スポーツテックはスポーツビジネスをどう変えるのか?

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ユウ
「スポーツやスポーツビジネスの魅力を多くの人に知ってもらいたい」という想いから当サイトを運営。スポーツビジネスを学びたい、携わりたいという人に向けて情報発信。大学教員として大学生にスポーツマネジメントを教えた経験もアリ。

以前から、「アスリートのトレーニング」にIT・デジタル技術を活用するケースは割と多く見られましたが、最近では「スポーツビジネスにも」様々なIT・デジタル技術が積極的に導入されています。

例えば、「VR(Virtual Reality :仮想現実)」といった技術を使ってのスポーツ観戦や、「AI (Artificial Intelligence : 人工知能)」を活用して、試合ごとに最適なチケット価格を決める、などの取り組みが始まってきています。

今回は、こうした「スポーツビジネス×テクノロジーが、いったいどのようにスポーツビジネスを変えていく可能性があるのか、「スポーツテック(Spor Tech)」という言葉は一体どのような意味なのか? といったことを解説していきたいと思います!

この記事で学べること

✔ 「スポーツテック」の意味がわかる

✔ 「スポーツテック」が発展してきた理由がわかる

✔ 最新の「スポーツテック」事例がわかる

✔ 「スポーツテック」の課題がわかる


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スポーツテックってなに?

最初に、「スポーツテック(Spor Tech)」という言葉について少し触れたいと思います。

簡単に言えば、これまでの「スポーツ産業」に対して最新のテクノロジーを組み合わせることによって、新しい価値を提供する、製品やサービスのことです。

こうした「〇〇 × テック」という言葉は、「スポーツテック」だけではなく、他の産業にも存在しています。

例えば、「金融(Finance)」とテクノロジーを組み合わせた「Fin Tech(フィンテック)」という言葉は聞いたことがある方も多いかもしれません。

他には、「マーケティング(Marketing)」とテクノロジーを組み合わせた「Mar Tech 」や、企業の人材採用などにテクノロジー活用する「HR Tech」といった言葉もあります。

ちなみに、ローマ字では「Spor Tech」と表記されることが多いですが、日本語読みでは「スポーテック」ではなく「スポーツテック」と呼ばれることが多いようです。

こうした「〇〇 × テック」という概念が登場してきた理由としては、「テクノロジーを開発したり活用したりするコストが以前より下がってきた」ということや、「データサイエンス」と呼ばれるような、様々なテクノロジーを駆使することによって生まれる「データ」を分析したり活用したりする分野が発展してきた、という背景があります。

シンクタンクの大手である「野村総合研究所」が調査したデータによれば、日本の「スポーツテック」の市場規模は、2019年度では「310億円」と報告しています。

「310億円」の内訳は、動画配信サービスが「276億円」、IoTを活用したスポーツ用品・サービスが「34億円」とのことですので、現在の「スポーツテック」市場の大半は「動画配信サービス」ということになります。

日本のスポーツ産業全体の市場規模は、約5.5兆円(2012年時点)ですので、「スポーツテック」の「310億円」という金額は、まだまだ大きな額ではありません。

しかし、これまでご紹介したようにスポーツビジネスにおいても様々なデジタル技術を活用した取り組みが始まっていますので、今後はこの「スポーツテック市場」というのは右肩上がりになっていくことが予想されます。

NTTデータ経営研究所」が発表している資料によれば、「スポーツテック」に関わる企業は年々増えており、2017年に国内初のSports-Tech Landscapeを発表して以降、最新版では223社もの企業が「スポーツテック」に関わる事業をしているとのことです。

こう見ると、大手の企業から、それほど知名度の高くない企業まで、様々な業界の企業が「スポーツテック」に関わっていることが分かります。

「スポーツビジネス」というものは、現状の日本ではそれほど大きな市場ではありませんが、こうした企業がスポーツに関わることによってスポーツ産業全体の底上げが期待されます。

新たなスポーツ観戦のカタチ

さて、ここからは様々な最新テクノロジーを駆使した「スポーツビジネス」について簡単にご紹介していきたいと思います。

2020年はオリンピックイヤーでスポーツビジネスも大いに盛り上がると言われていましたが、残念ながら新型コロナウィルスの影響でオリンピックが開催されず、延期が決定しました。

しかし、「スポーツ観戦」はそうした状況の中で新たな変化の兆しを見せています。

その代表的な例が、「VR」や「ビデオ通話」を活用した観戦スタイルです。

VR技術を活用した試合観戦

プロ野球の「ソフトバンクホークス」では、VR技術を提供した試合観戦サービスを2020年6月から開始しました。


このサービスでは、ユーザーは4つのカメラ視点を自分で切り替えながら試合を観戦できるというサービスで、試合観戦以外にもVRコンテンツが楽しめるというサービスです。

VRの良いところは、普段の試合中継や、スタジアムでの観戦では見えない視点での観戦も可能で、自宅での試合観戦をより臨場感あるものへと変えることが期待できます。

ソフトバンクホークスだけでなく、サッカーでもVR技術が導入され始めており、Jリーグの「べガルダ仙台」ではVR観戦を2019年から提供しています。

ロッカールーム、サポーターの応援映像、チアリーダーズのパフォーマンス
などさまざまな視点での観戦が可能です。


5G (ファイブ ジー)」と呼ばれる通信システム回線が全国的に普及すれば、更にVR技術の提供が簡単になり、どのようなスポーツビジネスでも気軽に導入することができるでしょう。

ビデオ通話を活用したリモート観戦

ビデオ通話会議ツールである「ZOOM(ズーム)」を活用した「リモート観戦」も多くなっています。

最も代表的なケースが、横浜DeNAベイスターズが開催したオンラインリモート観戦です。

リモート観戦では、購入者は専用ページにアクセスすると、スペシャル実況&解説を楽しみながら観戦ができ、オーロラビジョンに自分の姿が映されるという特典も付いたサービスとなっています。

プラットフォームが「ZOOM」のため無制限に観客を取り入れることができない一方で、マイナーなスポーツで導入されれば、より多くの集客が期待できる可能性があります。

続々と登場する最先端デジタル技術を導入したスタジアム

ここ最近は、どの球場に足を運んでも、Wi-Fiは当たり前のように利用することが可能になりました。スタジアムのデジタル化は今後もより発展していくでしょう。

その中で最先端の技術を提供しているスタジアムが、アメリカのリーバイス・スタジアム(Levi’s Stadium)です。

リーバイス・スタジアム(Levi’s Stadium)

リーバイス・スタジアムは、カリフォルニア州にある多目的スタジアムで、NFLの「サンフランシスコ・フォーティナイナーズ(San Francisco 49ers)」が本拠地として使用しています。

IT関連のベンチャー企業などがひしめき合う「シリコンバレー」の、ど真ん中に位置するこのスタジアムは、「スマートスタジアム」というニックネームを持っています。

これまでのスタジアムの最大の欠点が、何万人もの観客が一気にインターネット回線に集中するため、Wi-Fiの速度を確保できない、という問題がありました。

リーバイス・スタジアムはこの問題を解消するため、約644kmにわたるケーブルをスタジアムに張り巡らせることで、通信の状態をクリアにしました。

その結果、観戦中にリアルタイムのデータをチェックしたり、座席にいながらフードを注文したりとこれまでにない観戦スタイルが可能になりました。

現状、このようなサービスを提供できるスタジアムやアリーナは限られているものの、5G技術が導入されれば、コスト面は改善され、どのようなスタジアムでもリーバイス・スタジアムのような通信環境を整えられるようになっていくでしょう。

AIによるチケット価格の決定

「みるスポーツ」におけるスポーツビジネスでは、「観戦チケット」の売れ行きはチームの収益に大きな影響を与えます。

こうした「観戦チケット」を効率的に販売するために、AI(人工知能)を活用することによって、「チケット価格」の判断・決定をおこなっているケースもあります。

これは、「ダイナミックプライシング」という仕組みで、過去のチケットの販売実績や試合日時、チケットの売れ行きなどの様々なデータをAIに読み込ませることによって、AIがチケット価格を決定するというものです。

この取り組みで成果を上げているのがJリーグの「横浜Fマリノス」です。

マリノスでは2019年度からこのシステムを導入し、本拠地でのリーグ優勝のかかったFC東京戦では、Jリーグ史上最多となる6万3854人の観客動員数を記録し、しかもその試合のチケットは試合前に完売しました。

また、2019年はラグビーワールドカップの影響で、マリノスの本拠地である「日産スタジアム(横浜国際競技場)」での試合数が例年より減ってしまい、横浜FCが普段本拠地としている「ニッパツ三ツ沢球技場」(約1万5000人収容)での試合開催が増えてしまいましたが、この仕組みによってチケット収入は前年よりも伸びたと報道されています。

この「ダイナミックプライシング」の仕組みについては今回は詳しくは述べませんが、対戦カードスタジアム開催時期などによって最適なチケット価格でチケットを販売することができるため、クラブにとっては観客動員数の増加が期待でき、収益向上に貢献する仕組みとして注目されています。

プロ野球の「ソフトバンクホークス」でも2019年の試合で限定的に「ダイナミックプライシング」を実施をしました。

ホークスの親会社である「ソフトバンク」は、世界的なIT企業であるため、クラブ経営にもこうしたIT技術を使った取り組みを積極的に実施しています。

本業がIT関連ではない親会社が所有するクラブとの「IT活用度」の差は、今後ますます広がっていくでしょう。

AI技術がさらに発達すれば、購入者の年齢層、座席からの眺め具合などからもより精度の高いチケット販売が可能になり、顧客満足の高い価格で提示することが可能となります。

こうした「ダイナミックプライシング」の仕組みは、元々は「ホテル予約」や「航空券販売」のような、観光業・旅客業で導入が始まったものですが、スポーツ産業はそうした産業や業界のビジネスと割と近い分野でもあるため、数年後にはほとんどのプロスポーツクラブやエンタテインメントビジネスで取り入れられていくと思います。

ITビジネスの問題点

このように、さまざまな技術を活用すれば、観客数を向上させるだけでなく顧客満足度もさらに高いものを獲得することが可能になります。

しかし、その一方でスポーツビジネスにITを導入するためには問題も多くあります。

莫大なコスト問題

リーバイス・スタジアム福岡PayPayドームなどのデジタルに特化したスタジアムや球場にするためには設備投資にかなりのコストをかけなければいけません。

その結果、資金が乏しいチームと潤沢な資金を持っているチームではスタジアム格差が生まれ、結果的に、チーム戦力にも大きな差が生まれてしまう可能性があります。

そのため、資金が少ないチームは、IT技術を低コストで抑えながら導入するための戦略を練る必要があります。

日本のプロ野球は、基本的には「球団各自の企業努力に任せる」というスタンスで運営されています。先ほども述べたように、ソフトバンクや楽天、DeNAといった、本業がIT関連である親会社が所有している球団は、こうした「デジタル化」の取り組みを進めるのがとても有利です。

一方、古くからプロ野球に関わってきた「新聞社」「鉄道」といった本業でビジネスをする親会社が持っている球団は、親会社自体がそうした「デジタル化」が進んでおらず、古いビジネスモデルや習慣からなかなか脱却できないため、格差はどんどん広がっていくと思われます。

一方、Jリーグや、Jリーグのモデルを参考にしているBリーグなどは、「リーグ」そのものがクラブの経営状況をしっかり把握し、足並みを揃えて運営されているため、プロ野球ほどの格差は生まれにくいかもしれません。

しかし、現状では先ほどの「マリノス」のように、AIを活用したビジネスなどをやろうと思っても、「詳しい人がいない」「システム開発のお金がない」などの状況に置かれているクラブがほとんどかと思いますので、リーグが強く主導して各クラブにそうした仕組みを導入するサポートをしてあげないと、特にJ2やJ3のクラブが「デジタル化」をしていくのは難しいと思います。

すべての産業でこうした「デジタル化」を推進できる「デジタル人材」は足りていませんので、「リーグ」あるいは「協会」といった組織がリーダーシップを発揮しないと、スポーツ産業のデジタル化はなかなか進まないでしょう。

法的リスクやセキュリティ対策の充実

ユーザーにデジタル技術を提供する場合は、「法的リスクのマネジメント」や「セキュリティ対策」の充実が必要不可欠になります。

「AI」などのデジタル技術を使う場合は、必ずと言っていいほど「顧客データ」を使用します。

つまり、みなさんが「どこに住んでいるか?」「どれくらい試合を観戦しているか?」「どんなチケットを買っているのか?」といったような「データ」を活用することによって、はじめてこうした「デジタル技術」が大きな価値を持つ、ということです。

また、スタジアムのような不特定多数のユーザーが訪れる場合、場合によってはWi-Fi経由からスマートフォン内の個人情報を抜き取られ、悪用されるというケースが考えられます。

万が一、ユーザーの情報が悪用されてしまうと、リーグやクラブ、スタジアムへの信頼度が下がり、ファン減少へ直結してしまう可能性が考えられます。

そのため、サービスを提供する側はデータを活用するにあたっての「法的なリスク」や、稼働させるシステムの「セキュリティ対策」を万全にする必要があります。

まとめ ~スポーツ業界のデジタル化は急務~

今回は、\スポーツテックはスポーツビジネスをどう変えるのか?/ というテーマで、最新技術を活用したスポーツビジネスについて考えてみました。

技術を導入するコストや運用するコストは年々下がってきていますので、デジタル技術を活用すること自体はそれほど大きなハードルはありません

しかし、「詳しい人がいない」「目先のことで精一杯で、そこまで手が回らない」というのがスポーツ産業の全体的な課題だと思います。

一方、世界ではスポーツに対してデジタル技術を活用する「スポーツテック」がどんどん進んでいます。

日本は、社会全体的に「デジタル化」への移行や取り組みがとても遅いです。

こうした課題を解決できる人材はスポーツビジネスにおいても、非常に重宝されると思います。

ぜひ、スポーツ以外の産業の「デジタルな取り組み」にも関心を持ってみてください!


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