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今回は、「スポーツ用品産業に将来性はあるのか?」というテーマを考えてみたいと思います。
実際に「スポーツ用品業界」で働いている身としても、「変革」の時が来ていると感じています。
今回は、そう感じる理由を「売り方の変化」「モノからコトの消費」「スポーツ用品産業の将来」という「3つのテーマ」に絞ってお話させて頂きます。
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過去・現在「モノ(商品)」の売り方の変化
ひと昔前は、スポーツショップに行って、実際にその場で商品を試して購入する、という形が当たり前であり、一般的でした。
スポーツショップの店員さんは、商品の事を誰よりも詳しく説明してくれて、自分に合った商品を提案してくれることが、「スポーツショップの価値」でもありました。
ですが、デジタル化が進む社会の中で、お店での売上は年々減少し、EC(Eコマース)、つまり「オンラインショッピング」の売上が年々増加しています。
BtoC-ECの市場規模および物販系EC化率の経年推移(単位:億円)
誰よりも商品の事を詳しく教えてくれる店員さんは、今ではネットの説明文や画像となって切り替わっています。
私も実際にスポーツショップの店員(正社員)として2年半働いていましたが、2年半という短いスパンでもお客様の「変化」を感じることは多かったです。
スポーツショップの店員として1番困ることは、「試着」だけを店頭で行い、商品を「インターネットやアプリで検索」し、「オンライン購入」されることです。
この記事を読んでくれている方の中にも、そうした「買い物」のやり方を経験したことがある人は多いと思います。
これでは、「お店」が在庫リスクを抱えて商売している利点がなくなってしまいます。
ですが、実際に現場に立っていると年々このようなお客様は増加していますし、お店の売上は減少しているのが事実です。
オンライン購入が増えれば全体としては儲かる?
少し話を深堀すると、お店の売上が下がってもオンラインショッピングでの売上が上がっているのであれば、産業としての売上は全体的には変わらないのでは? と考える人もいるかと思います。
ですが、これでは売上が減少します。
理由はインターネットの性質にあります。
オンラインショッピングをしたことがある人は分かるかもしれませんが、「アンダーシャツ」と調べるだけで膨大な量の商品がヒットします。
しかし、その中には本物そっくりの「ニセモノ」商品などもあるのです。
中国製のいわゆる「パクリ」商品がいかにも正規品のフリをして半額で売っていたりするのが当たり前な世の中です。
スポーツ用品に限らず、モノを買うとき「値段」は大きな判断材用になると思います。
一見、同じ商品が2つ目の前に並んでいたら安い方を買う。
これは消費者心理からすれば、ごく当たり前の行動となります。
ですので、こういった業者に一定の市場(売上)が取られることにより、本来「スポーツ産業」の中にカウントされるべき売上は減少してしまうのです。
では、デジタル化が進む社会の中でどのようにすれば「モノ(商品)」が売れるのでしょうか?
現在・未来「モノ(商品)」の売り方の変化
インターネット経由でモノを買うことが増え、お店の売り上げが落ち込む中でも全盛期と変わらず、毎年売り上げを伸ばす店舗もあります。
そして、上手くインターネットを利用すれば、個人商店のような小さな会社(企業)でも大きな売上(収益)をあげることのできる世の中になりました。
そして今後、その傾向は強くなっていくと考えられています。
今後の世の中において売上を伸ばしていけるモノの売り方を2つご紹介します。
それは、「店舗の存在意義」を見直して新たなビジネスチャンスを広げる、ということと、「SNS」の活用によるマーケティング・プロモーションです。
店舗の存在意義
どんなに店舗レイアウトが魅力的で、商品のことをなんでも知っている店員さんがお店にいても、お店単体で売上が伸びていくことは、今後はないと考えられています。
ではどうすれば、売上が伸ばせるのか。
その答えは、お店の役割を「変化」させることです。
今までは「商品を販売する」ことが主の目的であったお店を、
・ネットで購入した商品を受け取る場所にする
・オーダーメイドの注文を承る専門の場所にする
など、お店の役割を変化させることが重要になります。
最近では上の2点に加えて、
・店頭限定商品
・自分のスポーツショップ限定オリジナル商品(メーカーとのコラボ)
を戦略的に打ち出し、お店の存在意義を高めているお店も多くなってきました。
また、商品をスポーツショップ(小売店)に対して販売する「スポーツメーカー」側も、インターネットで自社商品が安売りされて、自社ブランドの「価値」が下がらないように、商品の「定価販売」の協力を依頼したり、
取り扱える店舗を絞って商品を販売するなどの施策をし、工夫して自社商品を販売している傾向が年々、強くなってきています。
※「定価販売」をメーカーに依頼されたからといって、小売店はそれを必ず守らなければならない、という義務は法律上ありません。
SNSでの情報発信
多くのお店で取り入れている、「SNS」での情報発信は今では店舗の「販促ツール」としては欠かせないものになりました。
お店の公式アカウントはもちろん、店長個人のSNSなどでお店の情報を発信する時代となっています。
※参考情報として ⇒ 愛知県「ユニオンスポーツ」
サッカーをしている人なら知らない人はいない、といっても過言ではない日本を代表するサッカーショップの1つです。
このユニオンスポーツの「清水店長」、なんとTwitterのフォロー数は1万人を超えています。
スポーツ業界(特にサッカー)では、清水さんを知らない人はいない、とされるぐらいの名物店長です。
「清水さんがお勧めする商品なら間違いない!」、と感じて商品を購入する人が非常に多いです。
清水店長レベルになるとメーカーの方から、「うちの商品紹介してください!」と頼んだり、清水店長オリジナル商品が開発されたりすることもあります。
少し話は脱線しましたが、清水店長含め、ほとんどのお店が使っている「SNSツール」は皆さんも馴染みのある3つのSNSです。
スポーツチームになるとこれにフリッカーなどが加わるチームもあります。
さらに、最近ではYouTubeチャンネルを開設するお店も出てきています。
いずれにせよSNSを有効に活用し、お店の情報を発信していくことは今後必ず必要になってきます。
関連記事:なぜBリーグだけが「SNSマーケティング」で成果を出せるのか?
そして「自社がもつSNSを店舗と連動させること」が重要になります。
お客様がSNSを見ていて、「この商品欲しい!」となったとしても、別のスポーツショップで購入されてしまっては意味がありません。
したがって、SNSから自社のオンラインショップに必ずリンクするように設定することはもちろん、GPS機能と連動し現在地から商品が売っている場所を案内することなど、プラスワンの工夫が必要になります。
「モノ」から「コト」への提供
今までスポーツショップの考え方、お客様の捉え方は、「スポーツショップは商品(モノ)を購入する場所」という考え方が主流でした。
しかし、今後は「体験(コト)を提供する場所」へ変化していくと予想されています。
具体的な取り組み例として、
・店頭にプロ野球選手を呼んで、野球教室を開催
・新しいランニングシューズの試し履きイベント
・一定期間の間であれば、購入し使用した商品の返品を承る「返金キャンペーン」
・自分のSNSに商品を使用した投稿を載せるとプレゼントが貰える「SNSキャンペーン」
などは既に、大手のスポーツ用品店などで実際に行われているイベントになります。
実際に私も参加し、商品を購入したイベント例として「初心者トレイルラン講習会」という講習に参加した時の話を自らの心境と合わせて話したいと思います。
講習会の名前の通り「トレイルラン」という山の斜面のゴツゴツした岩の間を走る競技を、これから始める人向けの講習会でした。
少しオーバーな表現になりますが、
初心者が、何も知らずに山の中を急に走り始めると「死」に至るケースもあります。
登山者が遭難するように、トレイルランナーにも同じ可能性があります。
そんな競技を始めるにあたって、
・必ず持っていかなければならないもの
・持っていた方が良いもの
・山の中での注意点
・もし体調を崩してしまったら、遭難してしまったら
このような項目の詳しい説明を受けながら実際に山の中を走ることで、
「地上を走る時の2倍は時間がかかるな」
「下りの時は足への負担が思ったより大きいな」
など実体験で学ぶことができます。
そして自分の実体験(コト)をもとにトレイルランに必要なアイテムを購入することができます。
今までのスポーツ用品の売り方であれば、店頭レベルでの試着と、上記に記載したトレイルランを始めるにあたっての注意点が書かれた店頭POPを読んで、店員さんに少し話を聞いて購入、という手順が成立していました。
ですが現在では、ここまでの検索はインターネットですることが可能です。
そしてインターネットの方が安い、わざわざスポーツショップまで行かなくてもよい、となればお客様は自然とオンラインショッピングに流れてしまうことは推測できると思います。
スポーツ用品産業の将来性
最後に、「スポーツ用品産業」はこの先どうなるのか? 将来性はあるのか? といったことを考えてみたいと思います。
※ここでは「スポーツ用品メーカー」や「スポーツ卸」といった業種は除きます。
「スポーツ小売り産業」は、約1兆5000万円の市場規模と言われていますが、簡単におさらいします。
・全国に店舗を構える4大スポーツショップ
ALPEN(スポーツDEPO、ゴルフ5)グループ 2000億円
Xebio(スーパースポーツゼビオ)グループ 2000億円
スポーツオーソリティ 800億円
スポーツヒマラヤ 800億円
・地域に複数店舗を抱える地域専門店 約5000億円
・競技専門店 約3000億円
・その他 約2000億円
スポーツ用品産業の市場規模
株式上場していて、IR(経営状況)が確認できるのは、4大スポーツショップのうちスポーツオーソリティ以外の3社。
それ以外の金額は、「店舗数×売上×会社数」で算出すると誰でも簡単に計算できます。
そして今後の展望としては、「スポーツ用品産業は、現状維持または微増の産業」だといわれています。
理由は、スポーツとライフスタイルの垣根がなくなり、少子高齢化社会の中で、「健康維持・増進」を目的としたライフスタイルという分野に伸びしろがあるからです。
また、スポーツ用品を購入するハードルが下がり、様々な市場からの参入も予想されています。
今までであれば「健康のためにランニングを始めよう」という人の大半は、スポーツショップに行って商品を購入するのが一般的でした。
ですが、スポーツウェアを1着購入するにも、様々な窓口があるのが現在の市場となっています。
・スポーツショップ
・オンラインショッピング
・ユニクロなどのアパレルショップ
このように、いままでの「スポーツ=競技者」から、「スポーツ=ライフスタイル」という変化が今後訪れると予想されています。
また「アウトドア」部門も伸びしろがあるカテゴリーだと予想されています。
実際に私が働いていた会社での、お取引様向け方針説明会でも、
【維持・微減】
野球、サッカー、バスケットボール、バレーボール
【拡大】
ライフスタイル、アウトドア、ランニング
このように、明確に会社方針として打ち出しをしていました。
人口が減少している日本においては、野球やサッカーなどの「チームスポーツ」関連のスポーツ用品市場は、なかなか伸びにくいことが予想されています。
一方、先ほど触れたように、「健康意識」の高まりによって「ライフスタイル」や「アウトドア」に関連したスポーツ用品市場は今後も成長の可能性を秘めています。
したがって、スポーツ用品産業の将来性は、
「これまでと同じような売り方をしていては稼げないが、ビジネスモデルの変革と新たな市場の開拓によって成長する可能性がある」
と言えると思います。
まとめ ~今までと同じ仕事はもう通用しない~
今回は、「スポーツ用品産業に将来性はあるのか?」というテーマに沿って3つのポイントでお話させていただきました。
ポイントは、
✔ モノの「売り方」が変化している
✔ 「モノ」から「コト」への消費体験の変化
✔ スポーツ用品産業は「変革」を迫られている
というものでした。
3つのポイントで共通していることは、
産業自体が急降下して衰退することはないが今までの売り方ではモノは売れない、という事実です。時代の変化に合わせた売り方が必要になることは間違いないと思います。
私自身、スポーツ産業は市場(経済)トレンドからすると一歩遅れている産業だと感じることも多いです。
例:ユニクロが自動レジ化する前に、スタジアムのチケットレス化できたのでは?
私も該当しますが、スポーツ産業を今後発展させていくには、革新的なアイディアが必要だと感じることが多いですし、もしみなさんが「子供のころから憧れていたチーム・メーカーで働く」ことが目標なのであれば、「会社に入ること」自体に価値を見出さないでほしいです。
自分が子供のころから憧れていたチームで実際に働いてみたら、「なんて無駄が多いんだ!もっとチーム全体を効率よく運営できるのではないか」とか、「チームの価値をもっと高めるためには、こうあるべきだ」というような疑問などを常に持って、業界全体を良くしていくために働くことが今後のスポーツ産業全体の発展に繋がると思います。
是非、一緒にスポーツ産業の今後を盛り上げていきましょう。
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✔ スポーツ用品市場で起こっている変化がわかる
✔ スポーツ用品の「売り方」の変化がわかる
✔ スポーツ用品企業が顧客に提供する「価値」がわかる