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近年、「スポーツコミッション」と呼ばれる組織が注目され始めて来ています。
あまり聞きなれない方も多いかもしれませんが、この「スポーツコミッション」と呼ばれる組織が、今後の日本のスポーツ活動やスポーツ推進、スポーツビジネスなどに大きな影響をもたらしていくと期待されています。
日本においては「少子高齢化」の中で、これからスポーツに関わっていく人が劇的に増えていったりすることは、まずあり得ません。
つまり、スポーツ自体の「競技人口」やプロスポーツなどを観る「スポーツ観戦者」と呼ばれるような人たちを、これからどんどん増やしていくことはかなり難しいということです。
そこで、今後の方向性として注目されているのが「スポーツを活用して何かをする」という取り組みです。例えば、「スポーツ×旅行・観光」を組み合わせた「スポーツ・ツーリズム」や、「まちづくりにスポーツを取り入れる」といったことです。
そうしたことに、今回取り上げる「スポーツコミッション」は大きな役割を果たしていくことになります。
では、「スポーツコミッション」について解説していきたいと思います!!
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スポーツコミッションってどんな組織!?
「スポーツコミッション」という組織は、ある地域での「スポーツ合宿」や「スポーツイベント」、「スポーツ・ツーリズム」といったことに関する取り組みを、主体的に推進していくための組織のことです。
つまり、「スポーツを使って」その地域の人々だけではなく、他県や他国の人々も呼びこんで地域活性化や地域経済への貢献などを目指していく組織ということになります。
ですので、「スポーツコミッション」という組織自体は、自分たちで「サッカーチーム」などのようなものを持っているわけではありません。また、「スポーツコミッション」自体に「スポーツ選手」などが所属しているわけでもありません。
あくまで、「スポーツコミッション」という組織は、「ある地域の活性化などを目指して、スポーツを使って人々を呼び込むための企画や推進をしていく」ということが目的になります。
✔ スポーツを「活用」して、地域の活性化や経済的発展を目指していく組織
✔ スポーツ合宿やスポーツツーリズムの企画・推進・運営をしていく
✔「スポーツ」だけではなく地域の様々な「観光資源」なども活用していく
✔ 「地域単位」で様々なスポーツコミッションが活動している
「地域」という言葉が「キーワード」になるので、色々な地域に「スポーツコミッション」が存在しています。
後ほど、現在の日本に存在する様々な「スポーツコミッション」をご紹介していきますが、例えば岩手県には「はなまきスポーツコミッションビューロー」という名前のスポーツコミッションが存在しています。新潟県の十日町には「十日町スポーツコミッション」というスポーツコミッションが存在しています。
実際、「スポーツ庁」の「第2期基本計画」によれば、2021年には全国のスポーツコミッションの数を170までに伸ばしたいという目標が掲げられています。
※全国のスポーツコミッションの数は、2016年に56、2017年に83、2018年に99、2019年に118と、年々増加しています。
このように、「スポーツコミッション」は「スポーツ庁」のように「日本に1つしか存在しない組織」ではなく、「日本全国の各地域に存在している組織」になります。
「スポーツコミッション」は、「観光協会」であったり「県や市といった行政の中で、スポーツ関連のことを扱う部門」が中心となって立ち上げて運営している場合が多くなっています。
それぞれの「スポーツコミッション」によって様々ではありますが、「半官半民」のような組織だと思って頂ければよいと思います。※行政機関でもあり、民間企業でもある、というイメージ。
民間企業だけで、大規模なイベント開催や町ぐるみでの地域活性化、プロモーションなどをしていくのはなかなか難しいです。一方、行政は地域のニーズの把握やアイデアの創出、イベント運営などのノウハウがない、といった理由から「良質なコンテンツ」を生み出せないという場合が多いです。
そうした両者の「強み・弱み」をうまく補って活動していくことを目指すのも、「スポーツコミッション」の特徴と言えます。
どうしてスポーツコミッションが必要とされているの??
では、どうしてこの「スポーツコミッション」という組織が、これからの「スポーツ振興・推進」や「まちづくり」などの分野においても必要とされているのでしょうか。
それは、多くの地域で「人を集める」ということが非常に大切になってきているからです。
冒頭で少し触れましたように、日本は「超高齢化社会」あるいは「少子高齢化社会」といった状況に置かれていることから、国内の人口はどんどん減り続けていくことになります。
人口が増え続けていく社会においては、特別な工夫をしなくても経済がどんどん発展していったり、地域が発展していったりしますが、日本はまさにその逆で、なにもしなければ経済はどんどん縮小し地域は消滅していってしまいます。
そこで特に注目を集めているのが「スポーツ・ツーリズム」という取り組みです。
「スポーツ・ツーリズム」については以下の記事で詳しく取り上げていますので、ぜひお読み頂ければと思いますが、
こうした取り組みを行うことで、その地域の「中」に住んでいる人だけではなく、地域の「外」にいる人(県外の人や外国人など)も呼び込むことができれば、宿泊業・飲食業・旅客運送業、サービス関連業などに経済効果をもたらし、その地域の娯楽関連の雇用やスポーツ発展にも貢献できるのではないかと期待されています。
これまでも、地域で行われる「スポーツイベント」や、その地域の観光資源を活用した「旅行・観光」といったことは様々な地域で取り組まれてきました。
ですが、日本では「バブル景気(1980年代後半~91年頃)」と呼ばれた時代以降、レジャー産業やスポーツ産業が頭打ちになり、その地域に住んでいる人たちだけにスポーツイベントやレジャーを提供するだけでは、なかなか産業が発展していかないという課題に直面しました。
また、一般の市民・消費者の側から見ても、なかなかお給料が上がっていかない状況の中で、最低限度の暮らしを維持するのに精一杯で、「スポーツに対してお金を使える状況ではない」、といったことも大きな問題として存在しています。
一方、これまで通常の「旅行・観光」といった分野については、地元自治体の「観光課」や「観光協会」といったところが窓口になったり、様々な取り組みをしていました。
ところが、そうした「観光側」にとっても、その地域で一通り「名所」や「名物」といったものを観光客に体験してもらった後には、なかなか魅力的な「コンテンツ」を新たに発信したり、再び何かしらの目的で訪れてもらうことが難しい状況も少なくありません。
そこで生まれたのが、「スポーツを使って人を集める」という発想です。
特に「スポーツ・ツーリズム」と呼ばれるような取り組みにおいては、地域の自然を活用した「登山」や「スキー」「マリンスポーツ」といった「スポーツをする」という視点での活動ももちろんですが、そうして一時的に開催される「スポーツイベント」に対して「みる」あるいは「ささえる」といった多様な活動が生まれることが大きなメリットになります。
「スポーツ」を上手く活用することができれば、短期間でも数千人、数万人、数十万人といった県外の人や外国人を、その地域に呼び込むことも決して不可能ではありません。
「スポーツ」以外で、それだけの多くの人を地域に呼び込むことができる「コンテンツ」というのは、なかなか存在しません。
このように、これまでのスポーツ振興やスポーツ政策は、基本的には「地域の中にいる人達」のことを考えるのが中心でした。観光行政は、ひたすら「地域の外からの誘客」を目指すというのが目的でした。
ここを繋げるのが、「スポーツコミッション」という組織の大きな役割であり、存在意義であると言えます。
ただ、こうした取り組みはまだまだ始まったばかりであり、課題も多いとされています。
例えば、スポーツ・ツーリズムを目的として、ある地域に来た人たちが夜遅くまで騒いだり、ごみを捨てたりして、地域の安全や治安などにマイナスの影響を与えてしまうことや、様々な地域の人を受け入れて「スポーツイベント」などを実施するための「施設」などがきちんと整備されていない、といったことです。
このように、「スポーツコミッション」という取り組み自体にはまだまだ課題が多いのが現状ですが、日本全体としての課題とされる「超高齢化」や「少子高齢化」という社会問題に対して、あるいは地域の新たな魅力の発信や観光資源の開拓に対して、さらに「レジャー産業」や「スポーツ産業」という経済活動の発展に対してなど、多くの役割が期待されています。
【事例紹介】全国各地のスポーツコミッションの取り組み
さて、これまで「スポーツコミッション」の概念や、期待される役割などについて解説をしてきました。ここからは、「じゃあ、実際スポーツコミッションってどんなことやってるの??」ということを理解するために、具体的な事例をいくつかご紹介したいと思います!
NPO法人 銚子スポーツコミュニティ
千葉県銚子市にある「銚子スポーツコミュニティー」は2017年1月に「株式会社 銚子スポーツタウン」を設立し、2018年4月から銚子市のスポーツ・ツーリズム推進の拠点となるよう、廃校をスポーツ合宿施設として活用する取り組みを始めました。
銚子市は、2011年の東日本大震災以降、観光客の減少によって観光産業が大きな打撃を受けました。また、市の人口もこの30年間で毎年1,000人以上が減少している状況にあります。
銚子市には「夏の海水浴」や「犬吠埼」、「屏風ヶ浦」といった豊富な観光資源があるものの、観光客を集客するには限界があります。
そこで、「スポーツ」と「観光」の垣根を超えて、それぞれの特徴を生かした「マラソン大会」や「トライアスロン大会」「サイクリング大会」などを開催しています。
恒例となっているのが、「銚子さんまマラソン」というイベントです。
これは、銚子市内で海を間近に感じながら走れるコースを参加者たちが「マラソン」をするという大会なのですが、参加者は地元で取れた新鮮なサンマの炭火焼きを食べることができたり、特産品である「ぬれせんべい」を食べることができたりと、地元の「グルメ」と「スポーツ」を組み合わせたイベントになっています。
2020年度の大会は残念ながら新型コロナウィルスの影響で中止となってしまいましたが、2019年の第7回大会では「3279人」もの人がマラソンに参加したようです。
気持ちいい海辺を走った後に、地元でとれたてのサンマが食べれるなんて、とても楽しそうですね!!
【参考サイト】
NPO法人 銚子スポーツコミュニティー
銚子さんまマラソン 公式サイト
一般社団法人 松本観光コンベンション協会 松本スポーツコミッション
長野県松本市で活動する「松本スポーツコミッション」は、2013年に設立されました。
大会・イベントを誘致するだけでなく、地域の自然・ 景観・ 食などの特色を生かしたフィールド活用型スポーツイベントを企画・運営するプロデュース機能に力を入れています。
実際、「松本観光コンベンション協会」の公式サイトを見てみると、ユニークなスポーツイベントがたくさん企画され、開催されていることが分かります。
特にユニークなのが、「米かつぎマラソンin信州松本 虚空蔵山」というイベントで、なんとこのイベントでは「お米をかついで松本市四賀のシンボルである虚空蔵山(こくぞうさん)へ登る」のだそうです😂
しかも、参加した人が「かついだお米」は「参加賞」としてプレゼントしてくれるそうです!
また、イベントの公式サイトには「フィニッシュ後は卵かけご飯で栄養補給してください!」といった運営者側からのコメントが載っていたり、地元の資源をとてもうまく活用して、オリジナリティのあるイベントを作り上げています。
ちなみに、中学生からこのイベントに参加できるようですが、中学生でも「3Kg」のお米を持って10Km以上を走るとなると、相当大変なのではないかと思います。
また、「親子参加」などもOKだそうで、「親子参加」の場合は小学生でも参加できるようです。
なお、イベントの公式サイトには県外などから参加する人のために、「周辺の飲食店や旅館」などの情報も掲載されています。
こうした、「その地域ならでは」のイベントを作り上げることによって、県外からも人が集まり、スポーツを通じて様々な交流や経済活動が発生すれば、もっともっと楽しい世の中になっていきそうですね!!
【参考サイト】
一般社団法人 松本観光コンベンション協会
虚空蔵山 米かつぎマラソン
番外編 ~スポーツコミッションに就職はできるのか?~
最後にちょっとしたオマケになりますが、「スポーツコミッションという組織に、就職することはできるのか?」ということを少し考えてみたいと思います。
ここまでご紹介したように、近年日本の様々な地域でスポーツコミッションが増えてきていますので、学校でそうしたことを学んだり、SNSで活動を知ったり、実際にイベントに参加したりして「スポーツコミッション」という組織で「働く」ということに興味がある方もいらっしゃるかと思います。
結論を申し上げると、現状では「スポーツコミッション」という組織に「就職」をするというのはかなり難しいと思います。※特に「新卒」で就職するのはなおさら難しいと思います。
あくまで私の意見になりますので詳細は各コミッションなどにお問い合わせなどして頂きたいのですが、これまでご紹介してきたように「スポーツコミッション」という組織は「行政の中の1つの部門」のような位置づけであったり、「一般社団法人」や「NPO法人」といった法人格が運営している場合が多いことから、「あまり予算がない」というのが実情かと思います。
よって、行政の中でも普段は一般的なスポーツ振興を担当している職員や、地域観光などを担当している職員が、必要なときだけ集まって「スポーツコミッション」に関する仕事をしていたり、地域のボランティアの方や、地元企業の社長さんなどが少しずつお金を出し合って運営しているなど、かなり財源は苦しいと思います。
そうした組織に、「スポーツコミッションの仕事だけをする職員」として採用されるのはかなり難しいと思います。
ただ、「どうしてもスポーツコミッションに関わりたい!」という方は、行政の職員(地方公務員)になってスポーツや観光に関わる部署に配属されればチャンスがあると思います。また、地元で「スポーツコミッション」に関わっているような企業に就職できれば、関わるチャンスがあるかもしれません。
本来、日本各地の大学で育成している「スポーツマネジメント人材」と呼ばれるような学生たちは、卒業後にこうした組織に就職するなりして働くことができれば、学生時代に学んだことを社会に還元することができると思うのですが、残念ながらまだまだ日本はそうした環境になっていないのが現状です。
逆に「スポーツコミッション側」も、行政の職員や地域のNPO法人のスタッフだけではなく、もっと多様な人材に「副業」的な感じで少しでも「スポーツコミッション」に関わってもらう仕組みを作っていくなどの工夫も必要かと思います。
まとめ ~スポーツは「使って」こそ価値がある~
今回は、\スポーツコミッションってなに!? スポーツはもっと地域の役に立てる! / というテーマで、スポーツのことのみならず「社会課題の解決」や「地域活性化」といった役目を果たしていくことが期待される「スポーツコミッション」という組織について解説していきました!
✔ スポーツを「活用」して、地域の活性化や経済的発展を目指していく組織
✔ スポーツ合宿やスポーツツーリズムの企画・推進・運営をしていく
✔「スポーツ」だけではなく地域の様々な「観光資源」なども活用していく
✔ 「地域単位」で様々なスポーツコミッションが活動している
「スポーツコミッション」が全国各地で広まるようになってきたのは、2010年代に入ってからですので、本当にここ最近の出来事です。
1つ1つの「スポーツコミッション」の規模もまだまだ大きくはありませんので、財源的な問題や人材が足りないなど様々なハードルを乗り越えていかなければいけませんが、今後の「レジャー産業」「スポーツ産業」、ひいては「地域活性化」「地方創生」といったことに大きな貢献を果たしていく組織になっていくと思います。
皆さんもまずは、「自分の地元にスポーツコミッションってあるのかな!?」というところから始めてみてはいかがでしょうか!?
/
スポーツビジネスの「お悩み相談」や学びをお届けする「オンラインマガジン」をLINEでやってます😆📣
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✔ 「スポーツコミッション」の意味が理解できる
✔ 「スポーツコミッション」の成り立ちや必要性が理解できる
✔ 日本に存在する「スポーツコミッション」や取り組み事例が理解できる