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今回は「スポーツ施設」に求められる「3つの大転換」というテーマで解説したいと思います。
近年、日本のスポーツ施設運営は大きな転換期を迎えていると言われています。
昭和期に建設された多くのスポーツ施設が老朽化してきていることや、スポーツ施設に求められる役割が多様化してきていること、「スポーツ」そのものが「産業化」あるいは「サービス化」してきていることによって、スポーツを体現する場であるスポーツ施設にも「サービス化」が求められてきているなどなど、様々な要因がスポーツ施設建設や運営に影響を及ぼしてきています。
今回は、スポーツ施設に求められる「3つの大転換」として、以下の3点から今後のスポーツ施設活用について考えていきたいと思います。スポーツ施設に携わる方や、スポーツ施設関連のビジネスに興味がある方などの参考になれば嬉しいです!
- スポーツ施設での「顧客体験」がより重要になってきている!
- スポーツ施設が「まちづくり」や「まちおこし」に関連してきている!
- スポーツ施設の収益改善が求められている!
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はじめに この記事で扱う「スポーツ施設」について
まず初めに、今回の記事で扱う「スポーツ施設」については、小学校や中学校といったような「学校」が所有しているスポーツ施設ではなく、一般の市民からプロスポーツチームといった幅広いスポーツユーザーが活用できる施設を想定しています。
また、「セントラル」や「コナミスポーツ」のような「フィットネスクラブ」ではなく、「市民体育館」や「陸上競技場」、何千人、何万人といった観客を収容できるようなアリーナやスタジアムを想定して考えていきます。
それでは、以下の3点について1つ1つ考えていきたいと思います。
- スポーツ施設での「顧客体験」がより重要になってきている!
- スポーツ施設が「まちづくり」や「まちおこし」に関連してきている!
- スポーツ施設の収益改善が求められている!
スポーツ施設での「顧客体験」がより重要になってきている!
主にスポーツ観戦をする場合の「観客」や「ファン」といった人々が、スタジアムやアリーナといった場所で試合を観戦する際に、どのような「価値」を受け取ることができるか、といったことが近年変化してきています。
これまでの日本のスポーツ施設の多くはスポーツを「する人」のために建設されてきました。
日本のスポーツ施設においては「〇〇競技場」や「〇〇球技場」あるいは「〇〇体育館」といったような施設名が付いている場合が多いですが、こうした施設は基本的には「スポーツをする人」のために作られた施設であって、「スポーツをみる」ことを考慮して作られていません。
Jリーグのような「プロスポーツ」のチーム、クラブが使用するスタジアムにしても、客席の背もたれがないとか、屋根がないとか、トイレが少なくてハーフタイムに大混雑する、エレベーターやエスカレーターなどがなく子ども連れや高齢者、障がい者といった人たちが観戦しづらい、といったようなことが普通にあります。
スポーツ観戦をする以上は「試合の内容が面白い」とか「スター選手がいる」といったことはもちろん重要ではありますが、スポーツには「勝ち・負け」という要素がある以上、常に勝ち続けて面白い試合を提供することは不可能に近く、スター選手を育てたり獲得したりするのも「運」の要素に左右されることも多いです。
よって、「試合の中身」だけで多くの観客を惹きつけて、長期的にファンになってもらうということはかなり難しいということになります。
ですので、そうした「試合の中身」にプラスして、より顧客に「感動」や「快適」「安心」といった価値を提供できるスタジアムを作って運営していくことが求められてきています。
近年の成功事例としては、プロ野球・広島東洋カープの本拠地である「MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島」が挙げられます。2009年に開業したスタジアムでは、試合を観戦しながらバーベキューができたり、寝転びながら観戦できるゾーン、スタジアムでしか食べることができない様々なグルメなど、多様な価値をファンに提供しています。
近年は様々なスタジアムやアリーナが工夫をこらした取り組みをしていますので、興味のある方はぜひご自分でも調べてみて頂ければと思います!
スポーツ施設が「まちづくり」や「まちおこし」に関連してきている!
これまでの日本のスポーツ施設は、「駅から遠い」「不便な場所にある」「人が集まらない場所にある」といったように、必ずしも人々の生活と一体になっておらず、スポーツを「する」「みる」といったスポーツそのものを楽しむ強い目的がなければ、なかなか市民の足が向かないという状況にありました。
こうした中で、国のスポーツ政策を取りまとめる行政機関である「スポーツ庁」が、平成28年に「スタジアム・アリーナ改革指針」というものを公表しました。スポーツ産業のさらなる活性化や、スポーツを通じた地域経済・社会の活性化に向けて、スポーツ庁が作成したガイドラインになります。
その指針の中で「スタジアム・アリーナ革命によって地域にもたらされるもの」として、以下の4つを上げています。
- 地域のシンボルとなるスタジアム・アリーナ
- スタジアム・アリーナを各とした新たな産業の集積
- スポーツの波及効果を活かしたまちづくり
- 地域の持続的成長
1つ1つの解説はここでは省略しますが、要するにスポーツ施設をもっと地域社会や経済と一体になるように建設・運用をすることによって、地域社会が活性化し、スポーツを通じた健康づくりや観光、地域課題の解決といったことに貢献させていく、ということを言っているわけです。
これまでは単にスポーツを「する」「みる」といったときだけに使われていたスポーツ施設を、もっと地域社会に貢献する形で様々な用途に活用し、多様な価値を提供していくことが求められているのです。
こうした「次世代型スタジアム・アリーナ」として、いま最も注目されているのが、2024年秋に開業予定となっている「長崎スタジアムシティ」です。
詳細は以下に紹介するリンクの記事などが詳しいため、興味のある方はご覧頂ければと思いますが、長崎県の中心街である「長崎駅」から徒歩10分という非常にアクセスの良い場所に、サッカースタジアム、アリーナ、商業施設、ホテル、オフィスビルなど、日本で前例がないと言ってよい規模での超複合型スタジアムが建設される予定になっています。
完成したら、ぜひ行ってみたいなぁと思っています!!
参考リンク : 【公式】長崎スタジアムシティプロジェクト
参考リンク : 長崎スタジアムシティプロジェクト 2024年秋開業予定!どのような施設に?最新情報も!
スポーツ施設の収益改善が求められている!
日本のスポーツ施設の大半は「赤字運営」だということをご存知でしょうか?
「スポーツ施設って人もいっぱい来るし、儲かってそう!」というイメージのある方もいらっしゃるかもしれませんが、実態としてはスポーツ施設の経営状態はかなり苦しくなっています。
なぜそうした「赤字運営」になってしまうかというと、上記でも少し触れてきましたが、日本のスポーツ施設が儲からない原因として以下の4つが言われています。
- 収入源が少ない
- イベントを呼び込めていない
- 用途が限られる
- 立地が悪い
みなさんの地域の「市民体育館」や「陸上競技場」のような施設をイメージして頂ければ分かりやすいと思いますが、そうしたスポーツ施設には「自動販売機」や「コインロッカー」「シャワー」といったようなスポーツを「する」ための最低限の設備しか用意されておらず、飲食、物販、広告などがほとんどない場合が多いと思います。
よって、施設側からすると収入源は「スポーツ施設を利用者が使うための利用料」くらいしかなく、後は県や市からの税金や補助金といったものに頼らざるを得ないのが現状です。
実際、2013年に日本政策投資銀行が全国のスポーツ施設の収益情報を調査したデータによれば、調査した287施設のうち、収益性が確保できているのは全体の14%程度であった、と報告されています。
先ほど紹介したスポーツ庁の「スタジアム・アリーナ改革指針」においては、「コストセンターからプロフィットセンターへ」というフレーズが使われています。
つまり、スポーツ施設はこれまでのように赤字を垂れ流し続ける施設ではなく、より多様な価値を提供して収益性を高めていき、黒字化していく必要がある、ということを目指しているのです。
では、実際に何をどうすればよいのか、というのがなかなか難しく、すべてのスポーツ施設に共通の手法やルールが適用できるわけではないので、どのスポーツ施設でもまだまだ手探り状態であるというのが実態であると思います。
スポーツ庁の「スタジアム・アリーナ運営・管理計画検討ガイドライン」によれば、以下のような機能がスポーツ施設の運営・管理者に求められるということが記載されています。
「1.」や「2.」に関しては、どのスポーツ施設でもこれまである程度取り組んできていることだと思われますが、「3.」や「4.」に関しては全く経験がなく、何をどうすれば良いか分からない、というスポーツ施設が大半ではないかと思います。
逆に言えば、「3.」や「4.」をスポーツ施設運営に持ち込むことができる人材が求められているということでもありますので、次世代のスポーツ施設運営に携わりたい方にとっては、そうした領域を学んだり経験を積むことで、非常に価値のある人材になれるのではないかと思います。
まとめ ~激変するスポーツ施設のあり方に対応するには~
今回は\スポーツ施設に求められる3つの大転換とは!? スポーツ施設の価値向上へ/というテーマで、今後の日本のスポーツ施設に求められる3つのポイントを解説しました!
- スポーツ施設での「顧客体験」がより重要になってきている!
- スポーツ施設が「まちづくり」や「まちおこし」に関連してきている!
- スポーツ施設の収益改善が求められている!
スポーツ施設には様々な課題が山積みになっていますが、こうした課題を一度に解決していくのはかなり困難を極めると思います。
その地域の特性や、スポーツ施設の特徴などを踏まえて、「何を優先するべきか」を判断し、かじ取りしていく力がスポーツ施設運営に求められてきています。
これまでのスポーツ施設運営は、「設備が壊れていないか」「設備がルール通りに正しく使われているか」「利用者が危険なことをしないように監視する」といったように、どちらかといえば「管理する」ということがメインでした。
ですが、これからはスポーツ施設に求められている価値や役割をしっかりと「定義」し、やるべきことに「優先順位」をつけ、適切なリソースを配置し、目的や目標に向けて事業を推進していく「プロジェクトマネジメント」の力が求められてきます。
単に施設を管理するだけの仕事は人工知能やロボットといったマシンに代替されていくのは間違いないため、スポーツ施設運営に携わる人にもスキルのアップデートが迫られてくると思います。一緒に勉強していきたいですね!
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