに集まり、練習や試合をして、終わったら解散、という場合がほとんどです。

ですが、「総合型」の場合は、単に「スポーツをする」「スポーツを教える」というだけではなく、地域の行事や商店街等のイベントなどにも積極的に参加して、世代間交流などを図っていくことも大切な活動になります。

実際、「NPO法人ピボットフット」では、地元の大田区での行事などに年間100回以上も参加しているそうです。

また、事業として4つの部門をクラブ内に設置しており、「スクール部門」「指導者育成部門」「医科学部門」「イベント部門」にて、様々な活動を行っています。

「スクール」の部門としては、「バスケットボール教室」「体操教室」「ダンス教室」「テニス教室」「ランニング教室」など、とても幅広い種目を子ども~高齢者までが楽しめるように提供しています。

また、地域の200名近い人たちが参加しての「スポーツごみ拾い大会」の実施などにもとても力を入れています。

※「ピボットフット」さんが公式サイトで公開している「事業計画書」は、「総合型」について実例をもって調べたい人や、これから設立を検討している人にとってはとても役立つ内容になっていますのでぜひご覧ください。

参考サイト①: NPO法人 ピボットフット 公式サイト
参考サイト②: NPO法人 ピボットフット 2017年度事業計画書

次は、島根県松江市で活動する「NPO法人 しんじ湖スポーツクラブ」さんの活動内容を見て行きたいと思います。

NPO法人 しんじ湖スポーツクラブ より引用

会員数は2017年時点で約800名となっており、地方の「総合型」でありながら、かなりの数の会員数を誇っています。

内容としては、器械体操、ダンスなど13教室、健康プログラム(ヒーリングヨガなど)が12教室、介護予防・認知症予防プログラムが2教室、スポーツ少年団を10チーム、一般サークル活動を13チームと、相当な数のプログラムやチーム活動を実施しています。

2002年に設立された「しんじ湖スポーツクラブ」ですが、当初は「何をやっても人が集まらない」という状況だったようです。

しかし、次第に地域の人が協力をしてくれるようになり、色々な人の口コミなどを通じて、クラブも成長していきました。

一般的なスポーツだけではなく、「雪合戦」を楽しむイベントや、小さなこどもたちが「ゴズ釣り(ハゼ)」を体験できるイベントなど、地域性を活かした様々イベントを開催しています。

近年注目されている「スポーツ・ツーリズム」なども同様ですが、単に「野球」や「サッカー」などの「競技としてのスポーツ」を楽しむだけではなく、地域の自然や観光資源なども活かしたオリジナリティのあるスポーツを生み出していく工夫がとても大事になっています。

参考サイト: しんじ湖スポーツクラブ 公式サイト

総合型地域スポーツクラブに課題はあるの??

最後に、「総合型」が抱える「課題」について考えてみたいと思います。

ここでは、「スポーツ庁」の「令和2年度 総合型地域スポーツクラブに関する実態調査結果(以下「調査」と表記)」もとに、「総合型」の課題を見て行きます。

「総合型」の課題は様々ものが挙げられていますが、大きく分けると以下の3つの課題の解決が必要とされています。

総合型地域スポーツクラブが抱える課題

① クラブ運営を担う人材の世代交代・後継者確保
② 自己財源の確保
スポーツ以外の活動と参加世代のかたより

① クラブ運営を担う人材の世代交代・後継者確保

簡単に言えば、「クラブを運営するための人材が足りない」ということです。

ここで言う「人材」には、「クラブマネジャー」や「アシスタントマネジャー」のように、「総合型」の運営そのものを担う人材と、「総合型」に所属する会員などにスポーツの指導をしたりする「指導者」といった人材が含まれます。

クラブマネジャーってなに??

「クラブマネジャー」というのは、「総合型」の経営管理(マネジメント)全般を行う立場にある人のことを指します。つまり一般の企業で言えば「社長」のような存在です。
公益財団法人日本スポーツ協会が認定する資格で、「総合型」の運営において重要な役割を果たします。

調査によれば、アンケートに回答した「総合型」のうち、70.6%が「クラブ運営を担う人材の世代交代・後継者確保」が課題であると回答し、次いで55.7%が「指導者の確保(養成)」が課題であると回答しています。

このことから、「総合型」にはとにかく運営するためのスタッフが足りない、という実態を垣間見ることができます。

特に「クラブマネジャー」については、「クラブマネジャーを配置していない」と回答した「総合型」が49.9%にもなっており、クラブ運営の専門的な知識やスキルを持った人材が足りていないという状況になっています。

一方、「クラブマネジャーを配置している」と回答したクラブにおいて、「クラブマネジャー」に対してどの程度の報酬(給与)を支払っているのかを聞いたところ、「常勤」であっても平均 「9,278 円」という調査結果が出ています。

調査には詳しく記載がありませんが、これは「時給」ではなく「月給」であると思われます。

「常勤」の「クラブマネジャー」の月給が「9,000円」。

これをどう受け取るかは人それぞれですが、少なくとも「この給与だけでは生活ができない」というのが実態かと思います。

なぜこうなってしまうのかというと、次に解説する「自己財源の確保」という課題と大きく関わってきます。

② 自己財源の確保

これも簡単に言えば、「お金がない」ということです。

調査における「クラブの活動費」という項目をみると、クラブの年間予算は、「1~1,000,000 円」が 37.5%と最多となっています。

つまり、年間に100万円程度しか使えるお金がない、ということになります。

これでは、施設の使用料やスタッフに対する謝礼を少し支払った程度で、あっという間に予算がつきてしまいます。

「大卒1年目の社会人の平均給与(月給)」は「約22万円」と言われていますが、もし一般企業のように「大卒1年目」の人材をスタッフとして雇って、毎月22万円のお給料を支払ったら、4か月程度で「総合型」の予算はなくなってしまう、ということです。

それだけ、「総合型」には「お金がない」ということです。

そして「キーワード」は「自己財源という言葉です。

「自己財源」というのは「自分たちで稼いだお金」という意味になります。

ですので、「総合型」は「予算」の中でも「自分たちで稼いだお金が少ない」ということになります。

実際、調査によれば「自己財源が50%以下」のクラブが32%存在しています。

こうしたクラブは、「自分たちで集めた会員からの参加費」などの収入ではなく、「自治体などからの助成金・補助金」「銀行からの借入金」といったものを頼りに運営していることが分かります。

「サービス業」としての比重が大きいスポーツビジネスは、自己財源が低くなりがちではあるものの、クラブの財源の50%以上は「自己財源」として運営するのが理想です。

「自己財源が少ない」ということは、「他人から借りているお金で運営している」状態になるわけですから、借金や利息の返済に追われてしまい、「倒産」してしまうリスクが高くなります。

借金を返すために借金をする」という負のスパイラルに陥りやすいため、長期にわたって安定したクラブ運営をしていくことができません。

よって、「会費からの売上アップ」「スポンサー収入」といった、「返済しなくてよく、自分たちの価値によって生み出されたお金」をしっかりと作っていく必要があります。

スポーツ以外の活動と参加世代のかたより

最後は、「総合型」の根幹をなす部分でもある、「3つの多」が実現できていない、という課題です。

「3つの多」というのは、多世代」「多種目」「多志向のことでしたね。

上記でご紹介した「ピボットフット」や「しんじ湖スポーツクラブ」は、とても多くの種目や文化的活動をしています。

しかし、全体的にみるとそうした「スポーツ以外の活動」をしっかりとできている「総合型」は決して多くありません

調査によれば、「スポーツ・レクリエーション活動種目数」の実施としては、37.1%のクラブが「6~10 種目」を実施していると回答しています。

よって、多くの「総合型」では、様々なスポーツのプログラムやチーム活動などの場を提供していることが分かります。

一方で、スポーツ以外の「文化的活動」を見てみると、73.2%のクラブは、「1~2 種目」しか実施できていない、という結果が出ています。

総合型」には、「スポーツ活動」だけではなく「地域交流」や「地域文化との融合」なども求められているわけですが、これに関して「理想と現実」のギャップが存在するクラブが多くなっています。

また、「クラブ活動に参加している会員の年齢」を見てみると、「小学生」が 13.2%と最も多く、次いで「70 歳以上」が8.7%となっています。

つまり「多世代」の参加を理念として「総合型」は運営されているものの、実態としては「小学生」と「高齢者」に参加が偏ってしまっているという課題があります。

中学生や高校生になると、「学校の部活」に所属して活動する時間も長くなるため、「総合型」の活動に参加しなくなる若者が多いと思われます。

ただ、そうした「若者」たちは「部活」というものを通じて「スポーツ」を実施する機会が確保できるわけですが、「20代~50代」の「働き盛り世代」は、「忙しい」「時間がない」「面倒くさい」という理由から「スポーツ活動」をしない人が増えてしまいます。

こうした人たちに対して、「総合型」が価値を提供できていない、「会員」として参加をしてもらえない、ということが大きな課題として挙げられます。

このように、成功している「総合型」が存在する一方で、「多くの課題を乗り越えることができないクラブ」というのも一定以上存在しています。

これが、現在の日本における「総合型」の課題です。

まとめ ~「総合型」はこのままでは発展しない!~

今回は、\【知っておきたい】総合型地域スポーツクラブってどんなクラブ??/というテーマで、「総合型ってそもそも何?」「どんな活動してるの?」「どんな課題があるの?」という視点で解説をしてきました!!

「総合型地域スポーツクラブ」という名前を聞くと、いかにも「大きそう」「すごそう」というイメージを持たれるかもしれませんが、実際には「かなり小さな規模」で「多くの課題を抱えている」という実態があることをご理解していただけたのではないかと思います。

「総合型」が目指す、多世代」「多種目」「多志向というコンセプトはとても素晴らしいものですが、まだまだ多くのクラブがそこまでにたどり着けていないのが現状です。

クラブ数は年々増加傾向にはあるものの、調査によれば「廃止・統合等」となったクラブも「413 クラブ」存在しています。

それだけ「総合型」の運営は難しいということです。「やる気」と「熱意」は大切ですが、それだけでは超えることのできない「壁」があるのも事実です。

このままではいつまで経っても日本の「総合型」は成長していきません。

「スポーツ界の課題」としてだけではなく「社会全体の課題」として考えていく必要があると思います。


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合同会社エスシードの代表として様々な企業のデータ活用支援をしながら、産業能率大学でスポーツマネジメントの教員をしています。「世界で一番優しくスポーツビジネスを学べる場をつくる!」を目標に本サイトを立ち上げ運営中!!