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スポーツツーリズムが持つ「スポーツ×旅行・観光」の可能性【事例つき】

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須賀 優樹
「ゼロからのスポーツビジネス入門」の運営代表として、「世界イチわかりやすいスポーツビジネス・マネジメント」を情報発信。産業能率大学にてスポーツマネジメントを教えています。スポーツ業界就職や起業相談、スポーツ組織向けコンサルティングも好評。

スポーツ」は、様々な地域、都市、国で、多くの人に楽しまれています。

基本的には、スポーツは「身近な地域の中で楽しむ」というものですので、「ローカルな活動」と言えます。

ですが、「地域を越えて、都市を越えて、国を越えて」活動ができるのも、「スポーツ」の魅力だと思います。

一方で、スポーツと同じように多くの人に楽しまれている「旅行」あるいは「観光」といった、活動は、基本的には「自分たちの地域の外に出て楽しむ」という活動です。

近年、こうした「スポーツ×旅行・観光」といったことを上手く組み合わせて、新たな価値を生み出す取り組みとして、「スポーツ・ツーリズム(Sport Tourism)」という概念や活動が注目を集めています。

今回は、この「スポーツ・ツーリズム」に注目して、解説をしてみたいと思います!

この記事で学べること

✔ スポーツ・ツーリズムの意味がわかる

✔ 様々なスポーツ・ツーリズムの種類や関わり方がわかる

✔ 実際のスポーツ・ツーリズムの事例がわかる


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スポーツ・ツーリズムってなに?? スポーツ×旅行・観光??

まず、「スポーツ・ツーリズム」というのは、いったいどのような意味なのでしょうか。

日本において「スポーツ・ツーリズム」という言葉がよく使われ始めたのは、2005年頃からとされています。

日本の行政機関の1つである「観光庁」が、2011年に発表した「スポーツツーリズム推進基本方針」というものがあります。

その中に、「スポーツ・ツーリズム」は以下のように書かれています。

スポーツ資源とツーリズムとの融合を図っていく取り組みであり、スポーツを「観る」「する」ための旅行そのものや周辺地域観光に加え、スポーツを「支える」人々との交流、あるいは生涯スポーツの観点からビジネスなどの多目的での旅行者に対し、旅行先の地域でも主体的にスポーツに親しむことのできる環境の整備、そしてMICE推進の要となる国際競技大会の招致・開催、合宿の招致も包含した、複合的でこれまでにない「豊かな旅行スタイルの創造」を目指すもの。

「観光庁」の「スポーツツーリズム推進基本方針(2011年)」によるスポーツツーリズムの定義

この定義を、パっと理解するのはちょっと難しいですよね。

これをもう少し分かりやすく、分解して簡単に言うと、

✔ スポーツ・ツーリズムとは「スポーツ」と「旅行・観光」を組み合わせることである

✔ スポーツ・ツーリズムは、スポーツの「する・みる・支える」といった様々な側面から実施される活動である

スポーツ・ツーリズムによって「旅行」をする人たちは、「スポーツを楽しむ」という目的だけではなく「ビジネス」の目的でも「旅行(移動)」をする

✔ スポーツ・ツーリズムは、日本国内での「旅行・観光」だけではなく、世界規模のスポーツイベント等でも実施される

スポーツ・ツーリズムは、これまでにない「豊かな旅行・観光」を目指すものである

といったところでしょうか。

この記事を書くために、「スポーツ・ツーリズム」を扱っている文献などをいくつか読んでみましたが、どの文献にも「これがスポーツ・ツーリズムである」という明確な定義がなく、新しい分野であるため研究者や実務者も、試行錯誤なのだと思います。

もっと簡単にひとことで言ってしまえば、

スポーツ・ツーリズムとは、スポーツによって楽しみや経済価値を生み出すために、人を移動(旅行・観光)させる取り組み

ということになります。

なんだか、こう言うと難しそうに聞こえてしまいますが、みなさんも少なからず「スポーツ・ツーリズム」というものを経験したことがあると思います。

例えば、

✔ 電車やバスなどを使って移動し、他校や他チームと試合をする

✔ 好きなチームを応援するために、アウェイの試合を観に行く

マラソン大会に出るために、普段は行かない地域に行って、大会に出場する

といったことも、スポーツを楽しんできた人なら1度は経験があるかと思います。

こうしたことも、立派な「スポーツ・ツーリズム」です。

ここで、2つポイントがあります。

1つは、「普段住んでいる地域とは、別の地域に行ってスポーツ(イベント)を楽しむ」ということです。

上記で解説したように、「スポーツ・ツーリズム」は「人を移動させる仕組み」ではありますが、ある地域に住んでいる人たちが、同じ地域内で移動をしても、それは基本的には「ツーリズム」にならない、ということです。

例えば、東京都内に住んでいる人が、東京ドームに野球観戦に行っても「旅行」とは言いにくい、ということです。(「観光」とは言えるかもしれませんが)

ここで言う「地域」というものにも、明確な定義がないため難しいところですが、一般的には「県をまたいでの移動」であれば、「旅行」とみなしてよいのではないかと思います。

もう1つは、「スポーツ(イベント)の主催者は、他の地域の人たちを受け入れる」ということです。

先ほどのように、「同じ地域に住んでいる人たちで運動会を開催する」といったような場合は、「旅行」や「観光」といったことが伴わないので「スポーツ・ツーリズム」になりません。

ですから、例えば、「スポーツ・ツーリズム」という意味での「東京マラソン」などを開催するのであれば、東京に住んでいる人たち以外(他県の人)も参加できたり、イベントを楽しんだりできるような仕組みがなければ、「スポーツ・ツーリズム」にはならない、ということです。

こう考えると、「スポーツ・ツーリズム」って結構奥が深いと思いませんか?

スポーツ・ツーリズムにはどんな種類や関わり方があるの?

では、「スポーツ・ツーリズム」にはどんな種類のものがあるのでしょうか?

先ほどの「スポーツ・ツーリズムの定義」の部分で、

✔ スポーツ・ツーリズムは、スポーツの「する・みる・支える」といった様々な側面から実施される活動である

とご紹介しましたが、スポーツ・ツーリズムを「する」「みる」「支える」という3つの視点から考えてみたい思います。

「する」スポーツ・ツーリズム

する」というのは「スポーツをする」という意味です。

ですので、「スポーツをすることを目的とした、旅行・観光」ということになります。

分かりやすいのは、「ランニング」や「ジョギング」といった気軽に行えるスポーツや、「ダイビング」、「サーフィン」などのマリンスポーツ、「スキー」や「スノーボード」といったウィンタースポーツ、「登山」や「トレッキング」などの「山岳スポーツ」などを通じて、旅行・観光を楽しむといったあたりでしょうか。

特に、「東京マラソン」や「大阪マラソン」といった大きな規模のスポーツイベントでは、東京都外や、大阪府外からの参加者も多く、参加者の50%~60%程度は、「宿泊を伴ってイベントに参加している」とされています。

こうした「市民マラソン」などは、全国で年間1000大会ほど開催されているので、「スポーツ・ツーリズム」の市場としても、かなり大きな市場となっています。

また、先ほども少しご紹介したように、「部活動での遠征」なども、「する スポーツ・ツーリズム」の大きな市場です。

日本のスポーツの部活動では、「スポーツ合宿」というものがよく行われます。

日本人は、「合宿」というのが好きなようで、小学生からプロチームに至るまで、スポーツによる「合宿」は至る所で行われています。

こうした「スポーツ合宿」については、「旅行・観光」といったことがあまり楽しめない場合もあるかもしれませんが、合宿地周辺での交通機関の利用や飲食店などでお金が使われることが多いので、それなりの経済効果を生んでいるものと思われます。

また、「プロ野球のキャンプ地といえば宮崎県・沖縄県」「サッカーの合宿といえば御殿場(静岡県)」「ラグビーの合宿地といえば菅平(長野県)」などのように、大学・社会人・プロなどのトップレベルのチームが合宿をすることで有名な地域もあります。

こうした地域は、「確実に人が移動してくる」という代表的な「する スポーツ・ツーリズム」と言えます。

特に、日本は自然環境にとても恵まれた国ですので、今後は色々なスポーツを通じて「する スポーツ・ツーリズム」が増えていくと思われます。

「みる」スポーツ・ツーリズム

もう一つ、スポーツの楽しみ方として挙げられるのが「みる」という行為です。

プロスポーツの試合や、オリンピックやワールドカップの試合を「みる」というのは、皆さんも経験があるかと思います。

先ほど、「宮崎県」のことに少し触れましたが、宮崎県はプロ野球のキャンプとして有名です。
※宮崎県でキャンプするJリーグのクラブも多いです。

2014年に、宮崎県が公表したデータによれば、

✔ キャンプ期間中にプロチーム目当てで宮崎県に訪れた人は53万1000名

✔ それに伴う経済効果は89億9400万円

という報告がされています。

もちろん、1つのチームの存在だけでここまで多くの人々を動かし、経済効果を生み出すことは難しいですが、スポーツ以外のコンテンツで、ここまで多くの人を県内に呼び込むというのは、なかなできないのではないかと思います。

また、神奈川県が2019年に発表したデータによれば、2019年のラグビー・ワールドカップによる影響を受けて、神奈川県の観光客数は過去最多となったと報告されています。

神奈川県では、決勝戦を含む6試合が神奈川県横浜市にある「横浜国際競技場(日産スタジアム)」で行われました。

特に、横浜・川崎エリアにおいては、前年比で12.6%(851万人)も観光客が増えたとのことです。

さらに、日本ラグビー協会が公表したレポートによれば、ラグビー・ワールドカップが神奈川県にもたらした経済波及効果は「400億円と発表されました。

スポーツの試合がたった「6試合」行われただけで、その地域に400億円もの経済波及効果をもたらしたのです。

日本代表チームが史上初のベスト8入りを果たしたことも大きな要因ではありますが、日本代表チームが「横浜国際競技場」で試合を行ったのは、大会期間中に1試合しかありませんでした(予選の対スコットランド戦)。

それにも関わらず、これだけの人の流入や経済効果をもたらしたのですから、「みる スポーツ・ツーリズム」にもまだまだ大きな可能性が秘められていると感じます。

「ささえる」スポーツ・ツーリズム

スポーツを「する」にしても「みる」にしても、スポーツ施設や周辺環境の整備、イベントの企画立案・運営、人の移動支援など、「ささえる」人たちがいなければ「スポーツ・ツーリズム」は成り立ちません。

例えば、「自治体」「観光協会」「旅行代理店」「スポーツ・コミッション」などです。

身体活動を伴うスポーツにおいては、「どこでそのスポーツをやるのか、あるいはみるのか」ということがとても大切になります。

したがって、まずはその地域や土地の人々が、地元の文化や観光資源などをよく理解して、それをスポーツ・ツーリズムにうまく活用していくことが必要になります。

また、地元の人たちだけでは、なかなか面白いアイデアが浮かばなかったり、イベントを「魅力的にみせる」といったことができない場合がありますので、旅行代理店と一緒にスポーツイベントを企画し、旅客や宿泊と一緒になった「パッケージ・ツアー」などを実施することもあります。

スポーツ・コミッション」というのはあまり聞きなれない言葉かもしれませんが、

スポーツによる地域活性化や観光振興を目指す機関のことです。

自治体を始め、地域の経済団体やスポーツ団体、観光団体、メディアなどが集まった官民一体の独立組織で、スポーツイベント等の開発、誘致、開催支援などを行う組織のことです。

日本全国のすべての地域にこうした「スポーツ・コミッション」が設置されている訳ではありませんが、代表的な「スポーツ・コミッション」としては、埼玉県の「さいたまスポーツコミッション(2011年設立)」や、大阪府の「スポーツコミッション関西(2012年設立)」などが挙げられます。

今後、全国各地にこうした「スポーツ・コミッション」が設置されていくと考えられます。

スポーツ・ツーリズム」に関わってみたい方は、こうした「スポーツ・コミッション」の活動にも興味を持ってみると良いかと思います!

スポーツ・ツーリズムの実際の事例

最後に、「スポーツ・ツーリズム」の事例をいくつか簡単にご紹介したいと思います。

千葉県成田市とアメリカ代表陸上チームの取り組み

千葉県成田市ではスポーツ・ツーリズムの推進を積極的に実施しています。

2015年には、世界陸上 北京大会に出場するアメリカ代表の「事前キャンプ地」として、アメリカ代表を誘致することに成功しました。

アメリカのコーチや選手たちと、全国的にも有名な「成田山新勝寺」で必勝祈願を行ったり、「中台運動公園体育館」を使って、アメリカ代表選手たちと地元の子どもたちとが一緒になって陸上を楽しむイベントなどを開催しました。

成田市の取り組みで評価できる点は、「ローコスト(費用を抑えた)」なスポーツ・ツーリズムを実現したということです。

「スポーツ・ツーリズム」というと、とてもお金のかかる取り組みのように感じてしまいますが、成田市ではすべて既存の施設を使用し、運営スタッフは市の職員に加えて、ボランティアも多数参加したとのことです。

財源がない!」「新たなスポーツ施設を作る余裕がない!」という地方都市や地域でも、参考になる取り組みではないでしょうか。

※参考 「千葉県成田市のスポーツツーリズム推進戦略」「世界陸上アメリカ代表チーム事前キャンプ

青森県十和田市の「スポーツ流鏑馬」大会

流鏑馬(やぶさめ)」というのは、馬に乗りながら、的に向かって弓を放つ競技のことです。

青森県十和田市では、「スポーツ流鏑馬」という競技が盛んで、女性騎士だけの大会「桜流鏑馬」が開かれるなど、流鏑馬で地域振興を積極的に行っています。

流鏑馬」自体に参加する競技者は、20~30名ほどではありますが、2018年に開催された「第15回桜流鏑馬」では、イベントの2日間合計で、約23,000名もの来場者を集めました。

近隣の県だけではなく、関東地方などからも来場者が訪れるイベントになっています。

様々な努力が実を結び、2016年には一般社団法人地域活性化センターが主催する「ふるさとイベント大賞」で最高賞となる「内閣総理大臣賞」を受賞。また、2019年には「クールジャパンアワード2019」の一般部門に選ばれるなど、国内外からとても高い評価を得ています。

「スポーツ」といっても「野球」や「サッカー」のようなプロスポーツばかりではなく、流鏑馬」のように日本の伝統や文化をうまく活用したスポーツも、「スポーツ・ツーリズム」としての大きな可能性を秘めていると感じさせてくれます。

※参考サイト
十和田流鏑馬公式総合案内
東奥日報社 みらいボイス 「流鏑馬通じ人材育成 / 十和田の塾と乗馬団体」

富山県の「eスポーツ連合」

富山県では、「eスポーツ」を活用したスポーツ・ツーリズムの取り組みに力を入れています。

「走る」「投げる」「蹴る」などの身体活動をともなうものだけが「スポーツ」ではありません。

ゲーム機」や「モニター画面」さえあれば、どこでも気軽に楽しめるのが「eスポーツ」の魅力でもあります。

富山県の高岡市では、2019年9月に「トヤマ ゲーマーズデイ 2019 5Gコロシアム」という名の、「eスポーツ」イベントを開催しました。

県内最大級のイベント会場を使用し、2日間で大会参加者、来場者含め約3500人が集まりました。

注目すべきは、約700人の大会参加者のうちの40%は、「富山県外」から来場した参加者だったことです。

ゲームをするために、わざわざ県外に移動するというのは、すごいことだと思いませんか?

2018年に開催した際には、「地方でもこれほど質の高いイベントができるのか」と、SNSを中心に話題になったそうです。

徳島県大分県といった地域でも、「eスポーツ協会」「eスポーツ連合」といったものが立ち上がり、こうした地方のeスポーツを支援する企業も出てきています。

デジタル時代の「新スポーツ」として、eスポーツが地方活性化に貢献できるか注目ですね。

ちなみに、近年は「eスポーツ専攻」といった学科を設置する専門学校も全国各地で増えてきています。

これまであまり「スポーツ」とは縁のなかった人たちも、「スポーツ産業」あるいは「スポーツ市場」に参入していくことが増えていきそうです。

まとめ ~スポーツ・ツーリズムは成長産業!!~

今回は、\スポーツツーリズムが持つ「スポーツ×旅行・観光」の可能性/というテーマで、スポーツに関わる人も知っているようで意外と知らない「スポーツ・ツーリズム」について考えてみました。

日本としても、2012年に「日本スポーツツーリズム推進機構」が設置されたり、2016年にスポーツ庁と経済産業省が公表した「スポーツ未来開拓会議中間報告」では、国としてスポーツ・ツーリズムを推進し、2025年までにスポーツ・ツーリズムを含む周辺産業の市場規模を4.9兆円までに伸ばす、という目標が掲げられています。

2020年には「新型コロナウィルス」が世界中で流行し、この記事を書いている時点でもまだまだ収束の気配がありませんので、「スポーツ・ツーリズム」にとって大きなダメージを与えています。

ですが、今回ご紹介したような様々な取り組みが、今後全国各地で広がっていくことは間違いありません。

スポーツ・ツーリズム」の可能性をぜひ一緒に開拓していきたいですね!


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須賀 優樹
須賀 優樹
「ゼロからのスポーツビジネス入門」の運営代表として、「世界イチわかりやすいスポーツビジネス・マネジメント」を情報発信。産業能率大学にてスポーツマネジメントを教えています。スポーツ業界就職や起業相談、スポーツ組織向けコンサルティングも好評。