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「スポーツマーケティング」とは何か? スポーツの価値を高める仕組みづくり

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須賀 優樹
「ゼロからのスポーツビジネス入門」の運営代表として、「世界イチわかりやすいスポーツビジネス・マネジメント」を情報発信。元産業能率大学教員として大学生にスポーツマネジメントを教えた経験も。スポーツ業界就職や起業相談、スポーツ組織向けコンサルティングも好評。

今回は「スポーツマーケティング」について、考え方の基本から取り組みの具体例まで解説していきたいと思います。

このブログを読んでくれている方の中にも「スポーツマーケティングに興味がある!」とか「スポーツマーケティングを学びたい!」といった方も多いと思いますが、残念ながら「スポーツマーケティング」というものを体系的にしっかりと学ぶことができる「場」はそれほど多くありません。

今後、「マーケティング的な視点」でスポーツを考えてみる、ということはますます重要になってくると思います。

基本的なことをしっかり理解したい!」という方や「勉強する場がない!」という方のお役に立てれば幸いです!

この記事でわかること

✔ 「スポーツマーケティング」の基本がわかる
✔ 「スポーツマーケティング」の様々な考え方がわかる
✔ 「スポーツマーケティング」の実際の取り組みがわかる


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スポーツマーケティングとは何か?

まず初めに、「スポーツマーケティングとは何か?」について簡単に解説いたします。

スポーツマーケティングとは、「スポーツの価値を高め、スポーツそのものの市場の開拓・発展や、スポーツを通じて他の市場の開拓・発展を目指す行為」のことを指します。

スポーツマーケティングとは?

スポーツの価値を高め、スポーツそのものの市場の開拓・発展や、スポーツを通じて他の市場の開拓・発展を目指す行為

この中には、とても大切なポイントが「3つ」含まれています。

それが以下の3つです。

  1. 「スポーツの価値」を高めること
  2. 「スポーツそのものの市場」を開拓・発展させること
  3. 「スポーツを通じて他の市場」を開拓・発展させること

この3つを理解することが、「スポーツマーケティング」という概念や取り組みを理解する上でとても大切になってきます。

「スポーツの価値」を高めることとは?

スポーツマーケティング」に取り組むうえで、最も大切になるテーマがこの「スポーツの価値を高めること」になります。

「スポーツ」というものを一括りに定義することは難しいのですが、ここではわかりやすくするために、皆さんにもなじみのある「フィットネス」「サッカー」「野球」「バスケット」「テニス」といったような、いわゆる「近代スポーツ」と呼ばれているものを「スポーツ」として考えていきます。

こうしたスポーツは、「する」「みる」「ささえる」というように、様々なかかわり方があるとされています。

例えば、

  • 学校の授業で野球をする
  • インターネット中継でサッカーをみる
  • ボランティアとしてスポーツ少年団の活動をささえる

といったような形です。

このように、スポーツに対して様々なかかわり方がある中で、「そのスポーツそのものに価値があるか」つまり「そのスポーツに人を惹きつける魅力があるのかどうか」といったことが非常に大切になります。

ここでいう「スポーツの価値」には実に様々なものがあります。

例えば、

  • スポーツをすることで身体が健康になる
  • スポーツをみることで興奮感動を味わう
  • ボランティアとしてスポーツささえることで、様々な人と仲良くなる

といったようなイメージです。

これ以外にも、スポーツには様々な価値があります。

こうしたように、日常生活に「スポーツ」があることによって、スポーツが「ない」ときよりも「健康になれる」「感動できる」「仲良くなれる」といったような価値を受け取ることができるのであれば、それは「スポーツの価値がしっかりと発揮されている状態」であると言えます。

したがって、「スポーツマーケティング」の大きなテーマである「スポーツの価値を向上させる」ということは、

  • スポーツをする(してもらう)ことで、どうすれば人々がもっと健康になれるのか考える
  • スポーツをみる(みてもらう)ことで、どうすればより人々がもっと興奮や感動を味わうことができるのか考える
  • スポーツささえる(ささえてもらう)ことで、どうすればそのスポーツの魅力がもっと高くなるのかを考える

といったことが、スタートラインであると言えます。

このように、スポーツを様々な側面から捉えたときに、スポーツによって人々がいかに今よりも幸せになることができるのか、ということを考えることが、「スポーツマーケティング」の大原則です。

逆に、「スポーツの価値が下がってしまう状態」というのは、どのような時でしょうか。

例えば、

  • 不正な薬物の使用
  • スポーツの勝敗を意図的に操作する八百長
  • 指導者などによるスポーツの場面での暴言や暴力
  • スポーツ団体などによる不正な資金の使用
  • スポーツ大会などでの汚職・談合

といったことがあると、スポーツの「信頼性」や「安全性」「透明性」「健全性」といったことが、大きく失われます。

こうした「スポーツに関するリスク」をしっかりとマネジメントしていく取り組みのことを「スポーツガバナンス」と呼びます。

また、「スポーツが価値のある状態」であることを「スポーツインテグリティ」と呼びます。

このように、「スポーツマーケティング」の第一歩は、「スポーツが持っている本来の価値をいかに維持し、高めていくことができるか」がとても大切であることがご理解いただけるのではないかと思います。

【「スポーツそのものの市場」を開拓・発展させること】とは?

スポーツマーケティング」の大きな役割の1つが、「スポーツの活動そのものから生まれている市場をいかに発展させていくか」というものです。

こうした考え方は、「スポーツマーケティング」について書かれている本などでは、「Marketing of Sport」などと呼ばれています。

スポーツ」に対して「マーケティング」を投入する、というイメージです。

マーケティング」という言葉は、そもそも「マーケット(市場)」の中で、自分たちがいかに顧客を獲得するか、市場そのものをどうやって大きくしていくか、という意味が込められています。

その「マーケティング」という言葉に対して「スポーツ」という言葉がくっついて「スポーツマーケティング」になっている訳ですが、ここでは「スポーツを対象としたマーケットに対する活動」という意味での「スポーツマーケティング」を解説します。

スポーツ活動から生まれている市場」というのは、例えば以下のような市場です。

  • スポーツ用品」に関する市場
  • スポーツ施設」に関する市場
  • スポーツメディア」に関する市場
  • プロスポーツ」に関する市場
  • スポーツイベント」に関する市場
  • フィットネス(クラブ)に関する市場

これらを見ると、いかにも「スポーツ」という感じの市場であることがわかるかと思います。

例えば、「スポーツ用品」に関する市場というのは、わかりやすく言えば「スポーツ用品がどれくらい売れているのか?」に関する市場ということです。

「スポーツ用品」の中にも「スポーツシューズ市場」や「ゴルフ市場」「野球・ソフトボール市場」などのように、アイテムや競技ごとに様々な市場が存在しています。

※「スポーツ用品市場」に関しては「矢野経済研究所」が毎年市場規模を算出して公表していますので、興味のある方はご覧になってみてください。(参考 : 矢野経済研究所 スポーツ用品市場に関する調査 2022)

こうした市場は、人々が「スポーツをする」あるいは「スポーツをみる」ことによって生まれている市場であると言えます。「スポーツ」に対して人々が直接的になんらかの行動を起こしているから生まれてくる市場、ということです。

スポーツをする人」にとっては、スポーツをするためのウェアやシューズ、用具などが必要になるため、「スポーツ用品店」などに行ってスポーツ用品を買います。

スポーツをみる人」にとっては、スポーツをみるためにスタジアムアリーナに行ったり、テレビインターネットを通じてスポーツ観戦をする必要があります。(その際にチケットを買ったり、試合の視聴料などを顧客が支払います)

つまり、

  • 価値のある「スポーツ用品」をいかに製造して販売するか
  • 使い勝手の良い「スポーツ施設」をどのように建設して運営するか
  • スポーツの魅力を「メディア」を通じていかに発信していくか
  • レベルの高い「プロスポーツ」の試合をいかに作り上げていくか
  • 多くの人に参加してもらえる「スポーツイベント」をいかに企画して運営するか

といったようなことを「マーケティング的な視点から考えていく」ということが、「スポーツマーケティング」が果たす大きな役割の1つであると言えます。

スポーツマーケティング」という言葉に「マーケティング」という言葉がついている以上は、どんなスポーツの市場に対しても「マーケティング」の基本的な考え方取り組みが必要であり、通用する、という意味でもあります。

もちろん、「スポーツ用品の製造・販売」と「プロスポーツクラブの試合の提供」などで、全く同じマーケティングの手法が通用するわけではありませんが、マーケティングの原則である「顧客のニーズをしっかりと理解する」「競合となる商品よりも価値を高める努力をする」といった取り組みは、どんなスポーツ市場に対しても必要です。

これが、「スポーツマーケティング」の大きな役割の1つである「スポーツそのものの市場」を開拓・発展させることという意味になります。

「スポーツを通じて他の市場」を開拓・発展させること】とは?

スポーツマーケティングのもう一つの大きな役割の1つが、「スポーツを通じて他の市場」を開拓・発展させることです。

こうした考え方は、「スポーツマーケティング」について書かれている本などでは、「Marketing through Sport」などと呼ばれています。

上記で説明した「スポーツマーケティング」は「スポーツに対してマーケティングをする」という意味合いでしたが、ここでの「スポーツマーケティング」は「スポーツを使ってマーケティングをする」という意味合いになります。

例えば、以下のようなイメージです。

  • 観光客を増やすために」スポーツイベントを開催する
  • 町のにぎわいを高めるために」スポーツクラブを運営する
  • 国と国の交流のために」スポーツの試合を行う
  • 農業の人手不足を解消するために」スポーツ選手を農家に派遣する
  • 飲食店の売上を伸ばすために」にお店でスポーツ中継をする

このように、「〇〇のためにスポーツの△△を行う」ということが、「スポーツを通じて他の市場」を開拓・発展させるスポーツマーケティング」になります。

つまり、主語が「スポーツ」になるのではなく、「観光業」や「飲食業」「農業」などのようにスポーツ活動とは直接的には関係のない市場や業界が主語になり、それらに対して「スポーツを活用する」という意味になります。

近年では、こうした意味での「スポーツマーケティング」が社会に対して果たす役割が非常に大きくなってきています。

例えば、観光客を増やすために」スポーツイベントを開催する、という取り組みは「スポーツツーリズム」と呼ばれるようになり、「スポーツ庁」や各地域の「スポーツコミッション」などもこうした取り組みにとても力を入れるようになってきています。

また、町のにぎわいを高めるという意味では、今まで不便な立地に存在していたスタジアムやアリーナを、市街地や町の中心地に建設することによって、「スポーツを通じた街づくり」に活かしていこうとする取り組みなども全国各地で広まりを見せてきています。

こうした「スポーツマーケティング」を実施していく場合には、スタート地点は「スポーツ界の中の課題やニーズ」ではなく、「社会や地域の中の課題やニーズを発見する」ことがスタートになります。

よって、「スポーツが好きかどうか」「スポーツに詳しいかどうか」といったことはあまり重要ではなく、「社会や世の中に対して、どのようにスポーツを活用していけばよいか」という視点を持つことが大切になります。

「スポーツの市場」である「スポーツ用品市場」や「プロスポーツ市場」といった市場が、日本においてはこれからも伸び続けるということは考えづらい状況になっています。

「高齢化」「少子化」といった影響で、これから日本の人口は右肩下がりになっていくなかで、「スポーツをする人」「みる人」も減っていくため、そうした中でスポーツ市場を伸ばしていくのは非常に難しいためです。

しかし、「スポーツを活用して他の市場を伸ばす」といった可能性は大いにあると思います。

特に、スポーツと相性のよい「観光業」「飲食業」といったサービス業は、国内の人々だけではなく海外の人々を呼び込むことで市場規模を拡大していくことができるため、そうした市場が「スポーツを活用する」というニーズは十分にあるのではないかと思います。

ただ、こうした「スポーツを活用するマーケティング」においても非常に重要となることがあります。

それは、最初に説明したように「スポーツそのものに価値がある状態」をしっかりと作り出しておかないといけない、ということです。

スポーツイベント」を開催して観光客などを増やそうと思っても、そのスポーツを統括する協会や、スポーツ団体が不祥事などを起こしてしまったり、大会に出場した選手がドーピングなどをしてしまったら、そのイベントや町の信頼イメージなども大きく損なわれてしまうことになります。

したがって、「スポーツに対するマーケティング」にしても「スポーツを活用したマーケティング」にしても、「スポーツがしっかりと価値のある状態になっていること(スポーツインテグリティ)」がとても大切であり、そのための(スポーツ)マネジメントや(スポーツ)ガバナンスが機能することが求められる、ということになります。

実際に「スポーツマーケティング」はどんな取り組みをしているのか?

では、ここからは「スポーツマーケティング」と呼ばれる取り組みが、具体的にどんな取り組みをしているのかを見ていきたいと思います。

以下のような「スポーツマーケティング」を事例を交えて解説しています。

  • スポーツ用品メーカーが行うマーケティング
  • フィットネスクラブ」が行うマーケティング
  • オリンピックやワールドカップ」のマーケティング
  • プロスポーツクラブ」が行うマーケティング

「スポーツ用品メーカーが行うマーケティング

「スポーツ用品」という市場で非常に優れたマーケティングをしていると言われているのがアメリカに本社がある「ナイキ(NIKE)」です。

スポーツシューズの市場は、アディダスやプーマが強い時代がありましたが、その頃のナイキには大きなお金がなく、なかなか広告宣伝にもお金をかけられないという時代がありました。

そこでナイキがとった戦略は、「これから伸びそうなスポーツ選手を見つけて、広告塔になってもらう」というものでした。

その戦略において最も成功したのが、アメリカのバスケットボール・NBAのレジェンドである「マイケル・ジョーダン」選手との契約でした。

ジョーダン選手は1984年にNBAのシカゴ・ブルズと契約を結びますが、NIKEは入団直後にジョーダン選手と契約。

その後のジョーダン選手の大活躍によって、NIKEのブランドは世界に知られることになりました。

一方で、こうした華やかなスポーツの舞台とは違った側面から世の中のニーズに応えていくのもナイキは得意です。

ナイキのシューズの「フライイーズ」というシリーズは、障がいを持つ人の声をもとに開発したテクノロジーが搭載されており、手を使わなくても簡単に履くことができるシューズとして人気を集めています。

元々は障がい者の声によって作られたわけですが、妊娠中の女性や高齢者などにも好評となり、大ヒット商品となりました。

このように、ナイキは「トップレベルの選手との契約を通じて自社のブランド価値を高める」といった戦略と、「世の中で困っている人のニーズを拾い上げて商品開発する」といった複数の戦略をとることで、非常に高度なマーケティングを実行しファンを獲得しているのです。

「フィットネスクラブ」が行うマーケティング

「フィットネスクラブ」のような「店舗型」のビジネスにおいては、「どこに店舗を出店するか」という「立地戦略」と、「その場所に何があるのか」という「商圏戦略」が非常に大切になってきます。

したがって、「スポーツマーケティング」というよりは、飲食店やコンビニなどが店舗を出店する際に行う「エリアマーケティング」や、スポーツジムの中でジムの利用客に対してどのようなサービスを提供するかといった「サービスマーケティング」といったような考え方を活用していくことになります。

立地戦略」というのは、例えば以下のようなことを考えていくイメージです。

  • 通行人やドライバーから見やすい場所に店舗があるかどうか
  • 店舗に入ってくる人の導線はどのような道筋になっているか
  • 店舗への入りやすさ(入口の数や駐車場など)はどうするか など

こうした「店舗型」のビジネスは、「人の集まりやすいところに出店する」というのが原則です。

したがって、フィットネスジムは駅の近くやスーパーマーケットなどの商業施設の近くに立地していることが多いと思います。

理由は、「店舗の存在をアピールする」という点で有利なのと、「人が集まりやすい場所」に出店したほうが「店舗に立ち寄ってもらいやすい」からです。

一方、「商圏戦略」というのは、例えば以下のようなことを考えていくイメージです。

  • 店舗の周辺にはどんな人がいる(住んでいる)のか
  • 店舗の前はどんな人や車が通っていくか
  • 競合になりそうな他の店舗などはあるか など

このように、「フィットネスクラブ」や「スポーツ用品店」などの店舗型のスポーツビジネスは、「立地」と「商圏」という要素を色々と検討した上で出店を決め、その地域に合った商品やサービスなどを展開していくことが求められてきます。

例えば、フィットネスクラブの中でも「セントラル」や「ルネサンス」といった大手のジムは、駅から徒歩5分以内の場所に店舗を構えることが多く、ブランド力を活かして1つの店舗に多くの顧客を呼び込む戦略を取っています。

一方で、女性向けのフィットネスクラブである「カーブス」のように、「商店街」の中にジムを出店したり、1階がコンビニや飲食店になっているようなビルの2階に店舗を出店して、「買い物ついでにちょっと運動しませんか?」といったような価値を訴求して顧客を獲得しているジムもあります。

このように「フィットネスクラブ」も様々な工夫をこらしてマーケティングを行っています。

「オリンピックやワールドカップ」のマーケティング

「オリンピック」と「(サッカー)ワールドカップ」のマーケティングが、全く同じというわけではないのですが、両者には共通する部分が多いため、ここでは「オリンピック」や「ワールドカップ」などの巨大なスポーツイベントを1つのテーマとして、それらが実施しているマーケティングについてご紹介します。

こうした「スポーツイベント」のマーケティングの本質は「権利ビジネス」であるということです。

オリンピックであれば「IOC(国際オリンピック委員会)」、サッカーであれば「FIFA(国際サッカー連盟)」といった、イベントを主催するスポーツ組織が、他の企業などに「権利」を販売することによって「収益」を生み出している、ということになります。

例えば、以下のような「権利」を販売することによって巨大な収益を生み出しています。

  • 「試合の様子」をテレビやインターネットで「放送」する権利
  • 大会の「スポンサー」になって、会社の「宣伝」をすることができる権利
  • 大会の「ロゴマーク」などを使って商品を「販売」することができる権利

このような権利のことを「放送権」「スポンサーシップ」「ライセンス契約」などと呼びます。

この記事では1つ1つの解説は省略いたしますが、スポーツイベントの主催者側がこうした「権利」を販売することによって収益化していく仕組みは、1984年の「ロサンゼルス・オリンピック」からスタートしたと言われています。

これまで、大学などで教えられている「スポーツマーケティング」は、どちらかというとこうした「巨大なスポーツイベントが収益を生む仕組み」のことをメインに扱ってきていました。

教える側にとってもこうした成功事例は説明がしやすいですし、学ぶ側にとっても「オリンピック」や「ワールドカップ」というテーマはわかりやすく、興味が惹かれることが多いと思います。

ただ、こうした巨大なスポーツイベントは、大会を開催する国や都市が大きな税金を負担してスタジアム建設や周辺の環境を整備したり、準備や開催のために非常に大きなコストがかかるため、「本当にこのままで良いのか?」という声が近年は挙がるようになってきています。

実際、オリンピックでは開催に立候補する都市がかなり減ってきてしまい、アメリカや一部のヨーロッパ諸国、中国のように、オリンピックに対してそれなりの資本をかけられる国でないと開催の負担に耐えられない構造になってきてしまっているため、今後の動向が注目されます。

「プロスポーツクラブ」が行うマーケティング

サッカーや野球のような「プロスポーツチーム・クラブ」が行うマーケティングは、これまでご紹介してきた「スポーツ用品」「フィットネス」「スポーツイベント」といったような業態がやっているようなマーケティングを「合わせ技」のような形で実施していく必要があります。

したがって、マーケティングを実施する難易度や成果を出すための難易度が、他のスポーツビジネスと比べて格段に高くなります。

なぜ「プロスポーツクラブ」のマーケティングは複雑かつ難易度が高くなってしまうのかというと、クラブに関係してくる「ステークホルダー(利害関係者)」が非常に多い、ということと、「クラブの運営公共性」が求められるためです。

例えば、「プロスポーツクラブ」には以下のような「ステークホルダー」が存在しています。

プロスポーツクラブに関わるステークホルダー

✔ ファン・サポーター
✔ 地域住民
✔ 行政・自治体
✔ 地元企業・スポンサー
✔ 監督やコーチ、選手などのスタッフ
✔ クラブの従業員
✔ テレビ・新聞等のメディア
✔ クラブの株主、投資家

「スポーツ用品のメーカー」や「フィットネスジム」といったビジネスが、「地域住民」や「地元企業」「自治体」といったことまで深く考えてマーケティングをする必要性は低いです。

それらの企業や店舗はあくまで「営利目的」で活動をしているため、地域のイベントに参加をしたり、地域のボランティア活動をしたり、ごみ拾いなどをしたりする必要性はありません。(もちろん、できるのであればやったほうが良いと思いますが)

ですが、「プロスポーツクラブ」には「ホームタウン」や「フランチャイズ」という概念があります。

つまり、「なぜその地域にそのクラブが存在するのか、存在意義を問われる」ということです。

「プロスポーツクラブ」は、時には「自治体」から「出資」を受けたり、自治体に協力してもらって地元にクラブの存在や試合の開催をアピールしたりすることがあります。

それは、「自治体」の側にとっても「プロスポーツクラブ」が地域に存在することによって、町のにぎわいや健康づくりといったことに貢献してくれることを期待しているためです。

一方で、「プロスポーツクラブ」に対して直接お金を払ってくれるのは「ファンやサポーター」といった人たちです。

こうした人たちからいかに収益を得るか、といったマーケティングでは、「スポーツ用品メーカー」が行うような「スター選手を起用したプロモーション」や「フィットネスクラブ」が行う「エリアマーケティング」あるいは「サービスマーケティング」といった考え方や取り組みが必要になります。

また、「スポンサー」や「メディア」といったステークホルダーから収益を得るためには、「試合の質」を高める努力をしたり、できるだけスタジアムに観客を入れる工夫をしたりして、「このクラブにはお金を提供する価値がある」「このクラブの試合や取り組みを報道する価値がある」と思ってもらう必要があります。

こうした部分に対しては、「オリンピック」や「ワールドカップ」で行われているようなビジネスモデルやマーケティングの手法が役立つ場合があります。

このように、「プロスポーツクラブ」は多くのステークホルダーを相手に経営をしていくことが必要になるため、単に「SNSでマーケティングをすればよい」とか「サイン会などをたくさん開催してファンサービスをすればよい」といったような単純な考え方ではうまく行きません。

スポーツそのものの価値を高めるマーケティング」も「スポーツを活用して他の市場に貢献するマーケティング」も必要ですし、他の業界や業態が実施しているようなマーケティングの良い部分を組み合わせて、オリジナルな「マーケティング」を作り上げていく必要があります。

まとめ ~「スポーツの価値」が改めて問われる時代になっている~

今回は、\「スポーツマーケティング」とは何か? スポーツの価値を高める仕組みづくり/というテーマで、「スポーツマーケティングの基本」や「スポーツマーケティングに関する考え方」「スポーツマーケティングの実際の事例」などを詳しく解説いたしました!

スポーツマーケティング」の意味や、特に重要となる考え方は以下の通りでしたね。

スポーツマーケティングとは?

スポーツの価値を高め、スポーツそのものの市場の開拓・発展や、スポーツを通じて他の市場の開拓・発展を目指す行為

  1. 「スポーツの価値」を高めること
  2. 「スポーツそのものの市場」を開拓・発展させること
  3. 「スポーツを通じて他の市場」を開拓・発展させること

また、一言で「スポーツビジネス」といっても、「スポーツ用品の製造・販売」や「フィットネスクラブ」「オリンピック」「プロスポーツクラブ」などによって、必要となるマーケティングの考え方や戦略が違ってくることもご理解いただけたのではないでしょうか。

スポーツマーケティングにとても興味があります!」という方は、このブログのLINEアカウントでも「マーケティング」に関するネタなどを配信していますので、ぜひお友達になってくださいね!


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