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今回は、現代のスポーツ大国である「アメリカ」が、なぜこれほどまでの「スポーツ大国」あるいは「スポーツビジネス大国」になったのかを考えてみたいと思います。
現代のスポーツは「近代スポーツ」と呼ばれていますが、それを作りだしたのはイギリス人です。
また、そうした「近代スポーツ」を「オリンピック」という象徴的なイベントに作り上げたのはフランス人です。
そして、スポーツを「ビジネス化」したのがアメリカ人、ということになります。
アメリカのスポーツの歴史や、スポーツに対する考え方を知ることによって、「スポーツビジネス」のヒントが見えてきます。
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ヨーロッパ生まれのスポーツの「アメリカ化」
19世紀のヨーロッパから見ると、まだ新世界であったアメリカには、先住民族の競技を取り入れた「ラクロス」のようなスポーツもありましたが、それはメジャーなスポーツにはならなかったようです。
これに対して、ヨーロッパ製のスポーツのアメリカ版である、ベースボール、アメリカン・フットボールなどは、少なくとも近代のアメリカではもっともメジャーなスポーツになっています。
それに加えて、アメリカ人は新種のスポーツもいくつか考案しました。バスケットボール、バレーボールです。また、アイスホッケーはカナダではじまり、アメリカに浸透してきたスポーツです。
やがてスポーツがビジネス化し、選手の「プロ化」が起こります。
テレビ放送とともに、これらアメリカ的なスポーツはやがて国内で驚くべき人気を獲得していきました。
サッカーの国際性に比べると、ベースボールやアメリカン・フットボールはわずかな国にしか広がっていません。
アメリカ国内のベースボールリーグである「MLB(Major League Baseball)」は、「アメリカン・リーグ(American League)」と「ナショナル・リーグ(National League)」という「2リーグ制」によって長らく運営されていますが、リーグの優勝チームが争う試合は「ワールド・シリーズ(World Series)」と呼ばれています。
一般的に「ワールド」という言葉がつく大会は、言葉のとおり様々な国や地域のクラブやチーム、選手が競い合う大会のことを指しますが、アメリカでは「MLBが世界最高のベースボールリーグである」という自負があるため、オリンピックやWBC(ワールドベースボールクラシック:World Baseball Classic)といった国際大会には、MLBの一流クラスの選手をあまり派遣しませんし、国を挙げて「侍ジャパン」として国際大会に臨む日本とは大きな温度差があります。
※ただし、近年はMLBの各チームも、WBCに選手を出場させることに理解を示してきており、MLBの一流選手がアメリカ、中南米の国を中心に出場することが増えてきています。
しかし、アメリカにおけるスポーツの社会的な影響力が大きくなるにつれて、その性格だけは世界に伝わり、従来からあったスポーツ、陸上競技や水泳競技などの技術と能力も飛躍的に発展しました。
やがてアメリカは世界一のスポーツ大国になり、現在に至っています。
同時に、たとえばジョギングが日常の健康のために普通の人びとの間に広まっていきました。
したがって、アメリカの場合は「スポーツをみる人」が先に増えたことによって、結果としてスポーツが広まり、一般人が「スポーツをする」ようになったという、変わった歴史を辿っています。
アメリカスポーツの3つの特徴
アメリカのスポーツには、3つの特徴があるとされています。
① 一般市民を基盤として発展
② ビジネスとして巨大化
③「個」が目立つ「チームスポーツ」
という3つです。
1つ目の「一般市民を基盤として発展」というのは、まずスポーツと社会との関係性がイギリスにはじまるヨーロッパ・スポーツと異なっている、ということです。
イギリスのスポーツはエリート層の上に築かれたものでした。
しかし、アメリカのスポーツは社会が「産業化」し、資本主義化するにつれて広く生みだされた大衆を基盤として発達していったのです。
もう少し簡単に言うと、アメリカのスポーツは「仕事」として成り立っていったことで、お金を生み出すようになった、ということです。これが2つめの特徴である「ビジネスとして巨大化」していった、ということです。
こうしてスポーツが「ビジネス」になったとき、これまで人種差別を受けつづけてきた黒人に社会的成功のチャンスが生まれたという側面も見逃せません。
バスケットボールやアメリカン・フットボールの試合を観ると分かりますが、黒人選手が非常に多く活躍しています。
さらに、アメリカで生まれたスポーツの形式そのものが、共通の性格を持っています。これが3つめの特徴である、「個が目立つチームスポーツ」、ということです。
ベースボールやアメリカン・フットボールは、「チームスポーツ」ではありますが、ベースボールは「ピッチャー」という毎回ボールを投げるポジションや、打席には一人の打者しか入ることができない、というルールがあります。
「個人の活躍が目立ちやすいルール」があることによって、スーパースターを生み、それが大衆の熱狂的な人気を得ていくのです。
アメリカの3大スポーツの登場と発展
アメリカで盛んなスポーツといえば、ベースボール、アメリカン・フットボール、バスケットボールの3つです。
これらのスポーツの誕生の経緯と発展を簡単にご紹介します。
ベースボール
ベースボールの原型がは、イギリス渡来の「クリケット」の一種である、「ラウンダー・ゲーム」だという説はほぼ公認されているようです。
『エンサイクロペディア・アメリカーナ』によると、「ベースボール」という名称自体、すでにダブルデイ(ベースボールを発案したとされる人物)が発明したといわれる時期の一世紀前から使われていたといいます。
今では近代ベースボールの元祖は「アレクザンダー・J・カートライト」という人物が1845年に発明し、現在のベースボールにほぼ近い「ルールブック」を書いたのも彼であったという説が一般に承認されています。
南北戦争の時代から、ベースボールがさかんに行われていたようです。
それによっていろいろな階層や地方の出身者が、ベースボールというスポーツに親んでいきました。
南北戦争後の1871年にすでにプロのチームが編成され、1876年には「ナショナル・リーグ」が結成されています。
こうして生まれたベースボールには、非常に大きな特徴的イメージがありました。
クリケットのゲームと同様に「攻撃と守備とに分かれて」、数イニングを闘うということです。
このために、サッカーのような、ゲーム全体が止まることなく、組織的にボールを回して動くタイプのスポーツとは全くことなるテンポの試合運びになりました。
チームスポーツであるにもかかわらず、いつもふたりの選手(投手と打者)しか対決していないのです。
この特徴によって、試合が「物語化」されやすく「ヒーロー」が生まれやすくなります。
サッカーにおいては、「レアル・マドリードvsバルセロナ」や「〇〇ダービー」のように、特定のチーム同士の試合が大きな特別感を演出することがありますが、選手同士の対決にフォーカスされることは少ないと思います。
一方で、ベースボールでは、「野茂 vs 清原」、「松坂 vs イチロー」というような、チーム同士というよりは「選手同士」にフォーカスした名勝負が演出されやすい傾向があります。
そうしたベースボールの特徴によって生み出されたのが、ベーブ・ルース、ルー・ゲーリック、ジョー・ディマジオといった選手たちでした。彼らの活躍は、個人のサクセス・ストーリーになり、アメリカン・ドリームと呼ばれた典型と言えます。
攻撃と守備がはっきり分かれていることは、観客の立場から見ると応援しやすいという側面があります。
それは、熱狂的なファンだけではなく、ライトな愛好者を増やしやすいという性質をもっています。
サッカーのように(個人技は前提となっているものの)全体が連動しているスポーツと違って、ピッチャーとバッター、それぞれの個人が、運命に立ち向かうヒーローになりやすいのです。
ベースボールによって、テニス、ゴルフなどのように自らがひとりのエリートであるこれまでのスポーツから、身近なヒーローへの親近感を抱きやすいという個人的感情と、大勢の人間がスタジアムという閉鎖された空間で感動を共有する集団的心性という二重性をもったスポーツが形成されていきました。
アメリカン・フットボール
アメリカにおいて、「大学スポーツ」として始まったフットボールは、最初はサッカータイプであったり、ラグビータイプであったりして、最初から現在のアメリカン・フットボールであったわけではありません。
1880年頃にまったくあたらしいフットボールに組み換えたのが、イエールの学生であったウォルター・キャンプ(Walter Camp)という人物でした
キャンプは両者がラインをつくって向かい合い、「クォーターバック」と呼ばれるポジションの選手が、このラインから出たボールを最初にとり、ランやパスというさまざまな形態を駆使してボールをタッチダウンにもっていく、という今のアメリカン・フットボールの原型を考案しました。
その頃のフットボールはきわめて荒っぽい危険なゲームで、かなりの死者がでていたようです。
やがてゲームの規則が変わり、前方にパスすることを正式に認め、4ダウンで10ヤード前進できないと攻守が入れ代わることや、危険なプレイの禁止を含んだ新ルールができました。
ラフに身体がぶつかりあうプレイを含みつつ、危険な要素を減らしたルールにもとづくカレッジ・フットボールが生まれたのです。
野球ほどではないにしても、サッカーやラグビーにくらべると、スーパースター(とくにクォーターバック)をつくりやすいゲームになりました。
近年のアメリカン・フットボールでは、NFL史上最多5度のリーグMVPやレギュラーシーズン通算タッチダウン記録などを持つ、ペイトン・ウィリアムズ・マニング(Peyton Williams Manning)や、通算6度のスーパーボウル(Super Bowl)制覇を誇るトム・ブレイディ(Thomas Edward Patrick Brady Jr)といったクォーターバックが、非常に有名です。
プロのアメリカン・フットボールは、19世紀の終わりに学生出身でまだゲームを続けたい人びとの集まりから誕生し、次第にリーグを形成していきました。プロが大学を上回るようになったのは1950年代で、60年代に入ると、テレビによってアメリカでもっとも人気スポーツである野球を脅かす人気スポーツになりました。
野球のワールド・シリーズ同様、異なるリーグの勝者が、最終的な勝者を争う「スーパーボウル(Super Bowl)」が生まれると、アメリカ中を熱狂させていきました。
バスケットボール
ベースボールとアメリカン・フットボールというスポーツには、なんらかのイギリス産の原型がありましたが、それを完全に作り替え、その過程でいかにもアメリカらしいゲームとなったのが「バスケットボール」というスポーツです。
バスケットボールの考案者であるジェームズ・ネイスミス(James Naismith)はスプリングフィールドのYMCA(Young Men’s Christian Association)の体育指導者でしたが、1891年、冬のシーズンに行うスポーツを考えるように命じられました。
したがって彼は、「屋内」でできるスポーツを考案しなければならなかったのです。
サッカー、ラクロス、ラグビーなどの室内化を試みたようですが、どれもスピードがありすぎて狭い屋内では危険でした。
そこで、ネイスミスは身体が接触せず、ボールを保持して走ってはいけないスポーツを考案することになり、体育館の両端のバルコニーに籠(バスケット)をとりつけさせ、それにボールを投げ込むことで得点とするゲームをつくり、それをバスケットボールと名づけたのです。
これはYMCAを通じてたちまちアメリカ中に広がっていきました。
スピードがあるようでいて、決して身体的な激突の危険がないように巧みに造られ、男性だけではなく女性のあいだでも行われるスポーツになりました。
バスケットボールが次第に技術的に発展するにつれ、選手は手を伸ばせばバスケットに届くほど長身でないと一流にはなれないゲームになっていきます。
こうした巨人がダンクシュートなどの派手な見せ場をつくるようになると、ここからもヒーローが生まれていきました。
まとめ ~アメリカ人は「魅せる」ことを徹底的に考えた~
今回は、アメリカでのスポーツの誕生と発展をテーマとして、「ベースボール」、「アメリカン・フットボール」、「バスケットボール」といったスポーツの成り立ちや特徴を解説していきました。
アメリカ型のスポーツの特徴は、
① 一般市民を基盤として発展
② ビジネスとして巨大化
③「個」が目立つ「チームスポーツ」
という3つでした。
アメリカは現在でも競技としてのスポーツ大国でありますが、ビジネスとしての「スポーツビジネス大国」であります。
伝統的な概念やルールに縛られず、自分たちが良いと思ったものにスポーツそのものを変えてしまうという点が、いかにもアメリカらしいですね。
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✔ 欧州から運ばれた「スポーツ」がアメリカでどう変わっていったのか分かる
✔ アメリカの「スポーツへの考え方」が分かる
✔ アメリカ人が作り出したスポーツが「熱狂を生み出す」理由が分かる