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日本の「スポーツ産業」に足りないものとは? いつまでも「体育」でいいのか?

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須賀 優樹
「ゼロからのスポーツビジネス入門」の運営代表として、「世界イチわかりやすいスポーツビジネス・マネジメント」を情報発信。産業能率大学にてスポーツマネジメントを教えています。スポーツ業界就職や起業相談、スポーツ組織向けコンサルティングも好評。

近年、スポーツビジネスやスポーツ産業を盛り上げていこう! という機運が高まってきています。

実際、スポーツ庁は、スポーツ産業を5.5兆円(2012年時点)から、2020年には10.9兆円、2025年には15.2兆円にまで伸ばそうという構想を持っています。(2018年3月の「新たなスポーツビジネス等の創出に向けた市場動向」より)

しかし、2020年の1月である現在時点で、スポーツ産業が10兆円を超えたのかというと、疑問が残ります。

まだ直近の正確な試算が公表されていませんので、憶測でしかありませんが、2012年の時点からスポーツ産業が2倍の規模になったという実感は、みなさんの中にもあまりないのではないでしょうか。

米調査会社 Plunkett Researchによれば、北米のスポーツ産業は2016年時点で約4961億ドル(日本円で約50兆円)であると試算されていますが、日本のスポーツ産業は北米のスポーツ産業に対してわずか10分の1の規模でしかなく、スポーツビジネスという視点から見ると、全く勝負にならないというのが現実です。

なぜ、日本のスポーツ産業はいまひとつ伸び悩んでいるのでしょうか。

日本のスポーツ発展の歴史を振り返りながら考えていきます。

この記事で学べること

✔ 日本のスポーツは「体育」と密接に関係していることが分かる

✔ 「体育」によるスポーツ教育の弊害が分かる

✔ 「スポーツをする環境」が整っていないことが分かる


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なぜ日本のスポーツは「体育」なのか??

日本のスポーツというのは、学校体育部活動、そして企業の実業団といったことを中心に発展してきました

学校体育と部活動は、だれもが等しく運動ができる機会を与えるものとしては良い仕組みであり、教育的な観点からも重要であることは間違いありませんが、一方で、その仕組みの基本は「学生である」ということが前提となるため、学校を卒業してしまうと、とたんにスポーツから離れてしまうという問題があります。

また、学校体育はサービスの受け手である生徒側から見ると、一方的に全員が同じルールや行動を求められ、スポーツ本来の楽しみである「自由に自己を表現する」という場ではないため、身体を動かすことが得意ではない子は良い評価をもらうことができず、「体育嫌い = スポーツ嫌い」となってしまい、大人になってからもなかなかスポーツに興味が湧かなかったり、身体を動かすことを敬遠してしまうなどの弊害が指摘されています。

逆に、サービスの提供側である学校あるいは教師の立場からすると、学校の経営は体育や運動で成り立っているわけではなく(体育大学等を除けば)、あくまで生徒に提供する教育の一部分でしかないことから、体育を重要視するモチベーションが低く、特に部活動は実質として教員の「ボランティア」で行われている場合が多いため、指導の質を向上させたりする必要性も低く、質の高いスポーツ活動を生徒に提供することができないという構造になっています。

そこで、「クラブがスポーツを運営すればいいではないか」という話が出てきますが、地域のスポーツ環境においては、いわゆる「スポーツ少年団」と呼ばれるような、ボランティア的な運営の団体が多く、活動基盤の脆弱さなどが指摘され続けています。

民間のフィットネスクラブは増加傾向にありますが、多くは営利目的で運営されているため、利用者にとって「手軽」な金額や通いやすさといったことは二の次で、国民のだれもがスポーツを楽しめる環境にあるとはとても言い難い現状となってしまっています。

以上のことから、日本においてはまだまだ「スポーツは教育であり、ボランティア等の非営利で運営されるものである」という認識が強いことから、「スポーツでビジネスをする」ということのハードルが高く、元から多くの資本を持っているような大企業などでなければ収益化が難しく、せっかくいいアイデアがあってもビジネスとして成り立たない、という理由が、スポーツ産業がいまひとつ発展しないことの1つとして考えられます。

気軽に楽しめる環境がない【時間・空間・仲間】

スポーツというのは、本来は「気晴らし」を意味する言葉で、自由に自己を表現して楽しむことができるものです。

一方、日本のこれまでのスポーツは、上記までの「体育」や「競争」といったように、身体を鍛えることや一部の才能のある人が「アスリート」となってどれだけ限界を極めていくか、といったことが重要視されてきました。

実際、日本という国の「スポーツ予算」も、7割程度は「トップアスリート育成」のために使われています。

したがって、一般の市民がスポーツを楽しむためのハードルが高く、

・場所がない

・時間がない

・仲間がいない

・お金がかかる(特に民間の施設)

・自発的に身体を動かす習慣がない

スポーツを楽しむことを阻む壁

といったような壁が立ちふさがっています。

スポーツを楽しむためには、「3つの間」が大切であるとされています。

「3つの間」というのは、「時間」「空間」「仲間」のことです。

日本人は諸外国に比べて「働きすぎ」であると言われるように、なかなか余暇を楽しむ時間的な余裕がありません。

また、日本におけるスポーツ施設は、その多くが「学校が所有する施設」であり、市民のだれもが気軽に出入りできるような環境ではなく、許可を受けたスポーツ少年団や古くから存在する団体などしか利用できない場合も多いです。

そして、スポーツで必要な仲間を集めてチームを運営したりすることもそれなりにハードルが高く、モチベーションを持ち続けてスポーツを行うことは大変です。

一般的に、「スポーツ産業」というと、イメージとしてはプロ野球やJリーグを始めとした「プロスポーツ関連」(みるスポーツ)の市場が大きいという感じがしますが、実際のスポーツ産業の構成は以下の図にあるように、スポーツ小売やスポーツ施設業の市場規模が大きく、プロスポーツをはじめとする「みるスポーツ」やスポーツメディア等の「放送関連」は、全体の3分の1程度でしかありません。

スポーツ庁 「新たなスポーツビジネス等の創出に向けた市場動向」より

したがって、プロ野球やJリーグといったプロスポーツの観客動員数や放送権利料といったことが多少伸びた程度ではスポーツ産業全体の底上げにはならず、国民や市民の「スポーツ実施」そのものがスポーツ産業に大きな影響を与えているということが言えます。

スポーツを「する」人がいなければ、スポーツ用品は売れませんし、スポーツ施設も利用料等の収入を得ることができません。

「矢野経済研究所」の「スポーツ用品分野別国内市場規模推移」によれば、2019年のスポーツ用品市場は、約1.6兆円と予想されています。

スポーツ庁が出している上記のグラフでは、2012年時点のスポーツ用品市場も約1.7兆円となっていることから、若干の差がありますが、スポーツ用品市場自体は飽和状態で、ワールドカップやオリンピックなどの特別なイベントの影響がなければ、市場を盛り上げることが難しい状況になっています。

日本人は「ミーハー」と言われるように、ワールドカップのようなビッグイベントがあると「そんなに競技自体には興味はないけれど、みんなが見るから見る」という人が多いとされています。

そういう意味では、ワールドカップやオリンピックはスポーツ産業にとっては絶好のチャンスと言えますが、逆を返せば「熱が冷める」のも早く、これまでスポーツにそれほど関心がなかった人がビッグイベントなどをきっかけにしてスポーツに関心を持っても、なかなか「ファン」として定着しない、という課題があります。2011年の女子サッカーワールドカップで優勝した「なでしこジャパン」はまさにその例と言えます。

2019年に日本で開催された「ラグビーワールドカップ」なども当てはまると思います。

色々な娯楽が溢れる中で、今後のスポーツ業界は魅力のあるコンテンツと、人を引き寄せるためのマーケティング戦略などがより一層大切になってくるということです。

まとめ ~「スポーツは楽しい」のが大前提~

今回は、日本のスポーツ産業がいまひとつなのはどうして? というテーマでお伝えしました。

その理由として考えられることは、

日本のスポーツがなかなか「体育」的な考えから脱却できないこと

スポーツを楽しむための「3つの間」が整わないこと

魅力のあるコンテンツ作りや、他の娯楽に負けないようなビジネス戦略が足りないこと

といった課題があることを述べました。

スポーツビジネスの課題は盛りだくさんです!

みなさんも、こうした課題をどうやったら解決できるか、一緒に考えてみませんか?


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