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今回は、スポーツ産業のメインとなっている「3つの分野」についてお話したいと思います。
近年では、「スポーツ×〇〇ビジネス」のように、スポーツと観光・旅行を組み合わせた「スポーツツーリズム」といったものや、スポーツを使って地方のまちおこしをしていく「スポーツ×地域創生」など、スポーツが様々なものと組み合わさって、ビジネスになったり、多くの人の楽しみになったりしてきています。
そんな中でも、これまでスポーツ産業を支えてきた「3つの分野」というのは、いまだに大きな存在感を持っているのです。
その3つの分野とは、
✔ スポーツ用品 産業
✔ スポーツ施設 産業
✔ スポーツメディア(サービス)産業
スポーツビジネスの伝統的な3分野
という産業です。
今回は、このスポーツ産業の中心となっている「3つの分野」についてご紹介していきたいと思います!!
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【用品・施設・メディア】は「伝統的3領域」と呼ばれている!!
「スポーツ用品産業」「スポーツ施設産業」「スポーツメディア(サービス) 産業」という3つの分野は、少し教科書的な言い方をすると、「伝統的3領域」などと呼ばれてきました。
「伝統的」ということは「古くから存在している」ということです。
この考え方が考案された当時は、まだ「スポーツサービス」というものが現在のように多様化しておらず、「スポーツ教室」や「野球観戦」といったものが「スポーツサービス」に含まれている状況でした。
こうしたスポーツ産業、あるいはスポーツビジネスの分け方は、「日本標準産業分類」と呼ばれる、「製造業」や「小売業」、「サービス業」といったような、「業種」の分け方ではなく、「スポーツビジネスの何に関わっている企業か」という視点で分けられているものです。
ミズノという企業の例では、「野球のバット用の木材の育成(林業)」と「直営店でのスポーツ用品販売(小売業)」の2つの事業を同じ会社としてやっていた場合、「日本標準産業分類」という国が決めた産業の分類では、「別々の産業」ということになってしまいます。
しかし、この「3つの分野(伝統的3領域)」の考え方で分ければ、野球のバット用の木材の育成(林業)と直営店でのスポーツ用品販売(小売業)も結局はミズノという会社が、スポーツ用品を作ったり販売したりするためにやっている事業なのですから、それはすべて「スポーツ用品産業」である、と考えることができるということです。
1990年代前半頃までは、日本のスポーツ産業は主にこの「3つの分野(伝統的3領域)」がそれぞれ個別に発展してきました。
・スポーツをやりたい人がいる → スポーツ用品を買う → スポーツ施設にいってスポーツをする
・スポーツをテレビや新聞で観たい人がいる → メディアが中継や報道をする
といったように、スポーツビジネスも単純なものでした。
1990年代後半以降は、この「3つの分野(伝統的3領域)」がそれぞれに重なり合って色々なスポーツビジネスが生まれてきました。
しかし、現代のスポーツビジネスでは、これらの区分けはほとんど意味をなさなくなってきています。
スポーツを楽しむ人々(ファン)や、スポーツによって何かしらのメリットを受け取るお客さん(顧客)のニーズが多様化して、スポーツビジネスを行う企業としての経営も難しくなってきている中で、いつまでも同じようなサービスだけを提供しているような企業では生き残ることができないからです。
なので、スポーツ用品メーカーがスポーツ施設の経営をしたり、スポーツメディアがスポーツ用品を作ったり、ということは当たり前になってきていますし、今まで「スポーツ産業」の枠に入っていなかったゲーム制作会社などのようなインターネット関連企業が、スポーツビジネスに参入してくることも増えてきています。
スポーツ用品産業 ~スポーツを「する」人々を支える~
「スポーツ用品産業」というのは、簡単に言えば「スポーツ用品を作り出して、スポーツを楽しむ人に対して販売する仕事」ということです。
「スポーツ用品産業」の中にも、いくつかの分類があって、ざっくり分けると、
✔ 製造業(せいぞうぎょう)
✔ 卸売業(おろしうりぎょう)
✔ 小売業(こうりぎょう)
という感じになっています。
「製造業」というのは簡単に言えば「ものづくり」のことです。つまり「スポーツ用品を作り出す仕事」のことです。「スポーツメーカー」などと言われることも多いですね。
例えば、日本には、
アシックス ジャパン
アディダス ジャパン
ゴールドウィン
コンバースフットウェア
ダンロップスポーツ
デサント
ナイキジャパン
プーマジャパン
ニューバランスジャパン
ミズノ
モルテン
ヨネックス
といったような「スポーツ用品製造企業」があります。
また、「卸売業」というのはあまりイメージが湧かないかもしれませんが、「製造業(メーカー)」が作った商品(シューズなど)を買い取って、小売業(スポーツショップなど)に売っている人たちのことです。
日本では、イモト、ZETT(ゼット)、SSK(エスエスケイ)、モルテンといった会社が「スポーツ卸売業者」として企業活動をしています。
そして、「小売業」というのは、実際にみなさんがスポーツ用品を買いたいときに行く「お店」のことです。
日本で「スポーツ小売業」として活動する企業は、
アルペン(スポーツデポ,アルペン,ゴルフ5)
ゼビオ(スーパースポーツゼビオ,ヴィクトリア,ゴルフパートナー)
ヒマラヤ(ヒマラヤスポーツ)
スポーツオーソリティ
加茂商事(サッカーショップKAMO)
ビーアンドディー(B&D)
などが有名ですね。こうした「スポーツショップ」でスポーツ用品を買ったことがある人も多いと思います。
こうした「スポーツ用品」に関する市場規模は、「レジャー白書(2019年版)」によれば、2018年時点ではおよそ「2兆円」という規模になっています。
「レジャー白書」の中には、「スポーツ用品」に関わる市場として、
1. 球技スポーツ用品
2. 山岳・海洋性スポーツ用品
3. その他スポーツ用品
4. スポーツ服等
といったような4つのセグメントに分かれています。
近年は、ゴルフや野球などの「球技人口」の減少によって「球技スポーツ用品」の市場が落ちてきていますが、逆に個人で手軽に楽しめる「ジョギング・ランニング・筋トレ」といったスポーツ活動の際に使用するシューズやウェア、トレッキングなどで使用するキャンプ用品なども人気が出てきています。
スポーツ用品関連のビジネスについてもっと知りたい方は、以下のような記事もぜひ参考にされてみてください!!
スポーツ施設産業 ~スポーツをより「楽しむ」ために大切な場~
「スポーツ施設」は、みなさんにとって身近な存在だと思います。
スポーツを「する」ときに利用するのはもちろんですが、プロスポーツなどの試合を「みる」とき、あるいは「スポーツイベント」を開催するスタッフやボランティアとして、スポーツを「ささえる」ときなど、様々な場面で私たちは「スポーツ施設」というものと関わっています。
「スポーツ施設」は大きく分けて、以下の3つのような「主体」が存在しています。
※「主体」というのは、どんな組織がスポーツ施設を所有しているのか、ということです。
✔ 学校体育・スポーツ施設
✔ 公共スポーツ施設
✔ 民間スポーツ施設
「スポーツ施設」の大きな分け方
また、これらの「主体」が実際にどれくらいの数の「スポーツ施設」を所有しているかを表したのが以下のイラストです。
この通り、日本の「スポーツ施設」の大半は「学校」か「自治体」が所有している「スポーツ施設」のため、基本的には「スポーツ施設そのもので稼ぐ」という目的で運営されているわけではありません。
よって、先ほどの「レジャー白書」の中にも、「学校や自治体」が所有している「スポーツ施設」に関する売上などは計算されていません。
参考まで、「レジャー白書」の中で掲載されている「スポーツ施設・スクール」というカテゴリの市場規模をみると、2018年度は約「1.7兆円」という数字になっています。
1996年時点での「スポーツ施設・スクール」の市場規模は約「2.9兆円」であったことから、20年近くで「約半分」に市場が落ち込んでしまったことになります。
特にスポーツ施設産業の中で大きな規模を誇っているのが「ゴルフ場」に関する市場なのですが、ゴルフ人口の減少やプレーヤーの高齢化、広大な土地の維持管理に対して採算が取れない、といった理由から、年々市場が縮小してきてしまっています。
逆に、「フィットネスクラブ」に関する市場は年々伸びてきていますが、それでもまだ「ゴルフ市場」のほうが「フィットネスクラブ市場」の「2倍」程度の市場規模になっています。
近年は、「スポーツ庁」が「スタジアム・アリーナ改革」と題して、全国のスポーツ施設のさらなる活用や収益化などを目指して、様々な取り組みを全国の自治体と一緒になって取り組んでいます。
特に、先ほど解説したように日本のスポーツ施設は「学校や自治体が所有」しているような「公的」なスポーツ施設が多いため、それらをどのようにより広い用途で活用していくかも大きな課題となっています。
スポーツメディア産業 ~スポーツの楽しさを幅広く届ける~
「スポーツメディア」というのは、「スポーツ」の「試合」や「選手のドキュメンタリー」などをテレビ、本、インターネットなどを通じて「報道」する仕事のことです。
そういう意味では、このブログも「スポーツビジネスに関する様々な情報を提供するメディア」と呼べるかも知れません🤗
この「スポーツメディア」という産業に関しては、これまでの「スポーツ用品産業」や「スポーツ施設産業」と違い、「スポーツをする上で必須ではないが、関連して生み出される財・サービスである」という特徴を持っています。
つまり、「スポーツ用品」や「スポーツ施設」がなければ「スポーツそのもの」を実施することができませんが、「スポーツメディア」はその存在がなかったとしても、スポーツをすること自体に影響がない、ということです。
また、「日刊スポーツ」や「スポーツ報知」といった新聞や、「DZAN(ダゾーン)」や「J SPORTS」のように、「スポーツのことだけしか報道しないメディア」というのも存在してはいますが、「毎日新聞」や「読売新聞」といった大手新聞や、「TBS」や「フジテレビ」といった大手テレビ局では、スポーツのことばかりを報道するわけではないので、この「スポーツメディア」の「市場規模」というのを推計するのはとても難しくなっています。
「スポーツメディア産業」の市場規模などを知りたい時に、現時点で一番参考になりそうなのは、「スポーツ庁・経済産業省」が2020年に監修した「わが国スポーツ産業の経済規模推計」という資料です。
この資料の中には「スポーツメディア」という1つのカテゴリでの「市場規模」は掲載されていませんが、「映像・音声・文字情報制作」「放送」といった、いくつかのカテゴリにて、「スポーツGDP」という数字が掲載されています。
「スポーツGDP」とは??
スポーツ産業の経済規模を測定するための仕組みであるスポーツサテライトアカウント( SSA Sports Satellite Account )のこと。
「サテライトアカウント」とは従来の経済計算では把握できないテーマや分野に適応するための勘定体系のこと。
ちなみに、「資料」に掲載されている中で「スポーツメディア産業」というカテゴリで括れそうな「映像・音声・文字情報制作」「放送」という分野の市場規模を合計してみると、
● 映像・音声・文字情報制作 ⇒ 1,754億円
● 放送 ⇒ 1,169億円
● 合計 2,923億円
となっています。
先ほどまでの「スポーツ用品産業」と「スポーツ施設産業」で紹介した「レジャー白書」とは、データの定義や取り方が異なっているので、単純に比較することはできませんが、それらの産業に比べれば「スポーツメディア産業」というものは小さい規模であると言えます。
しかし、そうした「スポーツメディア」を通じて、オリンピックやワールドカップといった巨大なスポーツイベントに大手企業が何千億円もの「スポンサー料」を支払ったり、「DZAN(ダゾーン)」などが「Jリーグ」に対して巨額の放送権料を支払ったりすることで、日本のサッカー文化の発展や競技力向上といったことに間接的に関与していることを考えると、こうした「金額」以上に「スポーツメディア産業」がスポーツに対して貢献している価値は大きいです。
今回は、「サッカースクール」や「ヨガレッスン」のような「スポーツ指導サービス」や「プロ野球・Jリーグ」などの「スポーツ興行」などが含まれる「スポーツサービス」と呼ばれる産業については紹介しませんでしたが、ここで紹介した「3つの産業」がスポーツ産業としてのメインになっています。
まとめ ~スポーツを「する」機会をどうやって増やすか~
今回は、\スポーツ産業で重要な3つの分野はこれ!【用品・施設・メディア】/ というテーマで以下の3つの産業が、スポーツビジネスを支えてきたということをお伝えしていきました。
✔ スポーツ用品 産業
✔ スポーツ施設 産業
✔ スポーツメディア(サービス)産業
スポーツビジネスの伝統的な3分野
スポーツ産業の発展や、スポーツビジネスの成功のためには、なによりも「スポーツをする」という人がひとりでも増えることが大切です。
「スポーツをする」人が増えなければ、スポーツ用品を買ったり、スポーツ施設を使ってスポーツを楽しむ機会もなかなか増えないからです。
今後は「野球」や「サッカー」といった、「競技」の枠を超えた取り組みや、気軽に楽しみやすい新たなスポーツの形などが増えてくることが大切ですね。
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スポーツビジネスの「お悩み相談」や学びをお届けする「オンラインマガジン」をLINEでやってます😆📣
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✔ スポーツ産業の中心となっている分野が理解できる
✔ スポーツ産業の発展の歴史がわかる
✔ 今後のスポーツ産業の動向や可能性がわかる