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今回は「プロスポーツビジネスの4つの収入の柱」(収益構造)についてお話します。
プロスポーツというものは、主に以下の4つの収入源によって経営が成り立っているとされています。
✔ チケット収入
✔ スポンサー収入
✔ 放送権収入
✔ マーチャンダイジング(グッズなど)
プロスポーツビジネスの4つの収入源
最近では、これらの他にも、スポーツチームがスポーツ施設の運営をすることによって収益を得たり、これまでスポーツとはあまり関係のないようなことだと思われていたことと、スポーツを組み合わせて収入を得ようとする試みが広まってきています。
ですので、今回ご紹介する「4つの収入源」という構造は、今後は変わっていく可能性もありますが、いままでのスポーツクラブ経営やスポーツイベント事業では、これらを基本にして事業が成り立ってきましたので、今回は歴史の振り返りも含めてご紹介していきたいと思います!
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そもそも、プロスポーツビジネスって何?
プロスポーツビジネスとは、Jリーグクラブやプロ野球球団などの、プロスポーツチームやリーグように、スポーツそのものを商品としてお金を生み出すスポーツビジネスのことを言います。
「試合」そのものがプロスポーツビジネスのメイン商品ということですね。
なお、「プロスポーツ」には、「野球」や「サッカー」のような団体競技もあれば、「ゴルフ」や「テニス」のような個人競技のスポーツもあります。
野球やサッカーの場合には、クラブと「プロとして契約」をすることによって「プロ選手」になることができます。
ゴルフなどの場合は、協会などと「プロ契約」をするのではなく、協会から「認定」を受けたり「自己申告」で「プロ選手」として活動することになります。
競技によってこうした違いはありますが、今回はそうした「スポーツそのもので収益を上げていく」という団体やクラブを「プロスポーツ」として取り上げます。
プロスポーツビジネスにおける収入源とは?
では、Jリーグクラブやプロ野球の球団のような、プロスポーツチームはどうやってお金を稼いでいるのでしょうか?
その収入源としては、以下の4つに分けれらます。
チケット収入 ~ファンからの貴重な収入源~
まず、チケット収入ですが、これはその名前の通り、観客やファンが試合をみるために買う「チケット」が売れることによって発生する収入になります。
チケットが1万枚売れれば、その1万枚のチケットの値段分が収入になるということです。
Jリーグを例にして取ると、大人のチケットは安い席で2,000円ほど、高い席だと10,000円を超えてきます。
基本的にチケット収入(売上)は、
単価×購入枚数
チケット収入の計算方法
で計算します。
「単価」というのは「チケット1枚あたりの値段」のことです。
「購入枚数」というのは、チケットが何枚売れたか? の合計のことです。
J1のクラブを例にして計算すると、J1はホーム&アウェイの総当たりで18チームが対戦するので、ホームの試合は17試合ということになります。
つまり、1試合のチケット収入に×17をすると年間のチケット収入が計算できます。
ここでは、計算しやすいように、チケットの単価を「3,000円」と仮定して、カップ戦などは含めないで計算するものとします。
例えば、1試合の平均観客動員数が20,000人のクラブの場合だと、
3,000(円)×20,000(人)=6000万円となります。
この6000万円に17(ホームゲームの試合数)をかけると10億2000万円になります。
※アウェイの場合のチケット売上は、自分のクラブの収入にはなりません。
これに、シーズン前に売れている「シーズンチケット」の売上金額を合計すると「年間のチケット収入」が計算できます。
ちなみに、チケットには色々な種類があって、大体の場合は、
・シーズンチケット(年間パスポート的なもの)
・前売り券
・当日券
というような形で販売されることが多くなっています。Jリーグやプロ野球を観戦する場合には、これらのいずれかが必要になるため、お客さんはこれらを買うことでスタジアムで「試合を見る権利を手にする」ことができるということです。
今回は、Jクラブの例を出しましたが、もちろんJクラブの中にも、今回計算したチケット収入よりも、多くのチケット収入を得ているクラブや、少ないクラブも存在しています。
「だいたい年間10億円くらいなんだな」と思っていただければよいと思います。
スポンサー収入 ~企業との相思相愛関係を作る~
次に、2つ目の収入源はスポンサーシップによる収入です。
スポンサーシップというのは、
スポーツを利用して、スポンサー(主に「企業」)が商品やサービスの宣伝・販売をできる権利のこと
スポンサーシップの目的
です。
関連記事:スポーツのスポンサーシップってなに? スポーツと企業の共存
スポンサーシップといっても、色々な形態がありますが、このスポンサーシップがクラブにとって大きな収入源となっています。
Jリーグクラブの大半のクラブが総収入のうちの約半分をスポンサー収入が占めていることをご存じでしょうか?
スポンサーシップでは、クラブのユニフォームに企業名を入れたり、ホームスタジアムに企業名や商品名入りの看板を置いたりする例が多くなっています。
ちなみに、J1の川崎フロンターレのユニフォームの胸に企業名を入れる場合、1年間で大体「2億円」といわれているようです。
(企業が2億円をフロンターレに支払ってスポンサーになる)
企業は何を期待してスポンサーになるのか?
では、クラブの貴重な収入源となるスポンサー(企業)はどんなことに期待してスポンサーになるのでしょうか?
スポンサーになることによって、主に以下の効果が期待できます。
✔企業の露出が増えることにより、認知度がアップする
✔Jリーグクラブという公共性のあるものをサポートすることで、企業のイメージアップになる
✔クラブを応援しているファンやサポーターが、スポンサー企業のお客様になってくれる
✔企業の経営課題を解決できる手段の1つである
企業がスポーツのスポンサーシップをする理由
スポーツに対してお金を出す企業は、これらに期待してお金を出します。
当然、企業としては、スポンサーシップを通じてスポーツに支払ったお金よりも、多くの金額を稼ぐ必要があります。
さきほどの川崎フロンターレの例で言えば、ユニフォームの胸の部分に企業名を入れる場合の金額が2億円だったとすると、企業としてはその2億円以上の効果を得ることを期待している、ということですね。
もちろん、スポンサー企業としては利益を追求する以外の目的もありますが、クラブの側からすると、企業に大きなお金を出してもらってスポンサーになってもらった以上は、スポンサー企業の利益や経営課題の解決に貢献しなくてはなりません。
ちなみに、2018年度のJ1クラブで最もスポンサー収入の多かったクラブはどこだと思いますか?
答えは、ヴィッセル神戸になります。その額はなんと、62億8000万円になります。
これには、やはり元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタ選手の加入が大きく影響しているでしょう。
神戸の2018年度の営業収益は約96億円ですから、6割以上がスポンサー収入になっています。ちなみに、2位は名古屋グランパスの33億4500万円で、3位は浦和レッズの32億6000万円です。
1番スポンサー収入の少なかったベガルタ仙台で約11億円ですので、おおきな収入源になります。冒頭でも説明した通り、多くのJリーグクラブはこのスポンサー収入が収入の半数以上を占めており、クラブの貴重な財源になっているのです。
放送権収入 ~テレビに愛されるスポーツがメジャースポーツ~
プロスポーツビジネスの収入源の3つ目は放送権収入です。
※「放映権」と呼ぶ場合もあります。
これはその名の通りテレビやネット中継でスポーツの試合を放送する権利を、テレビ局などのメディアがお金を払って買うことによって発生するものになります。
一言で言い換えるなら、リーグや球団がテレビ局などに試合の放送をする権利を売るということです。
ちなみに、Jリーグは2017年からイギリスの大手通信会社の『パフォーム』と10年間で2100億円(年間210億円)の大型放映権契約を締結しました。
それまで放映権を持っていた『スカイ・パーフェクト・TV(スカパー)』は年間50億円といわれていたので、約4倍の放映権料となりました。
Jリーグはこれによって得た資金を、
✔均等分配金
✔理念強化分配金
✔降格救済金
✔ACLサポート
✔賞金
Jリーグの分配金
という5つに分類し、各クラブに分配しました。
均等分配金は、2016シーズンは1.8億円だったのに対して、2017シーズンは約2倍の3.5億円にまで増額しました。
そして、特に大きいのが「理念強化分配金」で、優勝クラブは優勝賞金の3億円にプラスして3年間で総額15.5億円がリーグから支払われます。
この大型放映権契約の影響で、元ドイツ代表のルーカス・ポドルスキやイニエスタ、元ブラジル代表のジョーなどのスター選手が多くJリーグに移籍することになりました。
アメリカのメジャーリーグベースボール(MLB)では、放送権料はリーグから各球団に均等に分配する、「レベニューシェアリング」という制度を取り入れています。
これは、各球団の戦力を均衡させることが大きな狙いのようです。
(各チームの強さを同じくらいにすることで、リーグ全体としての価値を向上させる。)
例えば、サッカー、セリエAはユベントスが8連覇しており、1強状態です。
しかし、アメリカのメジャーリーグではニューヨークヤンキースが1998年から2000年にワールドシリーズ(全米優勝決定戦)で3連覇を達成して以降、連覇を達成した球団はありません。
分かりやすくというと、毎年どこが優勝するか分からないのが、「戦力均衡」になります。
また、アメリカでは野球、バスケットボール、アメリカンフットボール、ホッケーが4大プロスポーツとなっていて、これらは「ドラフト」という制度で選手を獲得しているのをご存じでしょうか?
(サッカーには「ドラフト制度」はない)
これも「戦力均衡」を図ることが大きな目的になっています。
このように放送権収入はリーグや各チームにとって多きな収入源となり、とても貴重なのです。
マーチャンダイジング ~「これ欲しい!」を生み出していく~
最後は、マーチャンダイジングによる収入で、これは「ユニフォーム」や「応援グッズ」といった、グッズ収入のことです。
これはイメージしやすいかと思いますが、各チームが販売するユニフォームやメガホンなどを始めとしたグッズには、「チーム名」や「ロゴ」が入っています。
それらをファンやサポーターが着て、街を歩いたり、電車に乗ることでチーム名やロゴ、場合によってはスポンサーの会社も目立つことになります。
グッズはユニフォームなどの1万円を超えるものから、数千円、数百円と値段も種類も多様です。
ちなみに、サッカー日本代表や各Jリーグクラブのレプリカユニフォームの原価が大体どのくらいかご存じでしょうか?
もちろん、球団やクラブによって多少の差はありますが、アディダス社の提供する同代表のレプリカユニフォームの原価は、約800円だそうです。
これを大体、背番号やネーム無しで9000円から1万円前後で売りますから、人件費等を除いても利益率はそれなりに良いでしょう。
しかし、1枚あたりの単価は高くないので、ユニフォームなどのアパレルだけで大きな収益をあげようと思うと、相当な枚数を売る必要はあります。
ポイントは、日本代表を応援するサポーターが着ているユニフォームは、「服」という価値だけで考えると「800円」でしかない、ということです。
「安く作って、高く売る」というのがビジネスの基本です。
Jリーグでも近年、イニエスタやポドルスキなどのスター選手が多くプレーするようになりましたが、彼らを獲得する狙いはサッカーそのものの戦力としてはもちろん、ユニフォームなどのグッズを多く売るビジネス的な側面もあります。
当然、グッズだけなく、観客動員増加やスポンサー獲得の見込みもあります。
タイ代表のチャナティップをコンサドーレ札幌が獲得したことで、タイでもJリーグが放映されるようになり、タイ人もチャナティップのユニフォームを着たりしているようです。
世界的なビッグクラブのFCバルセロナやレアル・マドリードのユニフォームは世界中の多くのファンが着ていますよね。
しかし、Jリーグのユニフォームを着ている子ども達は国内では、チラホラ見かけますが、海外ではあまり見られていないようです。
というのもの、先ほど例に出して2クラブは当たり前のように英語や日本語版の公式サイトやSNSのアカウントを持っていますが、
日本のJクラブではまだそこまでするに至っていません。
少し、話が脱線しましたが、多くの外国籍のスター選手を獲得した今、グッズ収入の観点から見ても間違いなくビジネスチャンスなので、これを機に多くのクラブが世界に向けて情報発信をしてほしいですよね。
世界中からユニフォームなどの注文が入るようになれば、グッズ収入だけでも多くの収入が見込めるでしょう。
まとめ ~スポーツはもっと多様な収入源を~
今回は、「プロスポーツビジネスは4つの収入で稼いでいる!」として以下の4つの収入について解説していきました。
✔ チケット収入
✔スポンサー収入
✔放送権収入
✔マーチャンダイジング(グッズなど)
プロスポーツビジネスの4つの収入源
普段、みなさんが好きなスポーツを観戦したり、チームを応援したりするときには、チケットを買ってスタジアムに入り、その中でグッズなどを買ったりすると思います。
そうしたお金もプロスポーツビジネスにとっては大きな収入にはなりますが、チームを支えてくれるスポンサー企業や、試合を放送してくれたりするテレビ局などのメディアから得るお金が、とっても大きいんですね。
今回紹介した「収入源」以外では、各チームやクラブの「スクール活動」による収入も割と大きかったりします。
特に、Jリーグの中でもJ2、J3といったカテゴリに位置するクラブや、Bリーグ、女子サッカークラブなどは、「地域の小学生などにサッカーやダンスなどを教えるスクール」での「会費収入(月謝)」が、大きな収入源になっているところもあります。
ぜひ、そうしたことも意識してスポーツを観てみると色々と面白いことが発見できると思います!!
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