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今回のテーマは、「スポーツ経営」と「スポーツマネジメント」は違うのか? ということを取り上げます。
結論から言うと「スポーツ経営とスポーツマネジメントは違う」のですが、この2つがごちゃごちゃになって本に書かれていたり、しっかりと定義がされていないような授業があったりして、「似たような言葉が2つあってよくわからない!」という人も多いかと思います。
今回は、「日本とアメリカで【スポーツ】に対する捉え方が違う」ということと、「本来の【経営】という言葉の意味を考える」という視点から、「スポーツ経営」と「スポーツマネジメント」の違いについて解説してみたいと思います!
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「スポーツを経営する」という日本と海外の視点の違い
まず「経営」ということばを和英辞書で調べると、一番先頭には「Management(マネジメント)」が出てきます。
一方、「経営学」という言葉は、英語では「Business Administration(ビジネス アドミニストレーション)」と言います。
日本では「スポーツ アドミニストレーション」といった言葉はほとんど聞かれません。
しかし、海外でスポーツビジネス関連を学べる大学では、「スポーツマネジメント」も「スポーツアドミニストレーション」も両方使われている場合があります。
海外では、「スポーツアドミニストレーション」のことを、スポーツ関連の行政や企業といった、「組織全体」の運営管理といったことを指しているようです。
「スポーツマネジメント」については、そうしたスポーツ関連の行政や企業が実際に行う「事業」をいかに効率よく効果的に行うか、といったことを「スポーツマネジメント」と呼んでいるようです。(すべてに当てはまる訳ではありません)
したがって、例えばプロ野球の球団などで考えると、「アドミニストレーション」は「球団自体をどうやって経営していくか」ということです。
「マネジメント」は、「球団が持っている様々な事業(部門)などをどのように管理・運営していくか」、といった具合です。
「事業」というのは、それぞれの仕事の役割のことです。
球団の中にも、野球やサッカーそのものをプレーする選手や監督といった人たちがいる「野球事業」あるいは「サッカー事業」と、チケットをどうやって売るかなどを考える「営業部門」、メディアを使ってどのように球団をアピールするかを考える「広報部門」などがありますが、それら1つ1つの事業や部門の経営のことを「スポーツマネジメント」と呼んでいる傾向にあります。
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一方で、日本における「スポーツ経営」は、日本人が昔からなじみのある「体育」を中心に考えられてきたものです。
「スポーツ経営」は1960年代~70年代にかけて登場してきた考え方であるとされています。
これは、「スポーツによる教育」や、「実際に自分達がプレーするスポーツ」をどうするか、つまり「競技力」に重点を置いた視点です。
日本のスポーツ政策でよく話題になるのは、「オリンピックで金メダルを何個取る」といったことが多いですが、日本のスポーツはとにかく「競技力向上」が好きなのです。
したがって、扱う内容は、「運動プログラム」や、「スポーツ施設をどうやって活用するか」とか、「スポーツ大会(運動会)をどうやって開催するか」、のようなことが中心でした。
そういった意味では、日本における従来の「スポーツ経営」は、「ビジネス」の視点はあまり重視されてこなかったため、儲かるとか儲からないといったことはあまり重要ではありませんでした。
基本的には、行政(自治体)や学校がスポーツをどう扱うか、といった視点だからです。
最近、日本で一般的になってきているような「スポーツマネジメント」が誕生したのは、1980年代以降とされています。
それまで行政や学校が中心となっていた「スポーツ」は、「運動」という意味合いが強かったですが、この頃になると、企業がスポーツの価値を認識しはじめ、スポーツに対して大きな投資をするようになりました。
1990年代以降は、「スポーツ経営」も「プレー中心」の「スポーツ経営」から、海外の「スポーツアドミニストレーション」や「スポーツマネジメント」の考えを取り入れた新しい「スポーツ経営」が発展してきているように見受けられます。
というのは、以下の記事でも書いているように、地域のスポーツ施設の運営を行政が行うのではなく、一般企業に任せるといったビジネスなどが定着してきているからです。
1990年代以降の「スポーツ経営」
上記のように、日本では「運動」を中心とした「スポーツ経営」から、1980年代以降は、企業がスポーツをビジネスとして捉え始めたという流れの中で、「企業経営におけるスポーツのマネジメント」という考え方が登場してきました。
ところが、日本では1990年代以降の経済の悪化によって、色々な企業がスポーツに対して使っていたお金を、かなり減らさなくてはならない事態になりました。
「経済が悪化して業績も落ち込んでいるのに、スポーツなんかやっている場合じゃないだろう」といった意見が、企業の内外から出てきたためです。
「実業団」と呼ばれる、企業が所有していたスポーツチームも、次々と「廃部」になりました。
「廃部」ですから、こうしたチームは企業の中の1つの「部活動」にすぎません。
「部活動」ということは、チーム自体にはお金を稼ぐという機能がないのです。
2000年代中頃までは、プロ野球といった「プロ」のスポーツでさえも、実際の経営は「親会社」と呼ばれるような、元々チームの所有権を持っている会社の出資で成り立っていたため、球団自体が大きな利益を生み出すどころか、大半の球団は儲からないビジネス(赤字)だったのです。
実業団もプロ野球もあくまで、「スポーツチームを持っている企業が、どのようにそのチームを活用するか」という視点だったのです。
こうした流れが、ここ10年前後で少しずつ変わり始めています。
インターネットの発達によって、国内や海外でのスポーツビジネスの内容や取り組み、成功している事例などががすぐに分かるようになりました。
「スポーツアドミニストレーション」や「スポーツマネジメント」を学ぶために海外へ留学するような人も増えました。
さらに「スポーツビジネス」に、これまで全く違った業界で仕事をしていたような人たちが関わることによって、マーケティングやマネジメントが発展してきています。
「スポーツ経営」と「スポーツマネジメント」は同じもの?
現在は、海外のスポーツビジネスのノウハウとの融合や、国内スポーツビジネスの現場でのさまざまな取り組みが「スポーツ経営」に影響を与え、今では、「スポーツ経営」も「スポーツマネジメント」もほぼ変わりないものであると言えます。
「ほぼ」というのは、別の記事でご紹介している、「スポーツ経済学」や「スポーツファイナンス」といったことを、日本の「スポーツ経営」ではあまり学ぶ機会がないからです。
また、本来「経営」という言葉は「企業(特に営利団体)をいかに発展させていくか」という領域で使われることの多い言葉のため、「学校体育」のような活動に対して「経営」という言葉を使うこと自体に少し違和感があります。
「スポーツビジネス」という視点から捉えると、「スポーツ」という商品の価格の決まり方や、スポーツ組織の実際の資金繰りといったことを学ぶのはスポーツ組織に関わる上では非常に重要です。
「マーケティング」や「マネジメント」といったことは、スポーツビジネスに関わらず、一般企業の「マーケティング部」などで経験・実績を積んだり、自分の部署や部下の業務管理といったことを経験すれば、ある程度は分かるようになります。
しかし、「経済学」や「ファイナンス」は日々の業務の中では得にくい知識なのです。
例えば、
✔ 国が政府がスポーツに対して税金をかけて支援することによってどのような影響がでるか
経済学やファイナンス視点でのスポーツマネジメントの例
✔ 「チケット」の値段が上下することによって、他のグッズ販売にどういった影響が出るのか
✔ 球団が「自社の株」を買うべきかどうか
✔ 球団の「資産価値」はどのくらいなのか
といったようなことは、専門的な知識を学習するしかありません。
日本でこうした分野を本格的に学ぶことは難しく、本気で学びたい人は北米や英国といった海外のスポーツマネジメントスクールに通う必要もあるかもしれません。
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これらは、スポーツ球団の職員として、日々の業務をこなしているだけでは身につきにくい知識なのです。
繰り返しになりますが、「スポーツ経営」「スポーツマネジメント」を学ぶ際に、こうした科目がなければ、一般的な「経済学」や「ファイナンス」をぜひ勉強してみてください。
スポーツ関連の企業や球団に就職するときにもきっと役に立つはずです。
こうした知識を持った人材が増えれば、「スポーツ経営」も「スポーツ産業」もまだまだ発展していくのではないかと感じます。
まとめ ~経営とマネジメントは似ているようで違う!~
今回は、\「スポーツ経営」と「スポーツマネジメント」って違うの?/ というテーマで解説をしていきました。
その違いとは、
✔ スポーツ経営 ⇒ 日本型の「体育」から発生したスポーツの経営論
✔ スポーツマネジメント ⇒ 北米を発祥としたスポーツの「ビジネスマネジメント」
「スポーツ経営」と「スポーツマネジメント」
ということでしたね。
ただし、
「経営」という言葉は本来は「企業の営利活動の発展」に対して使われる場合がほとんどのため、「体育」に対して「経営」という言葉を使ってきたのは本来的な意味からはズレているのではないか、という指摘ができる、と言えます。
日本で「スポーツ経営」「スポーツマネジメント」を学ぶ際には、スポーツに関する「経済学」や「ファイナンス(財務・金融)」といった分野を学べる機会が少ないので、一般的な「経済学」や「ファイナンス(財務・金融)」を同時に学んでいくと良いと思います!!
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