NIKEの取り組みから学ぶ「デジタルなスポーツマーケティング」

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ユウ
「スポーツやスポーツビジネスの魅力を多くの人に知ってもらいたい」という想いから当サイトを運営。スポーツビジネスを学びたい、携わりたいという人に向けて情報発信。大学教員として大学生にスポーツマネジメントを教えた経験もアリ。

今回は「マーケティング」のお話をしたいと思います。

それも、ただの「マーケティング」ではなく、スポーツ用品メーカー大手のNIKE(ナイキ)の事例を踏まえながら「デジタルマーケティング」というものをご紹介します。

みなさんも、「Amazon」や「楽天」などを使って、「インターネットショッピング」をしたことがあると思います。

一昔前までは、「お店」に行かないと買えなかったものが、スマホをポチっとするだけで、簡単に買えるような時代になりました。

こうした変化は、もちろんスポーツ産業においても起こっています。

NIKEという企業は、「マーケティング大国」と言われるアメリカで生まれた企業でもあり、スポーツ産業の中でも、とてもマーケティングが上手な企業です。

今回は、NIKEの実例を参考に、これから始まっていく新しい「マーケティング」について考えてみたいと思います。

この記事で学べること

✔ 「デジタルマーケティング」の意味がわかる

✔ NIKEの「デジタル戦略」がわかる

✔ NIKEが実際にどのように「デジタル」を活用しているのかがわかる


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「デジタルマーケティング」ってなに?

そもそも、「デジタルマーケティング」というのは何なのか? というのを簡単にご説明します。

マーケティング」という言葉がついていますので、「マーケティングの一種」であることに間違いありません。

マーケティング」については、スポーツマーケティングは「相手の気持ちを考えること」「スポーツマーケティング」とか「スポーツマネジメント」ってなに?といった記事をご覧いただければ大体ご理解頂けるかと思いますが、今回の「デジタルマーケティング」という言葉には「デジタル」という言葉がついています。

デジタルとは何か?」を説明するのは難しいのですが、「ビジネスにおいてデジタルを使う」という場合、スマートフォン、パソコン、タブレットといった「デバイス」や「サイネージ(モニターを使った広告)」、「無人レジ」、「アプリ」といったものを指すことが多いです。

つまり、「デジタルマーケティング」というものは、スマートフォンやアプリ、Webサービス、無人で動くロボット、人工知能(AI)などの「マシン(機械)」をうまく活用して「マーケティング」をしていく、という意味になります。

高校生や大学生の方にとっては少し難しいかもしれませんが、みなさんもスマホで「ゲーム」をしたり、TwitterやInstagramなどの「SNS」を使ったりすると思います。

みなさんがそうした「アプリ」を使用すると、「アプリ」を作っている企業には、みなさんが「どのようにそのアプリを使用したのか」、という「データ」が送られます。

例えば、「1日に何回アプリを開いたか?」とか、「アプリを使って誰とメッセージをしたのか?」といったデータが、アプリを作った企業に送られます。

企業は、そうして溜まっていく色々なデータを使って、「1日に5回以上アプリを使っている人には、レアな商品をプレゼントしよう」とか、「アプリの中でスポーツに関するニュースを見ている人に、スポーツ用品の広告を出してみよう」といった「マーケティング」ができるのです。

ざっくり言えば、これが「デジタルマーケティング」です。

スマートフォンやロボットなどの様々なマシン(機械)を使用すると、上記のような「データ」が生まれます。

その「データ」をいかに「マーケティング」に活用していくことができるか、というのが「デジタルマーケティング」の大きなポイントの1つであると覚えて頂ければと思います。

つまり、「デジタル」な技術を活用してマーケティングをすると、今までは「20代男性を対象にしたゲーム」というざっくりとしていたものが、「そこのあなたのためのゲーム」というように、ひとりひとりのお客さんにとって、適切な情報や商品を届けることができるようになる、ということです。

「デジタル」によって今までのビジネスが変わる!

みなさんが、「スポーツ用品を買いたい!」と思ったとき、どのように購入するでしょうか?

みなさんのような「スポーツ用品を買いたい人」、つまり「消費者」という視点から見ると、「スポーツ用品の購入方法」というのは大きく分けて2つあります。

1つめは、「お店に行って買う」というやり方です。

スポーツ用品をお店で買う、という場合は「スポーツ小売店」と呼ばれるお店に行って買う場合が多いと思います。

スポーツ小売店」というのは、簡単に言えば「スポーツショップ」のことです。

スポーツ小売業ってなに? スポーツ用品に関わるお仕事 の記事でも紹介していますが、例えば、「アルペン」や「ゼビオ」といった、全国展開する大型スポーツ用品店もあれば、町のおじさんおばさんが経営している小さなお店もあると思います。

こうして、「お店に行って直接商品を買う」という方法を「オフライン購入」と言ったりします。ここで言う「オフライン」というのは、ネット上などの「バーチャル(仮想)」な世界ではなく「リアル(現実)」の世界、という意味です。

一方、もうひとつの方法はもうお分かりの通り、「インターネットやアプリ」を使用して商品を買う、という方法です。

冒頭で少し触れた「Amazon」や「楽天」といったサービスを使用して何かを買う場合は、まさにこの例です。

こうした、「インターネットやアプリを通じて商品を買う」という方法を「オンライン購入」と呼んだりします。

2000年頃までは、スポーツ用品や食品、洋服といったものを買う場合は「お店に行く」という手段がほとんどでした。

「テレフォンショッピング」のような「通販」と呼ばれるものは存在していましたが、日用品を気軽に買うというよりは、冷蔵庫や掃除機、家具などの「滅多に買わないもの」を電話注文するという場合が多かったのです。

しかし、現代では、生活に必要なありとあらゆるものがインターネットを通じて取引され、買ったり、売ったりするということが可能になりました。

今では、「お店で実際のスポーツ用品を見て、買うときはネットで注文する」といった人もいると思いますが、以前はそうした「買い物」のやり方は存在しませんでした。

このように、「デジタル技術」の進歩によって「お客さん」の心理や行動が大きく変わってきています。

だから、「ビジネスをする側」も大きく変わっていかなければならないのです。

NIKEはズバ抜けた「デジタル戦略」を持っている!

さて、ここまで「デジタルマーケティング」というものを、ざっくりご説明してきました。

では、スポーツ用品メーカーとして世界1位の売上を誇るNIKEは、どのように「デジタル」を活用して「マーケティング」をしているのでしょうか。

NIKEは2017年に、「トリプルダブル戦略(Triple Double Strategy)」という、NIKEという企業としての経営戦略の方向性を発表しています。

この戦略の中には、「デジタル」をビジネスに活用することで、今までになかった商品やサービスを開発することや、開発したものをより早くお客さんに届けること、そして、お客さんとより深い関係を築くこと、といった内容が述べられています。

また、NIKEは、「Nike Direct」という自社の組織において、「最高デジタル責任者(Chief Digital Officer)」という人材を置いています

最近では、日本でも「企業経営の最高責任者」のことを「最高経営責任者(chief executive officer)」と呼んだりすることが多くなってきましたが(略して「CEO」と呼ばれる)、「CEO」が企業経営全体の最終的な責任者であるのならば、「最高デジタル責任者(CDO)」は、「企業のデジタル活用における業務の最終的な責任者」という意味になります。

最高デジタル責任者(CDO)」というポジションは、アメリカの企業であっても、まだそれほど多くの会社が取り入れているポジションではありません。

まして、日本の企業においてはこうしたポジションに人材をおいて経営をしている企業は、全体の1%もないでしょう。

それだけ、NIKEは「デジタル」を使ったビジネスやマーケティングに力を入れており、時代の先を見据えた経営をしている企業なのです。

余談ですが、スイスのにある「IMD」というビジネススクールが2019年に発表した「デジタル競争力ランキング」によれば、日本は「23位」とのことです。

1位はアメリカ、2位はシンガポール、3位はスウェーデンとなっており、日本という国が全体的に「デジタルに弱い」ということが分かると思います。

日本の企業がNIKEやAmazonといった企業にまったく歯が立たないのも、うなづけます。

これからは「デジタル」を上手く活用できる企業とそうでない企業の差が、ますます大きくなっていきます。

スポーツビジネスでも、「質のよいスポーツ用品を作れば売れる」とか「レベルの高い試合をすればお客さんが入る」という短絡的な考え方では、あっという間に世の中に置いていかれてしまうでしょう。

NIKEは「デジタル」でこんな取り組みをしている!

では、NIKEは実際にどのように「デジタル」を活用して「マーケティング」をしているのかを見て行きましょう。

使ったことがある方もいるかもしれませんが、NIKEは「NIKEアプリ」、「NIKE SNKRSアプリ」、「NIKE RUN CLUBアプリ」など、いくつかのアプリを持っています。

こうしたアプリは、もちろん「アプリの中」で買い物をしたり動画などを観たりすることができますが、それだけではなく、「リアルな世界」とのつながりを作り出すことにも成功しています。

例えば、NIKEのウェアを買いたいと思ったとき、アプリで商品を見るだけでは着心地や自分に似合うかどうかなどが分からないですよね。

そんなときに、NIKEのアプリを使えば、実際にお店に行ったときの試着室への商品の手配や、スタイリストのスケジュール予約をアプリ上で行うことができるのです。

また、お店で試着した商品を気に入って実際に買いたい場合、スマホで商品のバーコードをスキャンすれば、レジに並ぶことなく、そのままアプリで商品を購入することもできます。

これはまさに「現実世界(オフライン)」と「仮想世界(オンライン)」の融合によって生まれた新しいビジネスの形です。

例えば、先ほど少し触れたように、「お店で実際のスポーツ用品を見て、買うときはネットで注文する」という買い物のやり方だと、企業から見ると、「誰が何を買ったのかは分かるが、その人がどうやって商品を知って買ったのかが分からない」のです。

つまり、「現実世界(オフライン)」と「仮想世界(オンライン)」がバラバラになってしまっています。

NIKEのやり方では、「アプリ」というものを上手く活用して「実際にお店に来た人が誰かも分かるし、その人がアプリで何を買ったのかも分かる」ということになります。

これだけ、お客さんの「現実世界(オフライン)」と「仮想世界(オンライン)」の心理や行動を把握することができれば、マーケティング活動がとても有利になります。

なぜなら、「マーケティング」というものは「お客さんのことをどれだけ理解できるか」が非常に大切だからです。

NIKEはこうしたビジネスをさらに発展させるために、次々と新しい取り組みをしています。

例えば、「お客さんがスマートフォンで自分の足を撮影するだけで、その人のサイズにピッタリ合った商品をおススメする」という技術を開発するために、「3Dスキャン」という技術を持つInvertexという会社を買収しました。

また、新作のバスケットボールシューズが発売された場合、お店の床をバスケットコート専用の床に張り替えて、本物のバスケットボールコートにいるのと同じようなで感覚で、新作シューズを使用する体験をお客さんに提供しています。

今までは「お店でシューズを買う」という場合、お店でシューズの見た目を確かめて、試し履きをして、購入する、という体験が当たり前でした。

しかし、NIKEは「お店はお客さんと深く接する場所」という新しい考え方を打ち出し、サービスを作っているのです。

こうして、NIKEはお客さんの「」を上手く捉えていくことによって、ますますNIKEの「ファン」が増えます。

「ファン」が増えるということは、NIKEという「ブランド」が持つパワーがさらに大きくなっていきます。

「ブランド」のパワーが大きくなればなるほど、マーケットの中で利益を独占することができます。

日本のスポーツメーカーの中では、アシックスがデジタルを活用した取り組みを進めていますが、他のメーカーは大きな後れを取っています。

日本全体としての「デジタル活用度」が低いように、日本のスポーツ産業のデジタル活用度も、かなり低いのが現状です。

今回ご紹介したNIKEの取り組みをいきなりマネすることは難しいですが、日本のスポーツ産業にとって大きなヒントになることは間違いないでしょう。

まとめ ~デジタルなくしてスポーツビジネスは成功しない~

今回は、\NIKEの取り組みから学ぶ「デジタルなスポーツマーケティング」/というテーマで、「デジタルマーケティング」や「デジタルを活用した今後のビジネス」などをご紹介してきました。

NIKEのマーケティングは、「スポーツをみせる」ことをメインにした「プロスポーツ」などの「クラブビジネス」のマーケティングとは少し違いますが、いずれにしても「スポーツ」というものが持っている価値を、色々な商品やサービスに変えて収益を生み出しています。

日本のスポーツ産業も「デジタル化」の波に逆らうことはできません。

日本全体的に「デジタル人材がいない」と言われるなかで、スポーツに「デジタル」を組み込むことは簡単ではありません。

しかし、ソフトバンクや楽天、DeNAといったIT関連企業が経営に関わるプロスポーツクラブなどは、「デジタル」な取り組みを進めています。

一方、同じ「プロスポーツ」とは言え、そうした親会社がなく資金力にも乏しいクラブ(例えばJ2やJ3に所属するクラブ)は、こうした「デジタル」な取り組みを進めることが難しくなっています。

スポーツ産業のデジタル活用」は今後の大きなテーマになりますので、みなさんもぜひ注目していただけたらと思います!


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