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近年、「スポーツインテグリティ」という言葉を聞くことが多くなりました。
ですが、「スポーツマネジメント」や「スポーツマーケティング」という言葉と比較すると、何を意味している言葉なのか分かりにくいと思います。
この「スポーツインテグリティ」という言葉は、これからのスポーツの発展にとても大きな影響を与える重要な概念です。
今回は、「スポーツインテグリティ」に焦点をあてて、その言葉が何を意味するのか、どんな取り組みをすることなのか、どんな意義があるのか、などを書いていきたいと思います。
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スポーツインテグリティってどういう意味!?
「インテグリティ」という言葉は、日常生活の中ではなかなか聞きなれない言葉です。
私も「スポーツインテグリティ」という言葉を知るまでは、「インテグリティ」という言葉自体をほとんど聞いたことがありませんでした。
まずは、「インテグリティ」という言葉の意味から理解していきたいと思います。
「誠実・正直・高潔・品位」などを意味する。
「整合性がある」「矛盾していない」などの意味も持つ。
というわけで、「インテグリティ」という言葉は、解釈をすることがとても難しい言葉になります。
その中でも、まず1つとしては、「人間として本来あるべき姿にある状態」という意味を持っています。
「高潔さ・誠実さ・真摯さ・正直さ」といったように、人間の人格として理想的な状態であることが求められるということです。
そしてもう1つは、「いくつかの要素によって組み上げられた何かが統合され、完全な状態にある」ということです。
これはどちらかというと人間個々の状態を表すというより、「組織」や以下に例としてあげる「ITシステム」といった「なにかの目的のために機能する集合体」というイメージです。
つまり、「インテグリティ」という言葉は、「人間として、まずどうあるべきか」といった意味と、「人間がなにかの目的をもって取り組む際に発生する様々なモノの状態がどうあるべきか」といった意味を含んでいることになります。
考えれば考えるほど、難しい言葉です。
今回はこの程度に留めますが、「インテグリティ」をかなり簡単に言えば「人・ものごとが正しい状態にあること」という意味になります。
似たような言葉として、「インテグレート(Integrate)」という言葉がありますが、こちらも「統合する」とか「融合する」といった意味があります。
IT業界でシステム開発や、構築、保守、運用などを実施する「システム・インテグレーター」と呼ばれる企業群がありますが、「システムを統合する・完全な状態で運用する」などの意味があります。
※「システム・インテグレーター(System Integrator)」を略してSIer(エスアイアー)と呼ぶことが多いです。「日本の事業会社のITシステムは、SIer(エスアイアー)に丸投げだよね」みたいな会話をするときに使ったりします。(IT業界あるある)
さて、この「インテグリティ」という言葉の意味がある程度理解できたところで、これが「スポーツ」というものとくっつくと、どのような意味を持つのか、ということが今回の重要なポイントになります。
ここからは、世界的にスポーツを実施するいくつかの連盟や競技団体、組織などが定義している「スポーツインテグリティ」という言葉の意味をみていきます。
「integriy of sport とはクリーンなアスリートを守る、という意味である」
国際オリンピック委員会(IOC)による定義
「Integrityとは、ゲームの核をなすものであり、誠実さとフェアプレーによって生み出される」
国際ラグビー連盟(WR)による定義
スポーツにおける「インテグリティ」とは、「スポーツが様々な脅威により欠けるところなく、価値ある高潔な状態」を指す。
日本スポーツ振興センター(JSC)による定義
このように、「スポーツインテグリティ」という言葉には明確な定義がなく、競技団体や組織によって意味合いが違っていたり、どのような状態を「インテグリティ」と呼ぶのか、という認識が違ったりしています。
しかし、それぞれの「スポーツインテグリティ」の定義を広げて、より大きな解釈をしてみると、そこに共通する考え方が見えてきます。
それは、「スポーツが本来の価値を持った状態で実施されること」という考え方です。
例えば、「ルールを守る」「フェアプレーをする」「スポーツを楽しむ人たちを守る」といった、「当たり前のように実施されなければならない」といったようなことです。
つまり、逆を返せば「現代のスポーツは、本来の価値を持った状態で実施されていない」ということです。
「当たり前に守るべき」ことが「守られていない」のです。
「スポーツの本来の価値とはなんなのか?」というのをここで述べると、とても長くなってしまうため今回は最小限に留めますが、世の中のスポーツが「なにも問題がない状態」なのであれば、わざわざ「スポーツインテグリティ」などという言葉を作り、それを定義し、それに即した活動をしていく必要はないわけです。
ですから、現代のスポーツには様々な「問題」があるからこそ、それを克服するために「スポーツインテグリティ」という言葉が生まれてきたということです。
スポーツのなにが「問題」なのか??
さて、スポーツに何も問題がないのであれば、わざわざ「インテグリティ」などというわかりにくい言葉をくっつけて、「高潔さ」とか「整合性」といったことを言う必要はないわけです。
ですから、現代のスポーツは何かしらの「問題」あるいは「脅威」といったことにさらされているということになります。
いったい、スポーツはどんな「問題」や「脅威」と立ち向かっていく必要があるのでしょうか。
ここでは、いくつかの「スポーツインテグリティ」研究にて述べられていることを簡単に紹介し、現代スポーツがさらされている問題や脅威を理解していきたいと思います。
オックスフォード・リサーチによるスポーツインテグリティ
北欧を拠点とした政策研究機関である「オックスフォード・リサーチ(Oxford Research)」が2010年に示した「スポーツインテグリティへの脅威」として挙げたものが以下になります。
✔ ドーピング
✔ パフォーマンス強化のための違法なテクノロジー
✔ スパイ行為
✔ スポーツ活動にからむ資金不正
✔ 賭けを伴う八百長
✔ チート行為
✔ 不正な経理・資金的不正
✔ マネーロンダリング
✔ 若い選手の国籍移動
スポーツインテグリティの主要な脅威(オックスフォード・リサーチ)
ドーピングやスパイ行為といったことは、いまさら始まったことではありませんが、近年のテクノロジーの発達によって、「人間の遺伝子そのものを書き換える」とか「高度なハッキング技術を使って国家的な機密を盗み取る」ような事例が報告されています。
また、近年ではGoogleやAmazonといった、いわゆる「GAFA」と呼ばれるような巨大IT企業が、巧みに税金を逃れているため、欧州を中心としてそうした企業に厳しい規制をかける動向が強まっていますが、スポーツにおいても国際的な組織や巨額の資金を持つクラブなどが、不透明なカネの流れで活動しているといったようなことが言われています。
もはや、こうした問題は1つの国の努力だけでは対応・解決することができないレベルにまでなってきています。
日本スポーツ振興センターによるスポーツインテグリティ
日本スポーツ振興センター(JSC)では、2014年から「スポーツ・インテグリティ・ユニット」を設置し、八百長・違法賭博、ガバナンス欠如、暴力、ドーピング等の様々な脅威から、スポーツインテグリティを守る取り組みを実施しています。
その中で、JSCでは以下のような様々な問題を「スポーツインテグリティを脅かす脅威」として扱っています。
上記で紹介した「オックスフォード・リサーチ」と比較すると、「ガバナンス・コンプライアンス」という言葉や、「人種差別」「暴力・ハラスメント」という言葉が出てきています。
このブログでも「スポーツ・ガバナンス」という分野の考え方や取り組みについて紹介していますが、
「スポーツ・ガバナンス」という取り組みは、「スポーツインテグリティ」を守るためにある、とも言えます。
「ガバナンス」というのは元々は「企業を健全な状態で経営し、不祥事や不正を防ぐ」といったような目的で実施される取り組みで、スポーツ特有の取り組みではありませんでしたが、スポーツ自体が一大産業となっていくなかで近年必要性が高まってきています。
※参考サイト 日本スポーツ振興センター スポーツ・インテグリティの保護・強化に関する業務
https://www.jpnsport.go.jp/corp/gyoumu/tabid/516/Default.aspx
スポーツはこれからどこへ向かうのか?
紙面の関係上、あまりたくさんご紹介できませんが、「オックスフォード・リサーチ」と「日本スポーツ振興センター」が挙げる「スポーツインテグリティ」だけでも、かなり範囲や対象が広いことがわかると思います。
スポーツインテグリティという考え方は、まだ歴史が浅いため、これからも対象となるような脅威や問題点がどんどん増えていくと思われます。
ここで「問題」あるいは「脅威」とされることには、大きくわけて2種類のものがあります。
それは「スポーツそのものが抱える問題」と「スポーツを使って発生する問題」という2つです。
「スポーツそのものが抱える問題」というのは、分かりやすい例で言うと「ドーピング」や「暴力・ハラスメント」といったことです。
「よい成績を残すためにあらゆる努力を惜しまない」というのはスポーツ選手としてとても素晴らしいことではありますが、それが行き過ぎてしまった結果が、不正薬物などに手を染めてしまう「ドーピング」です。
あるいは、指導者が選手に対して暴力的な発言や行動をしてしまうことなどが頻繁にニュースなどで取り上げられますが、こうしたことは「とにかくスポーツで結果を残したい・名声を得たい」といったような、スポーツの活動そのもので生まれてくる問題点です。
一方、「スポーツを使って発生する問題点」というのは、「スポーツ活動にからむ不正な資金の流れ」や「八百長・違法な賭博」といったことです。
この場合は、スポーツをしている選手やそれを応援しているファンなどは気づきませんが、その裏でサッカークラブのオーナーが自分のサッカークラブを使って脱税をしようとするとか、競技を統括する協会や連盟などが補助金などを不正受給するといった問題です。
「ドーピング」や「暴力」などであれば、「当事者」あるいは「被害者」といったことがわかりやすいため、問題が明るみになりやすいですが、「スポーツによる不正なカネの流れ」などは、組織ぐるみでの取り組みになる場合が多く、不正が発覚するまでに時間がかかったり、明確な証拠や証言がとれない場合があります。
近年の厳しい目もあって、スポーツによる「暴力」などは少しずつ減っていく方向に向かって行くと思われますが、むしろこうした「スポーツを使っての不正なカネ儲け」などは、これからどんどん増えていく可能性があります。
こうしたことを防ぐためには、「インテグリティ」の1つの意味である「人間として、まずどうあるべきか」をしっかりと認識してスポーツと向き合える人間が、スポーツに関わる必要があります。
「スポーツをマネジメントする」という「能力」の部分も大切でありますが、「ひとりの人間として、スポーツにどう関わるのか」ということがまずは大切であるということです。
その上で、「インテグリティ」のもう1つの意味である、「いくつかの要素によって組み上げられた何かが統合され、完全な状態にある」ということを「スポーツ」に置き換えて、「スポーツが本当に価値のある状態とはどういうことなのか?」をしっかりと考えて取り組んで行く、ということです。
残念ながら、現代のスポーツはこうした「インテグリティ」が置き去りにされたまま、政治や経済、企業の都合などで「スポーツ本来の価値」を発揮できない方向へ進んでしまうことが多いです。
まとめ ~スポーツに「向き合う」ということ~
今回は、\スポーツインテグリティってなに? スポーツはこれからどこへ向かうのか!?/ というテーマで、まだまだ聞きなれないけど大切な概念である「スポーツインテグリティ」という言葉について解説をしてきました。
「インテグリティ」という言葉には、「高潔さ・誠実さ・真摯さ・正直さ」といったような「人間として本来あるべき姿にある状態」という意味があります。
もう1つは、「組織」や「ITシステム」などの、「いくつかの要素によって組み上げられた何かが統合され、完全な状態にある」という意味を持っています。
これを「スポーツ」に当てはめれば、「スポーツに対して誠実に向き合う」という「スポーツに関わるひとりひとりの人間としての在り方」と、「スポーツというモノが健全な状態で本来の価値を生み出すこと」という2つの意味を含んでいます。
「スポーツインテグリティ」という言葉に明確な定義はありませんが、こうして考えると、みなさんも「自分は本当にスポーツに対して真摯に向き合うことができているだろうか?」「自分が運営しているスポーツクラブや、自分が入会しているスポーツジムは本当に健全な状態なのだろうか?」といったことが浮かんでくると思います。
こうしたことをひとりひとりが考えていくことが、まずは「スポーツインテグリティ」の第一歩なのではないかと思います。
みなさんなりの「スポーツインテグリティ」の定義を、ぜひ考えてみてくださいね!!
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スポーツビジネスの「お悩み相談」や学びをお届けする「オンラインマガジン」をLINEでやってます😆📣
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✔ 「スポーツインテグリティ」の意味が理解できる
✔ 「スポーツインテグリティ」の重要性が理解できる
✔ 現代スポーツの「問題点」が理解できる