スポーツビジネスに活かせるデータ活用のキホン

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ユウ
「スポーツやスポーツビジネスの魅力を多くの人に知ってもらいたい」という想いから当サイトを運営。スポーツビジネスを学びたい、携わりたいという人に向けて情報発信。大学教員として大学生にスポーツマネジメントを教えた経験もアリ。

今回は「スポーツビジネスとデータ活用」に関するお話をしたいと思います。

近年、社会活動や経済活動のあらゆる場面で「データ活用」が重要だとされ、「データは21世紀の石油である」とまで言われることがあります。(「データ」は人間の文化・文明の発展に欠かすことができないものである、という意味です)

企業の経営においても、以前から「ヒト・モノ・カネ」が重要であると言われてきましたが、それに加えてデータ」も重要な経営資源であるとみなされるようになってきました。

最近、よく言われている「AI(人工知能)」や「DX(デジタルトランスフォーメーション)」といった仕組みや取り組みも、「データ」なくしては実現させることができません。

「スポーツ」の世界においても、この「データ活用」にどのように取り組むかが非常に大きなテーマとなってきています。

スポーツビジネスにおいても、「データを活用できる人材」が求められている、ということです。

なので、今回は「スポーツビジネスでデータ活用をするための基礎知識」や「スポーツにおけるデータ活用のポイントを少しご紹介しながら、「スポーツとデータ活用の未来」について考えてみたいと思います!!

この記事で学べること

✔ データ活用の重要性が理解できる

✔ データを「使う」ときに大切なポイントが理解できる

✔ スポーツビジネスにおけるデータ活用のステップが理解できる


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なぜスポーツにデータ活用が必要なのか??

「データ活用が重要」というのは、みなさんもなんとなく分かっているとは思いますが、「なぜ重要なのか」ということをまずは理解することが大切です。

これからの世の中においてデータ活用が重要とされる理由は、

① 自分たちの知りたいことを客観的に理解するため!

② 分からなかったことや新たなことを発見するため!

③ より正確な判断・行動をするため!

という3つのポイントがあります。

簡単にですが、1つ1つ説明します。

自分たちの知りたいことを客観的に理解するため

日常生活の中で、「なんとなくこう思う」という場面は多いと思います。

例えば、スポーツを「する」場面や「みる」場面を考えてみましょう。

あなたがもし、とても上手に野球のボールを投げることができるとしましょう。

それを見た周りの人が、あなたに対して「どうしたらそんなにすごいボールを投げれるのですか??」と質問してきたら、あなたはどう答えるでしょうか??

なんとなく、こんな感じで身体を移動させて、こうやって腕をつかって、バシっと投げる感じです!」と説明して、相手に伝わるでしょうか??

身振り手振りを交えればなんとか伝わるかもしれませんが、なかなか伝わりづらいですよね。

こうした「主観的(あなただけが感じていること)」を他人にもわかるように「客観的」な情報として伝えるためにはどうしたらいいでしょうか?

仮に、説明の仕方をこのように変えてみるとどうでしょうか??

前に向かって体重移動するときは、自分の足の6歩分の幅を目安にして移動してください。肘は90度に曲げたままで肩のラインまで上げて、ボールを放すときは投げる方向に対して上半身を45度傾けてください

いかがでしょうか??

教えてもらう側にとっては、自分がどうすれば上手に投げることができるのかの基準が明確になり、かなり分かりやすい説明になっているのではないでしょうか。

このように、データ(数字)を使うことによって、「なんとなく」知っていたことや取り組んでいたことが「はっきり」とした形で見えるようになってきています。

プロのスポーツの世界ですら、まだまだこのような「なんとなく」という指導内容やビジネス活動をしている場面は多いと思います。

この「なんとなく」をデータを活用することで「はっきりと明確に」していくことができ、スポーツの技術向上や、ビジネス成果の向上に結び付けていくことができます。

分からなかったことや新たなことを発見するため!

上記のように、最近から「自分の知りたいこと」がすべて明確で具体的ではない場面も日常生活やスポーツの場面で多いと思います。

例えば、自分ではまっすぐに走っているつもりでも、自分が走っている姿を動画撮影した様子を見ると、微妙に斜めに走っているとか、左肩が微妙に下がってしまっているとか、そうした思いもしない「発見」をすることがあります。

そうした発見ができるのは「自分が走っている姿の動画」という「データ」があるからです。

「データ」というのは「数字」だけではなく、「動画」や「音声」といったものや「コメント(文字)」といったものも含まれます。

また、プロスポーツなどのビジネスの例では、これまで週末の試合を観に来ている人は「家族連れ」が多いと思っていたが、実際に来場しているお客さんの年齢や同伴者を調べてみると、実は「ひとり」で観戦している人や「友達と2人で来ている」人が多いことが分かった、といったことがあります。

スタジアムに来ている数万人のファンを、ひとりひとり観察してチェックするのは限界がありますが、「会員証」や「クレジット決済のデータ」などを活用することによって、実際にはどのような人がスタジアムに来ていて、スタジアムの中でどのような行動をしているのか、というのが分かるようになります。

こうした、「これまで分からなかったことや新たなことを発見するということがデータを活用するとできるようになります。

事業者側にとってもこれまで手を付けていなかった新たなビジネスチャンスを見つけ出すきっかけになったり、お客さん側にとっても、自分が思いもしなかった嬉しいサービスを提供してもらえることに繋がったりするため、あらゆるスポーツビジネスでデータ活用が大切になってきています。

より正確な判断・行動をするため

「データを活用する」ということは、最終的には「次への行動に活かすため」であると言えます。

つまり、誰の行動にも影響しないようなデータやデータ分析では、データを活用する意味がない、ということです。

例えば、あなたがサッカークラブのマーケティング担当者として働いているとしましょう。

今月のクラブの売上は「500万円」でした。

クラブの経営会議で、あなたは「今月のクラブの売上は500万円でした」と報告しました。

すると、社長から、「結局、それは良いの? 悪いの? 次にどうするの?」という質問が来ました。

あなたはその質問に答えることができませんでした。さて何が悪かったのでしょうか??

実際、ここまでひどい例はあまりないとは思いますが、ビジネスをしていると似たような場面にたくさん遭遇すると思います。

「500万円」というはっきりとしたデータ(数字)はあるのに、誰の役にも立たなかったのです。

それは、この「500万円」という数字に対する「結論」がないからです。

結論がある」という状態は、例えば、

今月のクラブの売上は500万円でした。前の月は400万円でしたので、売上は伸びています。伸びているのは新しいチケットの売れ行きが好調だからです。

というような報告ができれば「次の行動に繋がる」ということです。

「500万円」という数字だけを報告されても社長はどうすることもできませんが、「新しいチケットの売れ行きが好調」というデータがあれば、新しいチケットをもっと宣伝するために広告を増やそう」とか、「新しいチケットに関連するグッズを開発しよう」とか、「次の行動」に繋げることができます。

きれいなグラフや表をいくら作っても、「行動」に繋がらなければデータ活用の意味がないのです。

さらに、「新しいチケットを買っている人」の情報が細かく分かれば分かるほどマーケティングの精度も高めることができます。

以上の3点が、スポーツ(ビジネス)においても「データ活用」が重要な理由です。

どうすれば「データ活用力」を高めることができる??

では、どうすれば「データ活用力」を身に着けることができるのでしょうか??

大体の場合、以下のようなことに取り組む場合が多いと思います。

・数学や統計学、データサイエンスを学ぶ
プログラミングを学ぶ(SQLやPythonなど)
・Excelなとの表計算ソフトを使いこなす

こうしたことは、「データ分析」の実務をする上では重要です。ですが、「データ活用」をしていくためにはもっと大切なことがあります。

それは、

データ活用で最も大切なこと

✔ データを活用する目的や、データで解決したい課題・問題を決める

ということです。

つまり、「何を知りたいのか」「何を解決したいのか」を明確にしてデータを活用することが重要ということです。

一見、簡単なように思えますが、実際にこれをやるのはとても難しいです。

あなたは先ほどのようにサッカークラブのマーケティング担当者だとしましょう。

あなたのクラブが以下のような現状だったとします。

事例

半年間から試合の観客動員数が下がってきている。
地域の商店街や小学校などに出向いてクラブを知ってもらうためのプロモーション活動を積極的に実施しているが、効果が出ていないようだ。
市内の東側から試合を観に来る人の数が減っており、クラブの収入も落ちている。

この事例を読んで、データ活用をして取り組むべき「問題」はどこにあると感じますか??

・収入が減っているのが問題である。
・観客が減っているのが問題である。
・プロモーションの効果に問題がある。

・市内の東側から来る人がなぜ減っているのか原因を探る必要がある。

などなど、色々なことを考えると思います。

ですが、例えば「収入が減っているのが問題です」というのを解決しようとしたときにどのようなデータを活用するべきでしょうか?

収入」というのは「売上高」のことを指しているのか「利益」のことを指しているのかで、みるべき指標が変わってきます。まずは言葉の定義をしっかり定めないと、どのデータを使えばよいのか分からなくなります

また、「観客が減っているのが問題である」と設定する場合、「観客数が減ることによってどんな問題が起こるのか?」もセットで考えなければいけません。

もし最終的に解決したいことを「クラブの利益額の減少」とした場合には、「観客数の減少」は「問題」ではなくそれを引き起こしている「要因」であると言えます。

よって、「クラブの利益額の減少」を解決したいのであれば必ずしも「観客動員数のアップ」を第一に目指さなくてもよいかもしれません。余計な経費を使わないとか、スタジアムの使用料を下げてもらうように交渉するとか、様々な解決方法があります。

このように、「データを分析する以前の問題」として、ビジネスの課題設定や問題認識が上手くできないケースは非常に多いと思います。

ここが適切に設定できないと、いくらデータとにらめっこをしても、「次の行動」に繋がるヒントや示唆は出てこないのです。

ですので、「データ活用力」を高めたいと思う方は、いきなりプログラミングなどを勉強するのではなく、「問題認識力」や「課題設定力」といったスキルを身に着けるべきです。

データ分析の手法や、プログラミングの書き方はネットを検索すればいくらでも出てきますが、あなたのビジネスの問題や課題はあなた自身が設定するしかありません。

誰も答えを教えてくれないのです。

スポーツビジネスでのデータ活用の課題

上記のように、「データ活用」をしていく上では、まずはビジネスの「問題認識」や「課題設定」を適切に行う必要があります。

そこをおろそかにしてしまうと、いくら大量のデータを複雑な分析手法を用いて分析しても、誰の役にも立たない結果しか出てきません。

それを図にすると以下のようになります。

このように、これから「データ活用を始めていく」という場合には、まずは「ロジカルシンキング」や「クリティカルシンキング」と呼ばれるような、「物事の本質や構造を見極めて整理する力をつけることが必要になります。

※「思考力」をつけるために参考になるような本を以下の記事でご紹介しています!

こうした力を身に着けた上で、「データリテラシー」と呼ばれる「データの見方や扱い方に関する知識・スキル」や「統計学を活用したデータ分析(データサイエンス)」などを学んでいきます。

プロスポーツのビジネスなどでも、こうした「ステップ」を踏まずにいきなり高度な分析やシステムを導入しようとするケースが見受けられます。

例えば、あるサッカークラブが「AI(人工知能)を用いて、チケットの価格を自動的に調整するシステムの活用を開始し、ある程度成功してきた」というようなニュースが出たとします。

そうしたニュースが出たときに、「うちのクラブもそのシステムを導入するべきた!!」といって飛びついてしまうことがあると思います。

これが一番やってはいけないパターンです。

システムを導入する前にやるべきことは、自分たちのクラブの問題や課題をしっかりと認識し、整理をした上で、何が必要か不要か、何をするべきか・しないべきかを考えることです。

これをやらないまま、いくら高額なツールを導入したとしても、「導入したはいいけどあまり有効活用できない」という事態に陥ります。

サッカークラブなどに就職したい方の中にも、「私は●●というクラブのスタジアムを満員にしたいのです。だから●●というクラブに入って仕事がしたいのです」という方がいます。

「スタジアムを満員にする」という夢は素晴らしいことであると思いますが、「満員にするための課題は何か?」「その課題を引き起こしている問題は何か?」「どんな情報(データ)があればその問題を特定できるか??」といったことまで考えて、クラブのビジネスを捉えて就職活動をしている人は1%もいないのではないかと感じます。

実際のスポーツビジネスの現場では、こうしたことを徹底的に考えて突き詰めていかないと、思うような成果は出てきません。

楽しそうだからイベントをやってみる」とか、「他のクラブでうまく行ってる取り組みだからウチもやる」といったような思考では、たまたま成功することはあっても、継続的に成果を出し続けることは難しいでしょう。

スポーツビジネス全体的に、こうした「思考」をベースにして「行動」ができる人が少ないように感じます。

逆に言えば、こうしたことを身に着けてスポーツビジネスに挑戦すれば、圧倒的な成果を残していくことも決して不可能ではないと思います。

ですので、遠回りのようですが「スポーツビジネスにおけるデータ活用力」を高めていくのであれば、まずは皆さんの「思考力」を鍛えていくことが近道になると思います!!

まとめ ~データがビジネスを解決してくれる訳ではない!~

今回は、\スポーツビジネスに活かせるデータ活用のキホン/というテーマで、スポーツビジネスに対してデータ活用が必要な理由や、「データを活かすために大切な考え方」について書いてみました。

データ活用のために大事なことは、「ビジネスの課題や問題を、しっかり捉えること」が大前提です。

データが課題や問題を勝手に教えてくれるわけではありません。

ここに、今後のスポーツビジネスが発展するかどうかの大きなカギがあると思います!!


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