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今回は、「スポーツの経済効果」について書いてみたいと思います。
テレビやインターネットのニュースなどで、「ワールドカップの経済効果が何億円でした」とか「〇〇というチームが優勝すると地元にこれだけの経済効果をもたらします」といったようなことを見たりすることがあると思います。
つまりスポーツは、経済的な側面(お金の面)から見ても、うまくやれば大きな価値を生み出すことができる、ということです。
実際、どんなスポーツのどんなイベントが、どのくらいの経済効果をもたらしているのか気になる方もいると思います。
そこで、今回はいくつかのスポーツイベントなどをピックアップして、実際の経済効果やそれらがもたらすメリットなどをご紹介していきたいと思います!
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そもそも「経済効果」ってなんですか??
「スポーツの経済効果」のお話をする前に、「経済効果」という言葉の意味について簡単に解説したいと思います。
「経済効果」というものを計算するためには、以下の3つのものをそれぞれ計算する必要があります。
① 直接効果
② 一次波及効果
③ 二次波及効果
経済効果を算出するために必な3つの指標
これらをすべて計算して算出されるものが「経済効果」と呼ばれるものの正体です。
「直接効果」というのは、例えば何かしらのスポーツイベントが開催された場合、その試合の会場に訪れたファンや観客が、交通費やお土産代、飲食費などを使うことです。
「一次波及効果」は、ファンや観客が飲食したお店に食材を提供している企業や、ホテルやお土産屋に商品を提供している企業の売上が増加した分のことを言います。
「二次波及効果」は、そうした「直接効果」や「一次波及効果」によって売上を伸ばした企業の従業員のお給料が上がったりして、その人たちが普段よりも余計にモノを買ったりしたときの消費額です。
したがって、「オリンピックの経済効果が2兆円であった」という場合には、開催都市や組織委員会、特定の企業に2兆円の収入があったわけではなく、その地域の関連企業や下請け企業、周辺企業などの売上がそれだけ増えた、ということになります。
ですので、これからご紹介する「スポーツの経済効果」の実際の事例でも、スポーツ団体やスポーツ関連企業だけが莫大な収益を得ている訳ではないことをご理解頂ければと思います。
ラグビーワールドカップ(2019)の経済効果 チケット完売率は脅威の99%
アジア初開催となった2019年のラグビーW杯ですが、そのチケット完売率は驚異の99%を記録しました。
その経済効果は「6,464億円」と発表されています。
※公益財団法人ラグビーW杯2019組織委員会「開催後経済効果分析レポート」より
試合数や観戦者数はオリンピックやワールドカップに比べ少ないものの、これだけの経済効果が発生した要因として、「開催期間が長い(44日)」という特徴があります。
特に外国人ファンの滞在日数が長かったことにより、
・滞在中の生活費
・お土産
・観光費
などが多く消費された大会となりました。
また訪日客の多くが、全国各地の12都市の会場まで東京から移動して、その土地を観光したことも要因の一つに上げられています。
サッカー・ロシアワールドカップ(2018) 3兆円もの経済効果を生んだ
オリンピックと並ぶ世界大会の一つであるサッカーワールドカップ。
2018年にロシアで開催されたワールドカップの経済効果は、ロシア組織委員会の調査結果によると「3兆円」。
3兆円と聞くと大きい金額だと感じる方の方が多いと思いますが、ロシアのGDPから換算すると0.2%と国の経済にインパクトを残す効果とまではいきません。
ですが、地方のインフラ整備や経済効果という側面で考えると大きな役割を果たした大会でした。
2018年ロシアワールドカップの大会会場は合計11都市でした。
日本が初戦のコロンビア戦を戦ったサランスクという都市は、日本人にはあまり馴染みのない都市です。
そういった地方都市にも、ワールドカップの観戦目的で訪問する外国人が増えることによる経済効果は大きかったようです。
またワールドカップ開催にあたり、スタジアムをメインとするその周辺のインフラ整備が整ったことも経済効果の一つとして挙げられます。
参考文献:三井住友アセットマネジメント
ロンドンオリンピック(2012) 事前合宿だけで15億円もの経済効果
2012年のロンドンオリンピックでの経済効果は日本円で「約2兆2千万円」と言われています。
世界最大のスポーツの祭典と呼ばれるオリンピックで発生する経済効果を3つの視点から捉えたいと思います。
経済効果の地方への波及状況
イギリスの首都ロンドンを中心に行われたオリンピックですが、競技会場はイギリス全土に広がっており、各地で競技施設などのインフラ整備が整ったことなどから、ロンドン以外の地方都市にもオリンピックによる経済効果がありました。
地方における外国人旅行者の消費の増加
イギリスの政府観光局であるビジットブリテンが公表した統計によると、オリンピック開催前後を比較すると、イギリス全土で外国人旅行者の消費額が増加していることが分かりました。
またオリンピック開催後のサンプル調査によると、75%の人が「ロンドン以外にも興味深い場所が多数ある国である」という回答をしており、オリンピックがもたらした影響であるといえます。
事前合宿の誘致
オリンピック終了後に公表した、評価報告書オリンピック評価報告書(スポーツ版)において、ロンドンオリンピックの際に事前合宿の誘致全体で約15億円の経済効果がもたらされたことを明らかにしています。
15億円の他にも、地域発展による経済効果が各地で生まれており、報告書以上の経済効果があることが分かります。
参考文献:国立国会図書館 調査及び立法考査局
東京マラソン(2017) スポンサーになるとすごい宣伝効果が
3万5千人ものランナーが走った2017年の東京マラソン。
ちなみに沿道での応援は100万人を超える国内最大級のビッグイベントです。
その経済効果は「約165億円」といわれております。
その内訳を2つの視点からみていきましょう。
広告・宣伝費
東京マラソンのメインスポンサーを皆さんはご存知でしょうか?
2017年のメインスポンサーはスポーツメーカー国内大手の「アシックス」です。
メインスポンサーの費用は数十億円とかなり高額です。
その費用を支払ってでもメインスポンサーになる理由は「自社商品の宣伝」の為です。
イベントブースでの物販などで売上を作ることももちろんできますが、さすがに前日、前々日のイベントブースだけでの収益では、スポンサー費用を回収することはできません。
ですが、物販の売上以上に「自社企業の認知度向上」につながり、中長期的にみたブランド価値向上につながる、という判断のもとスポンサー費用を支払っている企業がほとんどです。
アシックスの他にも、
・東京メトロ
・SEIKO
・第一生命
など大手企業がスポンサーになっています。
参加者・観客の移動・宿泊・飲食・買い物
参加者は東京マラソンの為に事前に走り込みを行い、自己ベストが更新できるように準備をするのはもちろん、本番で履くシューズをはじめ、
・競技の途中で摂取する栄養ゼリー
・テーピング
など様々なものを用意します。
フルマラソンに出場するランナーは、1回のレースのために3万円ほど備品を用意・購入したりします。
3万円×3万5千人=150万円
ということで、個人のレース備品の購入だけでもそれなりの経済効果が期待できます。
また、東京マラソンほどの大きな大会となると、地方や海外から出場するランナーも多く参加しますので、
・宿泊費
・交通費
・レース前後の観光
などの経済効果が発生します。
また経済波及効果を産業部門別にみると、
・商業
・対事業所サービス
の部門が50%を占めています。
これは東京マラソンのイベントブースにて前日などに行う、
・関連の物販
・レース中、足がつらないストレッチ法を伝授する教室
などのことを指します。
ちなみに東京マラソンのイベントブースに出店する費用は場所や大きさにもよりますが、最低でも100万円ほどします。
企業はそれでも「ブース出展して自社を宣伝したい!」「物販で売り上げを作りたい!」という想いで東京マラソンブースに出展するのです。
参考文献:一般財団法人 東京マラソン財団 調査実施者 みずほ総合研究所株式会社
プロスポーツの経済効果
ここでは、「プロスポーツ」の経済効果として、プロ野球の「阪神タイガース」と「広島東洋カープ」のケースをご紹介したいと思います。
タイガース18年ぶりの優勝で驚愕の経済効果1480億円
少し古い話になりますが、プロ野球の人気球団の1つ、阪神タイガースが2003年に18年ぶりの優勝を果たしました。
盛り上がりを見せていたのは近畿地方に暮らす人たちだけではなく、全国各地の人が阪神百貨店のタイガース売り場を訪れるなど、「タイガース フィーバー」に包まれた1年となりました。
関西大学の宮本勝浩教授の試算によれば、タイガース優勝によってもたらされた経済効果はなんと「1481億円」と発表されました。
1つのプロスポーツチームの優勝というだけで、ここまでの経済効果をもたらすことはとてつもないことです。
特に「優勝セール」による経済効果やファンの「飲食・飲酒」などの増加による経済効果の増加分が大きく、地元の経済を大きく活性化しました。
なお、タイガースはその2年後の2005年にも優勝を果たしましたが、2005年時の経済効果は「643億円」と発表されました。
2003年に比べれば半減しましたが、それでもとてつもない額であることがお分かりいただけるかと思います。
カープ25年ぶりの優勝でプロ野球は「赤一色」に
2016年に25年ぶりのリーグ優勝を果たした「広島東洋カープ」は、2016、17、18年とリーグ3連覇を成し遂げました。
特に2016年は交流戦で本塁打を連発し、「神ってる」と話題になった鈴木誠也選手や、前年にMLBのニューヨーク・ヤンキースから復帰した黒田博樹投手など、多くのスターが活躍した1年でもありました。
2016年のカープ優勝による経済効果は「353億円」と発表されました。(中国電力より)
上記の阪神タイガースの経済効果と比べれば小さいかもしれませんが、「広島」という地方都市を本拠地にする1つの球団が353億円もの経済効果をもたらしたのですから、これはとてつもないことです。
さらにすごいのは、2018年にも「356億円」もの経済効果をもたらしたということです。
タイガースの例では、2005年の2度目の優勝の際には、2003年の経済効果より半減しました。
しかし、カープの場合は3年連続優勝の年にも関わらず、経済効果が過去2年より伸びたのです。
一般的には、一度優勝したチームが2~3年以内にもう一度優勝をすると、一度目の経済効果よりも二度目のほうが低くなるのが普通です。
ファンが「優勝の喜び」に少し慣れてしまうからです。
ですが、カープのファンは優勝の味に慣れることなく、さらに「熱狂的」になっていったということです。
「広島」という場所ならではの土地柄や、カープ球団のマーケティングや販促なども影響しているかもしれませんが、他の地方都市のスポーツクラブにも勇気を与える事例です。
まとめ ~スポーツは「人を集める」ことができる最強のコンテンツ~
今回は、\スポーツの経済効果がすごい理由 ワールドカップからマラソン大会まで/というテーマで、いくつかのスポーツイベントに焦点を当てて、スポーツがもたらす「経済効果」について解説をしました。
最初にご紹介したように、「ワールドカップで5000億円の経済効果!」といった場合には、ワールドカップの組織委員会やスポーツ協会などに5000億円すべてが入るわけではなく、「直接効果」「一次波及効果」「二次波及効果」のすべてを合わせた金額が5000億円であることをよく理解して頂きたいと思います。
したがって、スポーツそのものにはそれほど大きな収益が生まれていない場合もありますが、わずか数日間のイベントで何千億円、何兆円という経済効果を生み出せるのは、スポーツ以外には存在しないと言っても過言ではないと思います。
それだけ、スポーツには「人を集める」「人を惹き付ける」という魅力や価値があるということです。
チケット収入だけでは大きな稼ぎにならなくても、メディアに報道されたり、スポンサーがたくさんついたり、周辺の産業の経済が活性化すれば、スポーツクラブやスポーツイベントも大きな収益を生み出すことができます。
「スポーツビジネス」というと、どうしても競技を応援してくれる「ファン」に対してチケットやグッズなどを直接売って稼ぐという方法に目が向きがちですが、「ファン」に対して直接モノを売ったりしなくても、収益を生み出すことができる仕組みを作ることも大切です。
ぜひそうした視点を持って、「スポーツの経済的価値」を考えてみるのも楽しいですね!!
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✔ 「経済効果」の意味がわかる
✔ 「スポーツ」がどれほどの「経済効果」を生み出しているのかわかる
✔ スポーツが「経済効果」を生み出すためには、どんなことが必要なのかわかる